【帰ってきた】ガチ議論
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トピックス

「ガチ議論」シンポ・テープ起こし (1/6)

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お待たせしました!! 第36回日本分子生物学学会年会企画「生命科学研究を考えるガチ議論」シンポジウム のテープ起こしです。編集の都合上、前・中・後編と分け、今回はまず前編を公開いたします。中・後編のテープ起こしや、動画も準備が整い次第随時公開していく予定です。 主催:第36回分子生物学会年会 生命科学研究を考えるガチ議論企画委員 協賛:Science Talks/カクタス・コミュニケーションズ 日時:2013年12月5日(木)18時~21時半 会場:神戸国際会議場 1階 メインホール パネリスト:(順不同, 敬称略; プロフィール詳細はこちらの記事参照)  川上 伸昭(文部科学省政策評価審議官)  斉藤 卓也(文部科学省タスクフォース戦略室長)  鈴木 寛(元文部科学副大臣)1964  原山 優子(内閣府総合科学技術会議常任議員)  安宅 和人(ヤフー株式会社・CSO)  宮野 公樹(京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐)  近藤 滋(大阪大学大学院 教授, 年会大会長, ガチ議論代表)  宮川 剛(藤田保健衛生大学 教授, ガチ議論スタッフ) スタッフ:  中川 真一(理化学研究所 准主任研究員)  小清水 久嗣 (藤田保健衛生大学 助教) 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 – 次のページ 近藤 ご来場の皆さん夜遅いところを来ていただいて誠にありがとうございました。分子生物学会第36回年会の年会長かつガチ議論代表ということになっております近藤です。何か最初に挨拶をしろということですけど、私、2年前にこの年会長をやろうということにご指名されて、普通のことをやっているんだったら別にやらんでもいいなと思って、学会を見てるといろんな学会がたくさんあって、いつも同じ人に会って同じ発表を聞いているって感じで、なにか学会自体に別の価値観がないともうやっていけないな、という感じがしました。それで価値観の一つとして、皆さんいつも学会の後夜飲みにいって、文科省が悪いだの大学のトップが悪いだのなんだの、僕もいつも文句言ってますけど、我々の中だけで言っていても全く生産性がないので、ここにいるような、それを受け止めるべき人たちの前で言ったらどうか。あるいはその人たちは当然そういうことに対しては当然きつい反撃を持ってるわけなんで、それを聞くことによって何かが始まるかなと、いうことで、このガチ議論というものを始めたいと思って、この一年半ぐらい準備してやってきました。幸いなことに非常に強力な協力者を得まして、最初に望んでいたような方達がここに集まっていただけることになりました。本当にお礼を申し上げます。それでは事実上のガチ議論の運営者の宮川さんにバトンタッチして、説明をしてもらいます。よろしくお願いします。 宮川  ガチ議論スタッフの藤田保健衛生大学の宮川です。日本の科学を考えるというこの企画は、ネットと密接に連動する企画でありまして、ガチ議論サイトというのを今年(2013年)の一月から運営しております。このサイトでは日本の科学にまつわるいろいろな問題を指摘していただいて、かつ何らかの提案を出していただき、それについて議論が行われるというかたちになっています。まずこのサイトで指摘された問題点となされた提案のいくつかをピックアップして紹介し、それらについてサイトを訪れた方々がどのように感じたかをざっと説明させていただきます。時間の関係上詳しいことは御示しできませんので、詳細はそれぞれのURLにアクセスしてご覧いただければと思います(スライド[pdf]のダウンロードはこちらから; 外部サイト[包括脳プラットフォーム - XooNIps for CBSN]に移行します)。 トピックスの1です。課題は、諸悪の根源、単年度予算制度です。単年度予算制度によって、年度末駆け込みによる無駄な使用、残券ゼロ化の無駄な努力、そして預かり金という不正、などの諸問題が発生しております。これに対しまして、全ての公的研究費の複数年度予算化をお願いしたいという提案です。これによりまして、研究費の有効活用ができます。そして、預かり金をするモチベーションも激減します。この提案についてですね、サイトを訪れた方々にアンケートを行いました。 「研究費の基金化を全ての種目について進めるべきだと思いますか?」 こういう質問で、結果は、「はい」が88%で、約9割が基金化を希望している、というものでした。 トピックスの2です。課題は、研究者には雑用が多すぎる。諸々の雑用のため、研究時間がとれません。他のプロの方が行うべきような業務もやっております。提案です。研究者の雑用の軽減をお願いします。これについてのアンケートです。 「一ヶ月にどれぐらいの時間を雑用に使われていますか?」 という質問に対しまして、無駄な雑用にかける時間は一ヶ月に10時間以上である、という人が約7割、 「研究者の雑用は減らすことができると思いますか?」 という質問に対しましては、大学研究機関の努力で減らせるか、あるいは行政の強力もあれば減らせると、いうのを合わせて9割が減らせる、というふうに考えております。 トピックスのその3です。研究者のポスト問題です。ポスドク1万人計画後、ポスト競争が加熱しております。研究適性の高い若手でも参入を敬遠し、競争過多で研究にマイナスになっております。さらに常勤と非常勤の待遇の差が大きすぎでありまして、5年、あるいは10年の雇い止め問題も現在大問題になっています。これに対しまして、安定性と競争性を担保する日本版テニュアトラックのようなものができないかと、いう提案です。この提案では、身分そのものは安定させるけれども、基本報酬は低く抑え、競争的なアドオン給与をつけます。よほどのことがない限りテニュアが取得できるようにします。テニュアはPIだけでなくポスドクや技術補佐員、リサーチアドミニストレーター等多様な方々が取得できるようにします。ノーベル賞の山中先生のご意見なども反映された提案になっております。これにつきまして、 「このようなテニュアトラック制度、導入してほしいですか?」 という提案に対しまして、約9割が導入を希望。 「使える人件費の総額は全体で変わらない、そういう前提でこのような制度を導入すると、国全体として研究成果が増えると思いますか?」 という質問に対しまして、7割以上が増えると、予測しております。 次。現状の競争的研究費には様々な問題があります。ハイリスク研究に打ち込めません。当たるか外れるかのall or noneですので、ギャンブル性が高すぎます。ですので、たくさん申請せねばならず、それだけで疲弊してしまうわけであります。そこで、安定した基盤的研究費の導入を提案したいと。この研究費は、研究者の過去の実績の評価に主に基づきまして、額が緩やかに変動するようなものです。突然ゼロになったり極端に増える、ということはありません。アンケートでは、9割以上がこのような研究費を導入してほしいと希望しておりまして、またこの導入によって、8割以上が国全体で見た時に研究成果のアウトプットが増えるというふうに予測しております。 次。日本人研究者の海外留学離れ、内向き思考がいわれております。これはポスドク問題とリンクしているわけなんですけれども、海外に留学するのは不安、日本に戻れなくなってしまうのではという危惧があり、海外留学離れが進んでしまい、日本の研究力が低下するというわけであります。そこで、海外日本人研究者ネットワークに公的な支援を、という提案です。ネットワークで情報を共有し、日本人留学者、留学を検討している人の不安が解消できないかということであります。 「このようなネットワークに国が何らかの形で公的にサポートすることについてどう思いますか?」 という質問に対しまして、7割以上が賛成、ということです。 最後の課題。学会が多すぎ。日本の科学にマイナス、という課題です。たくさん参加せねばならず研究時間が減りますし、莫大なコストがかかってしまっております。これに対しまして、我らが大会等のご提案は、学会なんかいらない!!です。ITの活用等で学会の役割は代替可能ですし、人の集まらない学会は速やかに解散、他と合併したらどうかというものです。で、これについてのアンケート、日本分子生物学会要りますか?というアンケート、白黒ちょっとつけましょうというアンケートは、怖くて採っておりません。 ともかく、これらが現場の研究者達の、ほぼ、コヒーレントボイス。研究者コミュニティーの声、といって良いのではないかと思います。なんとか実現していただけないものでしょうか、ということです。よろしくお願いします。 宮野 宮川先生ありがとうございました。