【帰ってきた】ガチ議論
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日本の科学力の向上へむけて

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2024年7月に福岡で開かれるNeuro2024にて「ランチョン大討論会 〜私達が望む神経科学の研究環境―よりよき現在と未来へ向けて」を開催します。本稿は同企画における議論のたたき台となるものです。


近年、日本の科学力の相対的な低下が顕著となり、これに対するさまざまな対策が行われつつあります。1990年代から始まった大学院重点化、2004年の国立大学法人化、近年では地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージや国際卓越大学など、さまざまな大学改革が政府主導で行われています。また、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)においては、第7期科学技術・イノベーション基本計画が策定中です。
 でも、肝心の研究の担い手は私たちです。日本学術会議やさまざまな学協会においてもさまざまな議論が行われていますが、人文社会科学系や数物系、理工学系と、生命科学系ではかなり置かれている状況が異なります。神経科学はこれら幅広い分野からの研究者が参加する融合的/分野横断的な研究を特徴としており、それぞれの研究者が置かれる状況も多様です。本討論会では、この多様性を踏まえつつ、研究費やキャリアパス等の研究環境について、現場の研究者の意見を集約します。その結果を国レベルでの政策にフィードバックすることを通じて、よりよい研究環境を創っていきましょう。
研究の原動力は何かを知りたいという好奇心や、何かを実現したいという情熱です。しかし、好奇心と情熱に基づく研究は、すぐに成果が得られ社会の「役に立つ」とは限らないため、これらを長期的にサポートする環境と十分な資金、社会的な理解が必要です。では、どのようにすれば、研究者が安心してじっくりと研究に打ち込み、成果を挙げていくことができる研究環境を整備できるのか?そのために必要な資金と社会的理解をどのようにして得るのか?様々なステイクホルダーが協働して議論を進める必要があると考えますが、そのたたき台として以下の原則を提案します。これらについて、皆さまからのご忌憚のないご意見を歓迎いたします!

1. 研究関係者のキャリアパスを長期的に俯瞰できるものに!
・研究室主催者を目指す研究者のトラックのみならず、アドミニストレーション、技術支援、教育中心などのトラックを用意することにより研究者の多様なキャリアパスを実現し、各人の個性を活かした分業体制を充実させること。
・研究関係者のキャリアパスを、現代の日本社会の標準的な正規雇用のあり方にできるだけ合わせつつ、各人の適性とライフステージに合わせた適材適所の流動性を確保すること。
・博士号取得者が広く社会に受容されるための各種基盤を整備すること。

2. 安定した基盤的研究費の充実を!
・基盤的な科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金;いわゆる科研費)の充実(増額と申請・評価疲れ低減のための大括り化など)と安定化(評価による増減ありのリニューアル可能なものにするなど)を実現すること。
・政策的なトップダウン研究費と基盤的なボトムアップ研究費(科研費)の効果的・有機的な連携システムを構築すること。
・基金化などによる年度繰り越しの容易化をすべての研究費に普及させること。

3. 分野横断的な対話・議論ができる場を!
・学協会レベルでの各年齢層にわたる意見を、国の政策に活かしていくための双方向コミュニケーションの場を充実すること。
・分野横断的な問題については学会の連合体や、日本学術会議と連動して協議できる場を立ち上げること。

4. 社会との対話の活性化を!
研究から得られた成果が学術的・社会的なイノベーションを生みやすくするために、オープンサイエンスを推進し、一般国民、企業関係者、政治家、官僚などと双方向性のコミュニケーションや連携を行うことのできる場や仕組みを設けていくこと。

Text by 日本神経科学学会・ランチョン大討論会・企画者一同


参考:
・「わが国の研究力向上に向けた日本学術会議の取り組み−審議の経過と将来展望−」 日本学術会議我が国の学術の発展・研究力強化にする検討委員会・委員長 山口周 [PDF]
・「2040 年の科学・学術と社会を見据えて いま取り組むべき10の課題」日本学術会議若手アカデミー [PDF]
・盛山正仁文部科学大臣によるJAAS年次大会2023開会式でのビデオメッセージ(書き起こし):https://meetings.jaas.science/blog/20231007-4484/
・JAAS研究環境完全WGによる“科学の生態系”にエネルギーを!「10兆円規模の大学ファンド」等についての提言:https://jaas.science/2022/04/20/10_trillion_fund/
・JAAS「会いに行ける科学者フェス」の紹介文:https://meetings.jaas.science/overview/
・神経科学者SNSの「これからの科学・技術研究 についての提言」 [PDF]

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