宮川先生、笑いも取っていただいてほんとありがとうございます。ちょっと暖まって。このあと早速今からぶっ続けでですね、2時間ほどいろいろ話していきたいと思います。ルール説明の前にまずは自己紹介から。まずは簡単にパネリストの方の紹介を僕の方からさせていただきます。まず、近藤先生。先ほど話された宮川先生。元文部科学省副大臣、鈴木寛先生、すずかん先生です。よろしくお願いします。内閣総科の原山先生です。よろしくお願いします。そしてこちら、川上審議官です。文科省です。次、ヤフーの安宅さんです。そして、トリが、文科省の科学技術タスクフォース室の斉藤さんです。そして僕は今日、司会といいますか、ファシリテーターを仰せつかりました、京都大学の宮野と申します。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。 このメンバーで、途中休憩もあるのかな?2時間ほどダーッと話していきたいと思います。思った以上に、お客様入っているんでね、ちょっと困ったなというか、想定外だったんですけれども、誰もいなかったらこのステージ上に客席上げてここだけで話しようかと思っていたぐらいだったんですけれども。あんま行くとこなかったんかな、という気もするんですけれども。今日はUstreamでも流しておりまして、このパネリストの前にですね、パソコンがありまして、ここでTwitterかUstreamでのコメントも全部見れるようになっております。もしUst見ておられる方がおられましたら、そちらの方に質問とかしてもらったらね、適宜、これ面白いなとかおもったら拾わせていただきます。決して、俺のは拾っていないとか、そういう文句は言わないでくださいね。ばーっと流れていますんで。で、まず今日の設えですけれども、ルールを説明します。まず大前提はですね、後で説明しますけど、ちっちゃくて見えませんよね。皆さんお手元にビラがあるんですかね。あ、ありがとうございます。結構協力的な観客で。もういいです。皆様ありますね。これが一つ基盤になっています。 *PDFファイルが開きます で、何を言いたいかといいますと、さきほど宮川先生からもお話しいただいたように、言葉は悪いですけれども、ここにおられる分子生物学会、分生の研究者の皆様のね、ご不満、思いとかはね、もう十分聞いております。もう、だいたいこう分かっていると。で、それを踏まえて、それこそ近藤先生言っておられたように、飲み会の場を越えるために、とりあえず飲み会の場での議論はまとめていただいた、と、ちょっと言葉悪いですけれども。で、それを踏まえてここに各ステークホルダー、文部科学省、総科、ステークホルダーの皆様を交えて次の議論をしようと。その時にすごく大事なのが、決して全ての問題は個別じゃないよね、ということを言いわけです。全部つながっている。一つにね。こうしてシナリオに。つまり、我々の問題というのは今のシステムが生み出した問題なわけですよ。従って、個別問題を扱うよりも、システムの議論で、ちょっとメタな目で議論しないと何も変わらないよね、という思いからこのマップを配っております。で、これに従って、議論をしていければなと思っています。これは事前にネットでも出しまして、いろんなご意見もいただいてそれも今日拾って、随意みなさんで議論していただきたいと思っております。 まず今日はですね、このいただいたシナリオに関して僕の方からおさらい的に一回説明いたします。その後、各パネリストの皆さんに、ここが一番ボトルネック、というかここが気になるという点をこのフリップに書いていただいて、どんとね、ま、テレビチックなね、よくあるパターンで。鈴木先生とか慣れてるかも知らんけど他の先生慣れてないからうまく行くかどうかは分からんけど。で、書いてもらって、そこからおもろいなというものを僕が拾って、議論を展開していけば良いと。ぶっちゃけ、何にもシナリオも決まっていなくって、こういうメッセージを発したいというのすら決まっていません。ここである意味、参加者の人たち無視してここでワイワイ盛り上がったらいいなと。無視してって…、すいません。ちょっとカチンとしたかな?なんか静かになったかな?急に。ただ、結構、なんと言うんでしょう、専門的なというか、内容がコアな内容になった時に、いや、それは分かりませんということは、カンペの方でスタッフの方が僕にキュー出してくれますので、説明して下さい、というのがあれば、Twitterとかでつぶやいてもらったらいいなと思っています。 じゃあ今から早速行きますね。このシナリオに関してちょっと説明していきます。これはほんの3分程度で。この大きさで見えるかな。見えますね。スタートをどこにしましょうかね。スタートはですね、じゃあ、皆さんなじみのここにしましょうか。事業開始。たとえばですね、競争的資金開始、どういっていいんでしょう、科研費とかですね、CREST、さきがけとか、そういうある公募が出たとします。そうするとですね、いくつかの、3つに分かれます。新規の研究だけれどもある程度、成果がないと、実績がないと応募できませんよね。実績があるものってのは成果が見込めるもので申請書書くっていうことですよね。そうすると、真にオリジナリティーがあるものってなかなか書きにくいよねと。つまり、結果、優れた成果出てこないよね、と。別に研究資金は、次こっち行きますね。僕のマウスポインター見えてんのかな。マルとかやっていはる人とかおる。見えてるね。別に資金はそれほど必要ないけれど、獲得資金=研究能力という傾向が強いんで出すと。で、ちょっと多い目の研究費で申請すると。その結果、なかなか優れた提案が出てこないんじゃないかと。あとここに、先ほど宮川先生の方からもあった、申請書に膨大な量力がかかりますよねと。こういうとこに分かれていって、この膨大な資料作成による研究時間の減少にリンクされております。で、優れた提案が出てこない、次、ざっと行きますね、で、採択か不採択かが決まります。で、不採択になっても、研究者へのフィードバックなし。これほんとに残念な話で科研費もらっていてもちっちゃいはがきでBとかね、5点だったかな、とかきてね、どこ悪かったんやと。ほんと(フィードバックが)ないから、結局よく我々言いますよね。当たった、外れたとかね。結局クジ引きと同じ。当たったか外れたかってなってる。これはちょっとおかしいなと。フィードバックないってことは成長がないってことですからね。で、そういう問題がある。で、採択の場合、例えば、間接経費。一般的に間接経費っていうのはこれは皆さん大体ご承知ですかね。研究に直接かかるお金と、別途、間接的に使ってもいいよというお金。例えば事務員さん雇用するとか、そういうものに観察経費は使われる訳ですけれども、間接経費っていうのは減少傾向にあります。なぜ減少傾向にあるんですかね?齊藤さん。 斉藤  もともと30%間接経費をつけようということで国の方でもずっとやってきたはずですけれども、競争的資金にはつけようということでやってきましたが、競争的資金があんまり競争的になっていないとか、多すぎるんじゃないか、みたいな議論があってですね、それで減りつつあるということですね。 宮野  競争的資金が、多すぎる? 斉藤  端的にいいますと、鈴木先生がいらっしゃるんですけれども、事業仕分けの時にですね、競争的資金というのが対象になって、なんか競争的資金全体が悪いみたいな方向になってしまってですね、それのせいで競争的資金というその枠組みを縮小するという方向に全体としてはなっているという感じですね。 宮野 そういうことか。競争的資金そのものが減っている。なるほど。 と、こんな感じで、僕なんか突然ふったりとか、皆さんも思ったことあればもうぽんぽん言っていただいていいんで。 鈴木  いいですか? 宮野  もちろんです。 鈴木  間接経費っていう名前が悪いんですね。まずね。それで、仕分けの時も申し上げたんですけれども、皆さんの敵は実は隣にいる、ってことですね。隣っていうかですね、仕分け人の、3分の2は大学教授です。法学部だったり経済学部だったり、商学部だったりするわけですけれども、その人たちが、理科系の研究とか、間接経費の意義とかについて理解していないで、とつぜん30分ぐらい仕分け人に選ばれて、なんか言わなきゃいけない。それで、メディアが期待するステレオタイプ的なロールは、減らす、っていう、そういうことで選ばれてきているから。で、彼らがもう一回選ばれたいので、メディアに露出し続けたいので、その文脈にあったことを言った、ということなんですよ。だから間接経費が減ってる、っていうことなんです。 宮野 なるほど。 鈴木 で、一方で、間接経費という名前をちゃんと、例えばプロジェクトを円滑化する、プロジェクト支援費とかね、いろいろ新しい名前を、僕らは、文科省の人と一緒に考えていました。で、そこにはちゃんと、名誉のために言っておくと、いろいろな大学の副学長とか研究担当理事とかは真剣にそこに加わってくれて、そしてその名前を変えてもう一回いわゆる間接経費的な経費を確保するというイニシアティブはなかったわけではない。相当真面目に検討をしていた。 [...]

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アンテナの高い奴ら、横につながって一緒に未来を変えよう!-サイエンストークス・インタビュー WITH 斉藤卓也(文科省大臣官房政策課 評価室長)

20140308

文科省の「考えてる人」中堅代表、斉藤卓也氏のサイエンストークス・インタビュー!文科省の「なかのひと」が今、何を変えたいと思っているのか?そして東京オリンピック・パラリンピックに向けて文科省が発表した「文科省 夢ビジョン2020」の本当の意図とは?サイエンストークスとガチ議論ではすでにおなじみとなった斉藤氏の本音トーク、元気がわいて「自分も何かしなきゃ」と感じること間違いなしです。おたのしみください! 斉藤卓也氏 プロフィール 文部科学省 大臣官房 政策課 評価室長。科学技術改革タスクフォース戦略室長、科学技術・学術政策局 政策科学推進室次長を兼任。科学技術政策を専門に活躍。研究現場の声を政策に反映するためのさまざまな活動やネットワーク作りのために幅広く活動。 (1)科学技術改革タスクフォース戦略室とは? 【湯浅*】 斉藤さんは文部科学省 大臣官房 政策課、評価室長を勤められていますが、一方で「科学技術改革タスクフォース戦略室長」という肩書きもお持ちですよね。この戦略室はどういった活動をする組織なんですか? [*聞き手:湯浅誠, カクタス・コミュニケーションズ代表取締役, サイエンス・トークス代表] 【斉藤】 科学技術改革タスクフォース戦略室は、中堅がボトムアップで作った組織です。なので、そんなに(文部科学)省内でもものすごく知名度があって、権限を振るって…という感じの組織ではありません。文科省のある特定の事業を動かすための組織ではなくて、全体の戦略を見れる組織にしようと思っています。たとえば(文科省や科学技術政策を)全体としてこんな風に変えたいんですという意見を集めたときに、「文科省の中の誰に相談していいか分かりません」なんていう話を人からよく聞くんですよね。タスクフォース戦略室は、そういう時の窓口になれたらいいんじゃないかなあと。理想はそうですね(笑)。 【湯浅】 なるほど、そうですよね(笑)。いや、みなさんやっぱり、文科省は人が多すぎて問題があっても誰に言っていいのかわからないというのはよくありますから。こんな問題あるんだけどどうしよう?っていうときに最初の受け皿になるような方がいらっしゃると本当に判りやすいと思いますので。 (2)日本の研究に、「うねり」が必要な理由 【湯浅】 今、日本の研究力が世界のほかの国々と比べて停滞しているという話があります。先ごろ文科省が出した、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた「文科省 夢ビジョン2020」を拝見しました。あの中でも、「オリンピック・パラリンピック大会の成功と、それに付随する経済効果への期待にとどまらず、日本の将来に向けた変化の“大きなうねり”とすることが必要」という目的が掲げられています。 斉藤さんも夢ビジョンの政策にかかわられていますが、日本の研究に絞って言えば、文科省の立場から見て日本の研究に今「うねり」が必要な理由ってなんなんでしょうか? 【斉藤】 一昔前に比べると、日本の基礎科学の力って上がってきているんじゃないかと思うんですよ。ただ、最近の状況を見ると、論文の数については諸外国がどんどん伸びてきていることもあって日本の地位が相対的に下がっているという事実が明らかに出ています。 中堅でばりばり現場最前線で働いている日本の研究者に「研究者って魅力的な職業だと思いますか?」って聞くと、なんと90パーセント以上の研究者が「魅力的じゃないです!」と答えているんです。こんな現状を聞くと、このままいったら日本の研究は一体どうなっちゃうんだろう?っていう危機感がありますよね。それが最大の理由ですね。 解説しよう!「文科省 夢ビジョン2020」とは? 平成25年9月に下村文部科学大臣が東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に任命された際、下村大臣より「2020年を単に五輪開催の年とするのではなく、新たな成長に向かうターゲットイヤーとして位置づけ、東京だけでなく日本社会を元気にするための取組を『夢ビジョン』として打ち出し、社会総掛かりで実現していく」ことが表明されました。これを受けた文部科学省が他府省庁に先駆けて、省内の中堅・若手職員を中心として省内アイディア公募のほか、若手のアスリートやアーティスト、研究者らとの対話を実施しながらまとめたのが、2020年の日本の姿を描いた「夢ビジョン2020(文部科学省版)」。文科省職員の夢や想いが詰まった未来のビジョン。「いや、もっとこうしたほうがいい!」というみなさんからのアイディアも募集中だそうです。 「文科省 夢ビジョン2020」の詳細はこちら (3)文科省から変えて、好循環を作る 【湯浅】 「夢ビジョン2020」には、「夢ビジョン実現のための省内改革」という提案も含まれています。外部の人間から見ると、「省内改革」が必要とされているポイント、今の文科省の内部で変えるべきだと認識されている問題ってどんなものがあるんだろう?と非常に興味があるんですが。 【斉藤】 「夢に向けて省内改革」って、夢がないよな~って話に聞こえるかも知れないですね(笑)。確かにそういう見方もあるとは思うんですけれども、「夢ビジョン2020」のような新しいことをやっていこうと思ったときに、どうやったらできるだろう?というのを考えると、今の科学技術関係の政策立案のシステムとか、大学や研究機関で研究を行っているシステムというのは、どうもいろいろなところに問題があって、隘路があって、あんまりいい循環になってないんじゃないかという問題意識があるんですよ。 まずは文科省の中の仕組みとか、文科省自身の政策決定の仕組みっていうのを変えていかないと、ダメなんじゃないかと思っているんです。そのために現場の研究者のみなさんの生の声もお聞きします。また、実際に現場で生み出した研究成果をしっかり分析して、それをエビデンスとして示していき、それを元に政策を考えて、政策オプションを提示していくようなやり方が考えられます。そのように、政策立案過程をどう改革していくか?を考えるプロジェクトをすでに文科省内でやり始めていまして。「夢に向けて省内改革」は、それの延長線上の考え方でもあるんです。 (4)「文科省 夢ビジョン2020」にかける想い 【湯浅】 「夢ビジョン2020」は、名前も中身も明るく希望に満ちたヴィジョンに仕上がっていると思いますが、文科省がこういったソフトで明るい夢のある方向性を出してきたことが、当たり前のような、意外なような…。どんな経緯で、今回こういう形のヴィジョンにまとまったんでしょうか? 【斉藤】 下村文部科学大臣が東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に任命された際に、単なるオリンピックをスポーツイベントとして成功させるだけではなくて、これをきっかけに社会が変わるとかうねりを作るのが大事だと、その意味で「夢ビジョン2020が必要だ」、ということをおっしゃっていて。 高齢化社会とか国際社会の中競争が激しくなってるとか、日本国内でもなんだか暗い雰囲気が漂っている中で、オリンピックを契機に明るい話をするいいチャンスですよね!と。普段「夢ビジョン」なんていうと、そんなふわふわした話をして、といわれちゃうところがありますよね。普段仕事をしていると、役所ですらそうだということかもしれないですけれども、非常に近視眼的に、「来年の予算要求何出しましょうか?」とか、そういうところから議論が始まってそれに終始しちゃうみたいな面があるんですけれど、今ならなんか(夢を語ることが)正当化されるというか、チャンスというところがあるんじゃないかと思っていて。 (5)夢ビジョンを作った、本当のねらい 【湯浅】 かなり具体的なテーマや目標を掲げていますが、いろいろあるアイディアのなかから、これらのテーマを選んだ理由というのは。 【斉藤】 「夢ビジョン2020」に関しては、具体的な中身がどうこうというよりも、もっとこういう夢を語って、みんなでこういうふうに変えていきたいんだ!ということをもっと考えていきましょうよ!という社会の動き、ムーブメントを起こしましょうというのがこの資料の趣旨なんです。逆に文科省はこんなこと書いているけれど、もっとこんな夢もあるだろう、こんなアイディアもあるだろう、といろいろ言っていただきたいし、一緒に議論もしたいし。まさに議論のきっかけになる材料を提示できれば、という意図が強いです。 (6)Science Talksに期待すること 【湯浅】 斉藤さんのお話を普段から伺っていると、改革を起こすためには問題意識を持った人たちの横のつながりを作ることがまず必要で、さらに、そのみんなで徹底的に解決策を議論していく場が必要だと感じられているんですよね。そのための人材発掘やネットワーク作りに力を入れられています。 今回、サイエンストークスもまさにそういう場を作って、普段は科学技術や学術関係の政策に疎い方やまだ若手の研究者の方など、いろんな人の生の声を吸い上げて意見をまとめていきたいと思っているんですけれど、そういったムーブメントに対する斉藤さん個人としてのご意見をぜひ伺いたいです。 【斉藤】 科学技術にまつわる問題意識の調査を以前したことがあります。その結果を分析すると、全体のうちの3分の1は、憲法が、とか、財務省、総務省が、とか、要するに国のもっと上のほうのシステムを変えないとどうしようもないものが3分の1ぐらいあるんです。次の3分の1は文科省が予算を取るとか、文科省自身が持っている法律とかで変えることができるもの。残りの3分の1は大学とか研究現場でやれば何とかなるものだったんですね。 現場ではこんな問題があって、政策的にはこんな問題がある。それは分かったんだけれど、じゃあそれを解決するためには一体何をどうやって変えなきゃいけないの?という次のアクションにつながるところまでをちゃんと議論できるような仕組みというか、取り組みというものがないと何も変わらないのかなという気がしているんです。 そういう意味だと、サイエンストークスなり、ガチ議論なり、まさにそのさきがけとしてはじまったみたいなものなんだと思うので、引き続きこういう枠組みができて一緒にいろいろやっていければ、変わるんじゃないかなという期待は持っているんですけれどね。 (7)「変える」仕組みづくり 【湯浅】 変えるためには人の力と知恵が必要で、たくさんの人を巻き込まなければ動かないわけですが、ステークホルダーから意見やインプットを集めたり、活動への協力者やサポーターを増やすことは簡単じゃありません。 【斉藤】 組織は15%の人が変われば動き出す、みたいなところもあるので。タスクフォース室も、そういう意識を持っていて、現状にいろいろ問題があるから何かしなきゃいけないよねと思っている人たちが、じゃあどうしようか?一緒に考えましょうよ!ということになったときに窓口になれるような組織を一応目指しています。 【湯浅】 今はまさに、サイエンストークスでも政府に提案をしてく意見やアイディアのまとめ役をしてくれる方を積極的に募集をしようと思っているんです。ただ、それをこちらから誰か決まった人にお願いするというよりも、「そのアイディアいいよね。その問題を自分でもちょっと解決したいと思っていたから、僕がそれまとめるよ」と思っていただける方が自然と出てこないかなと思っているところなんですね。 (8)これさえ変えれば!まで落とし込め 【湯浅】 サイエンストークスで今回開催している「勝手に第5期科学技術計画みんなで作っちゃいました!」というムーブメントでは、研究者のみなさんなど、クラウドから集めた意見を総合科学技術会議さんや文科省さんに意見を頂きながらまとめて、最終的に提案まで持ち込もうと計画しているんですが、文科省の中の人の立場からみて、この企画、うまくいくコツはあると思いますか?また、「こういう提案なら使えるから、喜んで聞くよ」という要望はありますか? 【斉藤】 こういうムーブメントって多分、まあちょっと大きい話なんで動くか分からないけれど、もし成功すればもっとよくなるかもしれない、っていう種類の活動に、人々がどれだけの労力をかけるのか?っていう話で、そこが課題なんですよ。 たとえばいい企画には自分で喜んで手を上げて参加して、忙しい中でも休暇をとって行くとか。あるいは、たとえば何か意見募集があれば、いろいろあって疲れて帰ってきたんだけれど、でもこれだけは言っておかなきゃ!といって書き込みをするとか。そういう自発的に動いている人のアクティヴィティをいかに高めるかっていうことですよね。 提案に関しては、わーっと意見やアイディアを集めて、ただそれをくっつけて整理するだけでは、それこそよく言われる「電話帳」みたいなものになってしまって。何でもかんでも全員分の意見が載ってますみたいになっちゃうと、電話帳があってもなかなかその中の誰に電話かけていいかわかりませんよ、という話になっちゃう。 だとすれば、全員分のデータの載った電話帳を作りましたけれど、自分たちなりに議論して精査した結果、この3人に電話かけるのがいいですよ、というメモを作って電話帳と一緒に出してもらえれば、受け取った人は多分「3人にかけるぐらいのことはやろうか」となりますよ。 「この3つだけ変えればとりあえず少なくとも今よりは劇的によくなります」という意見を具体的に提案するというか、その部分にもちゃんと時間をかけないと。それをなくして電話帳作りだけで終わっちゃうとたぶん何も変わらない。 【湯浅】 これから一年弱、ぜひご協力をいただければと思いますので。よろしくお願いいたします。 【斉藤】 はい、よろしくお願いします。 斉藤さん、ありがとうございました!みなさんぜひ感じたことをコメントでお寄せください。 (サイエンストークスの記事を許可を得て転載;サイトフォーマットに合わせるため画像等を一部改変)

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総合科学技術会議・有識者議員との意見交換会でのプレゼン資料

20140214

総合科学技術会議・有識者議員の方々に、2013年日本分子生物学会年会「ガチ議論」企画の説明を行い、 1) ネットを活用した現場の研究者との継続的対話の場を設けること、 2) 行政側の方々もそのような場にご参加いただきたいこと、 3) そのような対話はオープンに公開で行なっていただきたいこと、 をお願いしました(2014/2/13)。 詳細はまた追ってご報告いたしますが、さしあたって、プレゼンに使用したファイルを公開します。以下からダウンロードいただけます(外部サイト[包括脳プラットフォーム - XooNIps for CBSN]に移行します)。 ・オリジナル・Keynote版(zip形式に圧縮しています; 20MB)ダウンロード ・Powerpoint版(30 MB)ダウンロード ・pdf版(8 MB)ダウンロード .

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留学経験者は、海外日本人研究者のネットワークと、留学後のキャリアパスの整備を渇望している!

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近年の日本ではグローバル化への危機感などとして留学を促進しようとする向きがあります。しかし、現在どれだけの日本人がどのような形で留学しているのか、その後のキャリアパスはうまくいっているのかなど、その実態を包括的に把握できてはおりません。留学経験者などからのフィードバックも十分に得ないままに日本国内での印象論もしくは少数の個人の経験談だけで留学促進の話をしている現状です。多くの留学経験者が留学を通して貴重な経験をしたと感じているのは事実でしょう。しかし留学での経験がステップアップまたキャリアアップに直結して生かされているかは個人次第であるのが実情と思われ、国としては、留学者数をただやみくもに増やそうとするのではなく留学でより実質的な成果を達成できる体制、そして帰国して活躍できる場を設けて、その成果を最大限に社会に還元してもらえるようなキャリアパスを整備することこそが、戦略的に重要かつ効率的であり、より豊富でち密な情報をもとに将来が見通せる留学を設計する事ができるように支援すべきではないでしょうか。 研究留学の実態を大規模に把握すること、また研究留学の問題点とその改善方法を探る為に、私達United Japanese researchers Abroad(UJA)は大規模アンケートを行いました。以下が膨大なアンケート結果をまとめたエッセンスです。 海外には自由な雰囲気、共同研究や人的交流の機会があり、雑用が少なく、そして有能なボスがいる。留学先から給料を貰うのはもはや主流。語学力向上、留学先ラボの情報収集に力を入れるべきだったと反省。3年程度を見込んだ留学は更に長くずれ込みがちであるが、留学を長すぎたとは感じず、もっと居たいと思うのが多数派であった。研究成果は期待ほど出ない場合が多いが、それでも得るものは大きく、留学について後悔したのは1%以下であった。留学後の将来展望は柔軟に考えているものの、日本に帰れなくなる可能性や情報不足の危機感が強い。海外日本人研究者のネットワークと、留学後のキャリアパスの整備は渇望されている。 詳しいアンケート結果は以下をご覧下さい。 「研究留学に関するアンケート2013」結果のダイジェスト(PDF, 0.6MB) 「研究留学に関するアンケート2013」結果発表(PDF, 2.2MB) 更にUJAは、2013年分子生物学会年会用の4つの特別イベントを通じて、本年会をモリモリ盛り上げていきます。本イベントの詳細はこちらから! ▽ Finding the Way ! 海外留学を考えている方へ、世界の研究者を結ぶ架け橋:12月3日(火)~5日(木)16:00~17:00@第11・12・14会場(神戸国際展示場2号館2階•3階) ▽ 「生命科学研究を考えるガチ議論」にて大規模アンケート結果発表!:12月5日(木)18:00~20:00@第6会場(神戸国際会議場1階メインホール) ▽ 世界を結ぶソーシャルネットワークのご案内!UJAブース:12月3日(火)~5日(木)16:00~18:00@ポスター会場3・ポスター番号1055付近(神戸国際展示場2号館2階奥) ▽ Unite the World!(飲み会):12月6日(金)18:00~20:00@理研CDB C棟 1F ご質問などございましたら、下記メールアドレスまでお問い合わせください。 uja.mbsj2013@gmail.com 会場にてお会いできますこと楽しみにしております。 UJA運営一同

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12月5日「ガチ議論」企画詳細 (Ustream配信あります)!!

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~12月5日(木)@神戸;科学技術にまつわる課題の議論は、この日、此所で完結する~ 第36回日本分子生物学学会年会企画「生命科学研究を考えるガチ議論」(協賛:Science Talks/カクタス・コミュニケーションズ)の内容の詳細です。 主催:第36回分子生物学会年会 生命科学研究を考えるガチ議論企画委員 日時:12月5日(木)18時~20時(*延長最大22時まで) 場所:神戸国際会議場 1階 メインホール(第6会場) 参加登録:年会参加者ならどなたでもご参加いただけます(分子生物学会の参加登録者以外の方で参加ご希望の方は、registration@scienceinjapan.org まで、お名前、ご所属、連絡先、参加動機をお送りください)。年会に参加できない方、分生会員でない方のネットからの参加大歓迎です。 内容:以下のパネリストの方達と共に、文部科学省科学技術タスクフォースが作成した「科学技術にまつわる一連の課題シナリオ(pdf)」を素材にして、現在の科学技術にまつわる問題の本質は何か、これからどのようにしてこれらの課題解決に向けた取り組みをすればよいかを話し合います。本企画は、日本分子生物学会年会による企画ですが、ライフ・サイエンスのみならず、日本の科学技術全般の問題について議論します。当日、参加者の方からのリアルタイムでのコメントは、時間短縮と論点整理のため、Twitter(「#ガチ議論」ハッシュタグがついた投稿を拾っていきます)とUstreamコメント欄 (ソーシャルストリーム)、専用e-mailアドレスに寄せられたメール、の3つの方法で受け付けます。TwitterとUstreamでのコメントは会場のサブスクリーン上で常時流し、パネリストや参加者にも見られるようにします。いくつかをピックアップして、議論の対象にすることも予定していますので、ご意見をどしどしお寄せください。なお、終了時間が遅くなる可能性もありますので、あらかじめ軽食を召し上がってからご来場いただくことをおすすめします。 ・Ustream配信URL:http://www.ustream.tv/channel/scienceinjapan ・Twitterコメント投稿用ハッシュタグ: #ガチ議論 ・e-mailコメント投稿用:comment@scienceinjapan.org スケジュール:  18:00 挨拶(大会会長,「ガチ議論」代表・近藤 滋)  18:03 振り返り動画上映  18:10 これまでのまとめ(「ガチ議論」スタッフ・宮川 剛)  18:15 第一部:パネルディスカッション「これまで」  19:00 休憩  19:10 第二部:パネルディスカッション「これから」  19:40 会場との質疑応答  19:55 閉会挨拶(大会会長,「ガチ議論」代表・ 近藤 滋)  *その後、リング外で議論継続??(最大22:00まで) 参加者: ・パネリスト(五十音順, 敬称略) 川上 伸昭(文部科学省政策評価審議官)1981年、北海道大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程修了。1981年、科学技術庁振興局国際課に入庁。科学技術庁科学技術政策局調査課長(1999年)、(独)宇宙航空研究開発機構経営企画部長(2005年) 、文部科学省 大臣官房総務課長(2008年)、同 大臣官房審議官 (生涯学習政策局担当; 2009年)などを歴任、現職に至る。 斉藤 卓也(文部科学省タスクフォース戦略室長)東京大学工学部電気工学科卒後、文部科学省に入省。大臣官房会計課予算企画調整官、科学技術改革タスクフォース戦略室長などを歴任、現・大臣官房政策課評価室長。政策評価を担当。 鈴木 寛(元文部科学副大臣)1964年生まれ。東大法学部卒業後、1986年通産省に入省。山口県庁出向中に吉田松陰の松下村塾を何度も通い、人材育成の重要性に目覚め、通産省在任中から大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰した。省内きってのIT政策通であったが、「IT充実」予算案が旧来型の公共事業予算にすり替えられるなど、官僚の限界を痛感。霞が関から大学教員に転身し、その後の脱藩官僚の草分けとなる。慶応大助教授時代は、徹夜で学生たちの相談に乗るなど熱血ぶりを発揮。現在の日本を支えるIT業界の実業家や社会起業家などを多数輩出する。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。 原山 優子(内閣府総合科学技術会議常任議員)ジュネーブ大学にて教育学博士課程(1996年)と経済学博士課程(1997年)をそれぞれ修了後、ジュネーブ大学経済学部助教授、経済産業研究所研究員を経て、東北大学大学院工学研究科教授に就任(2002年)。さらに、科学技術政策研究所客員研究官、大学評価・学位授与機構特任教授、総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会、評価専門調査会委員などを歴任。国および地方自治体の科学技術政策、また産学連携、大学改革などの教育・研究に従事してきた。2013年より総合科学技術会議議員(常勤) 。 安宅 和人(ヤフー株式会社・CSO)1968年富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9カ月で学位取得(Ph.D.)。2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの1人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド建て直し、商品・事業開発に関わる。また、東京事務所における新人教育のメンバーとして「問題解決」「分析」「チャートライティング」などのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社に移り、COO室室長として幅広い経営課題・提携案件の推進などに関わる。2012年より執行役員 CSO(チーフストラテジーオフィサー)。 ・ファシリテーター 宮野 公樹(京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐)京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐。1996年立命館大学理工学部機械工学科卒業後,2001年同大学大学院博士後期課程を修了。大学院在籍中の2000年カナダMcMaster大学にて訪問研究生として滞在。のち、立命館大学理工学部研究員,九州大学応用力学研究所助手、2005年京都大学ナノメディシン融合教育ユニット特任講師、2010年京都大学産官学連携本部特定研究員、2011年より現職。また、2011年より文部科学省研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室 学術調査官を兼任。博士(工学) 専門分野:金属組織学,医療用マイクロデバイス,研究室運営,コーチング,大学戦略,戦略的プレゼンテーション,コンセプトデザイン ・スタッフ  近藤 滋(阪大 教授; 年会大会長)  中川 真一(理研 准主任研究員)  宮川 剛(藤田保健衛生大学 教授;「ガチ議論のまとめ」プレゼン)  小清水 久嗣 (藤田保健衛生大学 助教;進行補佐) ・協賛  カクタス・コミュニケーションズ パネリストインタビュー&対談: ・文科省タスクフォース戦略室長 斉藤 卓也 氏 × 「ガチ議論」企画ファシリテーター・京都大学学際融合教育研究推進センター准教授 宮野 公樹  対談内容を書き起こしたテキストはこちら ・元文部科学副大臣・元参議院議員 鈴木 寛 氏  インタビュー内容のテキストはこちら ・内閣府 総合科学技術会議 常勤議員 原山 優子 氏  インタビュー内容のテキストはこちら ・年会大会長・「ガチ議論」企画委員長・大阪大学大学院教授 近藤 滋  インタビュー内容のテキストはこちら 動画制作:カクタス・コミュニケーションズ 関連リンク: ・分子生物学会年会サイト内ホームページ「生命科学研究を考えるガチ議論」 ・「ガチ議論」サイト上におけるこれまでの議論(一部)  科学技術にまつわる課題の議論は、この日、此所で完結する!  ガチ議論企画その1:「文科省お役人への質問大募集」  文科省お役人からの回答  安定性と競争性を担保する 日本版テニュアトラック制度の提案  労働契約法改正は朗報か  研究者と雑用  しんがり研究  学会なんかいらない!  安定した基盤的研究費の導入を!  海外日本人研究者ネットワークを作りました [...]

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「ガチ議論」企画参加パネリストのインタビュー

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「ガチ議論」企画本番に先駆けて、参加パネリスト、ファシリテーターの方々にインタビュー・対談を行っています。 対談:文科省タスクフォース戦略室長 斉藤 卓也 氏 × 「ガチ議論」企画ファシリテーター・京都大学学際融合教育研究推進センター准教授 宮野 公樹 対談内容を書き起こしたテキストはこちら インタビュー:元文部科学副大臣・元参議院議員 鈴木 寛 氏 インタビュー内容のテキストはこちら インタビュー:内閣府 総合科学技術会議 常勤議員 原山 優子 氏 インタビュー内容のテキストはこちら インタビュー:年会大会長・「ガチ議論」企画委員長・大阪大学大学院教授 近藤 滋 インタビュー内容のテキストはこちら 動画制作:カクタス・コミュニケーションズ

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科学技術にまつわる課題の議論は、この日、此所で完結する!

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本記事は、企画当日までに皆さんの問題意識をできるだけ多彩に集めることを目的としています! 記載した資料(pdf)をご覧ください。これは文部科学省科学技術タスクフォースが作成した科学技術にまつわる一連の課題シナリオです。例えば、これ(下の画像クリックでpdfが別ウインドウで開きます)をご覧になって、 (同一内容をPrezi形式に変換したものです)  ・ここはまったくその通りだ! ・ここはこっちの方がしっくりくるのでは? ・あの要素が含まれてないよ ・ここの部分は削除してもいいんじゃないかな  などなど、ご意見をお寄せいただければ幸いです! これらの課題、いったい誰の責任で、誰がどう解決するのでしょうか!? 本番では、いただいたコメントを題材として、重厚なパネリストとともに議論を展開していきます! 京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐 宮野 公樹 (「日本の科学を考えるガチ議論」本番にファシリテータ役として参加予定;この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)

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研究者と雑用

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研究費をどのように分配するかというのは非常に難しいテーマで、たとえば基礎研究と応用研究、どちらにどれぐらい予算を配分するのが最適かという問題はすぐに答えが出るものではないと思います。一方で、総額はそのままに、研究費を実質増加させる事が出来る素晴らしい方法があります。それは雑用の軽減です。 雑用のために研究の時間が取れないという話を良く聞きます。授業や広報活動や予算申請などが雑用かどうかは別途議論が必要かもしれませんが、あきらかに他のプロの方(たとえば事務の方)が行うべき業務を研究者が行っているという例も散見されるような気がします。 教授会では、教授が話し合わなくても良いのではないかという話題がよく議題に上るという話を聞きます。教授会でトイレのドアの扉を変えるかどうかを延々議論しているというのは本当の話でしょうか。また、各研究室の電気メーターのチェックを超一流大学の助教の方がされているという話も聞いたことがあります。このあたりは役割分担が必要なのにそれが欠如していて結果としてムダを生んでいる例ではないでしょうか。物品納品にかかる煩雑な書類や全ての物品購入についての使途目的の記載も問題です。もとはといえば研究者が引き起こした不祥事が原因となっているのは確かですが、各種の規定が高止まりで残ってしまっているという側面があるのは否めません。倫理的な問題はあるにせよ、ごく一部の人間が犯す間違いによって100万円が無駄になったとして、その対策に1億かけるのはどうかな、と思わざるを得ません。えっ、そんなにかかっていないでしょうという反論はあるかもしれませんが、 時は金なり。塵も積もれば山となる。国内に研究者がどれぐらいいるのか正確には把握していませんが、いわゆる「スタッフ研究員」は10万人の規模でいるのは間違いないでしょう。それらの人々が平均年収500万円だとして、人件費として「スタッフ研究員」には年間5000億円が使われている訳です。一方、それらの人々が働いている時間は、一日10時間働いているとして(実際はもっと働いておられると思いますが)、月に約200時間。つまり、個々の研究者の時間を一ヶ月に2時間奪う雑用があるとすれば、年間50億円のお金をドブに捨てているのと同じことということになります。 実態がどうなのか、それは分かりません。そこでまずお聞きしたいのは、 その上でお願いしたいのは、これって無駄なのでは、こんな事しているのはうちの大学・研究所だけなのではないか、という事例をコメントでいただけませんでしょうか。また、そういう無駄をなくすためにはどうすれば良いかという知恵もあればぜひお願いします。ガチ議論には、文科省の人も、総合科学技術会議の方も、政治家の方も、見えられています。分生年会当日は議論している時間の余裕はないかもしれませんが、実態を伝えるだけで、居酒屋で愚痴っているよりは少しは前に進めるかもしれません。もしかしたら各事業所のレベルで即刻やめる事の出来るローカルルールもあるかもしれません。 皆様の率直なご意見や愚痴(?)をお待ちしております。 理化学研究所 中川真一 (この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)

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研究不正フォーラムの概要とご意見・提案の募集

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分子生物学会年会の研究不正フォーラムの概要ができ上ってきました。以下は、年会プログラムに載せる告知です。 日程とタイトル 12月3日(火)10:00 ~ 11:30 研究主宰者や共同研究者が研究公正性に果たすべき役割 12月3日(火)14:00 ~ 15:30 研究機関が研究公正性に果たすべき役割 12月4日(水)10:00 ~ 11:30 研究不正を防ぐジャーナルシステム 12月4日(水)14:00 ~ 15:30 研究不正を防ぐ研究費配分システム 12月5日(木)10:00 ~ 11:30 不正調査の実際と有効性 12月5日(木)14:00 ~ 15:30 まとめ、今後の課題と次のアクション ※セッションの概要は、翌日の朝までに年会HPにアップする予定です。 会 場:神戸ポートピアホテル 地下1 階 トパーズ 近年、研究の発展を阻害するような研究不正が続発し、研究者に対する信頼性が大きく揺らいでいます。ライフサイエンスの研究成果が、医療技術や薬の開発などを通して社会と直結する現代において、研究の公正性を確保することは絶対的に必要です。研究不正を防ぐための何らかのルール・仕組みを、早急に作ることが必要ですが、その任務を主導するべきは我々科学者であると考えます。なぜなら、我々は当事者であり、我々だけが、不正に関する種々の事情を正確に理解し、適切に対応できるからです。もし、我々がこの危機に対して何もしなければ、外部から新しいルールを押しつけられることは間違いなく、それが、不合理で研究の障害になったとしても、何一つ文句は言えません。このフォーラムでは、これまでの様にスローガン的な結論を出すのでなく、過去の不正事例を検討し、どうすれば不正を減らすことができるかに関する具体的な提案につなげることを目的とします。また、それによって、この問題に対して科学者社会に、健全な自浄作用が保持されていることを一般社会に向けて表明したいと考えます。 フォーラムの形式と内容 本フォーラムは、漠然とした一般論に陥ることなく、不正を減らせるような具体的な提案につなげるため、テーマを絞った6つの独立したセッションから構成されています。各セッションのテーマに適した人材を講演者、パネラーとして招聘し、基本的に講演以外は自由討論という形で議論を深めます。講演を含む、全発言は全文記録し、不適切発言などを削除した後、全面公開します。また、サイエンスライター(2名程度)に記録をお願いし、客観的な立場からまとめをお願いすることを計画しています。 なお、このフォーラムは糾弾のためにあるのではなく、あくまでも未来に向けての改善策を探る事が目的です。このことは、フォーラム参加者全員がしっかりと心にとめておいていただけるよう、お願いいたします。重要な関係者に参加をいただくべく、様々な働きかけをしておりますが、内容の詳細につきましては年会HPにアップデートしていきますので、そちらをご覧いただければ幸いです。 研究倫理委員長 小原 雄治 理事長 大隅 典子 以下は年会長・近藤滋による解説+αです。 フォーラムは、テーマを変えて全部で6セッション行われる予定です。各セッションにおける内容は、ゲストの予定により入れ替えになる可能性もありますので、是非直前に年会HPでご確認いただけますようお願いします。どのようなゲストが来るかが重要です。絶対に確実とは言えませんが、ジャーナルサイドからはN誌の編集者が来てくれる可能性があります。また、研究費の配分機関からも、担当者が来てくれることになっています。あと、不正の起きる背景や、どうして防げなかったのか?を考える時に一番大事なのは、その不正の中核にいた人達であり、彼らの証言が極めて重要です。彼らをフォーラムに招きたいと思っていますが、今のところお約束はできません。 フォーラムでは「どうやれば不正を減らせるか」を建設的に話し合うのであり、それぞれの立場を攻撃しあう事では無いので、そのあたりを心にとめてフォーラムに参加していただけると大変ありがたく思います。 議論する内容に関してはある程度固まってきていますが、特に議論してほしいことや提案があれば、この記事のコメント欄に書きこんでください。また、当日発言したい、という人がいれば、そのこともコメント欄に。確実とは言えませんが、実行委員会で取り上げて検討します。 以下、コピペ論文の処理に関する私の意見です。(フォーラムで発言しようと思っています) 不正問題に関して研究者間で話していると、大抵の場合、ジャーナルが強制的にリトラクションしないのが悪いとか、研究費の回収を行わない配分機関が悪いとか、結果を発表しない@@大学の首脳が悪いとかいう話が出てきます。実際そういった面もあるでしょうが、考えれば彼らは研究をサポートする立場です。まず、研究者自身に自浄作用があることを示し、それを研究者以外の当事者や社会全体に浸透させることが大事であると思います。公正局は確かに必要でしょう。実際に、不正事案は多発しており、それを関係機関がうまく処理できているようには見えませんから。しかし、公正局ができても、それがうまく運用できるかどうかは、研究者自身の良識のレベルにかかっていると思います。 いわゆるコピペは、データだと主張している図に、違うものが存在しているわけなので、悪意があったかどうかに関係なく、「その論文が信用に値しない」ことを明瞭に示しています。たとえ、コレクションをジャーナルが認めたにせよ、読者はその論文のデータを信用しないので、その論文は「アカデミックな意味で」存在価値がありません。したがって、その論文に関する全てを代表する責任著者の義務として自主的にリトラクションをするべきだと、私は思います。自主的なリトラクションは、その研究者が正常な倫理観を持っていることの証拠の一つにもなります。また、リトラクションにより、少なくともアカデミックな意味では、不正事案自体が無くなるので、その方が研究者自身や関係者にとっても安全です。(不正論文で多額の研究費を得たとかの「社会的な責任」はまた別です。) 考えれば、「コピペ即リトラクション」のルールを作るまでも無く、コピペ論文の無価値化は容易にできるはずです。現在既にネット上に挙がっているコピペ論文のリストを網羅したデータベースを作り、それを研究費の申請書やポストへの応募書類についてくる業績と照合すれば良いだけですから。そんなソフトは、簡単に作れるはず。その照合に引っ掛かれば、その申請・応募は間違いなく却下されるでしょう。そうなると、そんな危険のある論文を業績欄に入れることは怖くてできません。コピペ論文は、自動的に無価値になります。既にやっている機関だって、あるはずです。あるいは、文科省や学術振興会に近い人が、そのようなデータベースを持っている、とつぶやくだけで十分に大きな効果が得られるかもしれません。JSPSやJSTは直ぐにでもやるべきだと思います。(もうやっているかもしれませんが。)あるいは、NPOがやっても良いかも。一人でもできるでしょう。 解説+α部分文責:分子生物学会年会長・近藤滋

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しんがり研究

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JST戦略創造研究推進事業の中で、最も成功したと評価されているのは「さきがけ」であろう。先頭を切って敵に突進する勇者である「さきがけ」は、まさに若い研究者の研究助成にぴったりのネーミングである。しかし、もちろん、戦(いくさ)はさきがけ武者だけでは成り立たない。そこでERATO, CRESTが戦闘部隊の本隊として存在するのであるが、実はこれだけでは大事な要素が欠けているのだ。そう、殿(しんがり)である。 殿(しんがり)とは、後退する軍の中で最後尾を担当する部隊を指す。敵の追撃を阻止し、本隊の後退を掩護することが目的の部隊である。限られた戦力で敵の追撃を食い止めなければならない最も危険な任務であるため、古来より、最も武芸・人格に優れた武将が務める大役とされてきた。軍隊には無くてはならない存在だ。現代の研究者社会にも、さきがけ同様、しんがりが必要ではないだろうか。 JSTさきがけは、40歳くらいまでの独立前か、独立直後の個人研究を援助する。期間は3年間、予算規模は年あたり千数百万である。一方、JSTしんがりは、期間、規模はさきがけと同じ。違うのは年齢制限が60歳以上という事だけ。 大学の教官、特に教授になると、「教育の義務、組織のマネージメント、評価、学会の仕事、などなどが山のようにあり、研究の時間がほとんど無い」という。また、大きな研究グループの長になっても、研究費の調達と多数いる研究員の指導に神経をすり減らす。実際、ほとんどの先生はいつも忙しくしており、かわいそうなほどである。彼らが決まって懐かしそうに話すのは、100%の時間を研究に使えたPD大学院生やPD時代の事だ。「PDをもう一度やりたい」「PDが一番良い時代だった」と飲み会で話すのを何度も聞いたことがある。よろしい、夢をかなえましょう、というのが「JSTしんがり」である。 実際、JSTしんがりは夢のような制度だ。応募者は60歳以上の教授、研究部長など。彼らは、自分で研究がしたくて、時間が欲しくてたまらない(はず)。研究人生の最後に、長年温めてきた最高のアイデアを試してみたくて仕方がない(はず)。しかし、日頃は忙しく、それに集中することができないで悩んでいる(はず)。だから、彼らを雑務から解放し、さきがけ研究者の様な立場に戻して挙げよう。当然、教授も部長もやめてもらうので、教育の義務もマネージメントも一切なし。一研究者として100%の時間を使う夢のような日々が待っているのだ。こんな素晴らしいことがあるだろうか? さきがけ研究者は独創性を求められるが、それだけを追求すると、期間中に成功できない危険もあり、そうそうぶっ飛んだことはできない。ある程度安全運転せざるを得ない。しかし、しんがりはそんなことに悩む必要はない。人生最後の大ばくちに心おきなく挑戦できる。誰もやりたがらないような、誰も信用しないような研究。でも当たれば超大あたりの研究こそがしんがり研究の真髄であり、それが競争的な環境における研究の多様性を保証するのである。まさに、殿軍そのものだ。 しんがり研究は、3年ごとの再審査さえ通れば、自分で研究ができる限り更新可能。知力と体力の続く限りいつまでもできる。唯一できないのは、大きなグループを率いてやることだけ。グループを率いてやるような研究は、もう出来上がっているのだから、誰に任せても問題なし。自分がいなくても大丈夫。ノーベル賞の対象となった研究の多くは、大グループの親分としてでは無く、若い時になされたものであることは、言うまでも無い。 と言うわけで、60歳過ぎてもアイデアがあり研究者魂にあふれた科学者であれば、必ず「しんがり」に応募するはずである。では、そのガッツの無い人達は、、、う~ん、早くやめてもらっても、特に問題無いと言うか・・・・・ text by「元さきがけ研究者」

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