日本の科学を考えるガチ議論
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20130417_mext

文科省官僚への質問、第二弾:本音は引き出せたか??

ツイッターまとめ
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前回のアンケートに対する回答に続き、コメントとして書き込まれた内容をまとめて、さらに質問をぶつけてきました。今回は、前回よりも踏み込んだ回答と、官僚の本音のところが見えて面白いです。皆さんは、どの様に感じるでしょうか?

ご注意
以下の問答は、11月6日に行われた、4時間余りの議論をまとめたものを近藤が整理して文章化したものです。従って、行間から、斉藤・生田の意図しない雰囲気が伝わる可能性がありますが、それは近藤の責任ですので、ご理解を。また、斉藤氏、生田氏の個人的な発言であり、文科省の公式見解ではありませんので、その辺も御留意下さい。


[時・ところ]
 2015年11月6日 文科省

[参加者]
 ガチ議論:
 近藤滋、宮川剛
 遠藤斗志也(BMB2015 生化学会大会会頭)

 文科省:
 斉藤卓也(文部科学省 研究振興局 基礎研究振興課 基礎研究推進室長)
 生田知子(文部科学省 大臣官房政策課 評価室長)

ガチ:前回の生田さんとのインタビューを掲載したところ、かなり大きな反響がありました。研究者サイドからは、予想通り、「無責任だ!」というネガティブな突っ込みが多かったのですが、一方、外部の人のツイッターのコメントを見ると、生田さんのご意見は当然の物である、というものが結構ありました。で、今回は、寄せられたコメントの主だったものを、掘り下げてみたいと思います。
生田:よろしくお願いします。

改革の必要性について
ガチ:まず、最初に聞いておきたいのは、そもそも大学や研究環境をこれほどまでに競争的にする必要が有ったのかと言う事です。ノーベル賞を50年で30個という目標が、科学技術基本計画で建てられましたが、現在のペースはそれを超えており、アメリカを除けば一位です。要するに、既に存在する最高の盆栽に、わざわざ手を入れて悪くしていないか…。
斉藤:ノーベル賞を取ることが全てならそれでよいです。しかし、それだけでよいとは産業界などは思っていません。ノーベル賞のベースは守りつつ、社会の要請にももっと応えるための改革は必要です。
ガチ:でも、それを言いだしたのは政府の方ですよ。
斉藤:もう一つは、時代の違いです。科学の国際的な競争が激しくなりお金がたくさんかかるようになった。財政事情から言って、外国(中国)の様には増やせないので、もっと効率の良い方法を見つけるという意味もあります。
ガチ:それがうまくいっているかどうか…。
斉藤:その辺は、アカデミアと政府がもっとよく話し合い、例えば総額は減っても、過度に競争的でないというプランもありえると思います。そういった思想を大学と共有してやっていくという道もあったとは思いますが、残念ながらアカデミアでも、役所でも、そのようになっていない面があるかと思います。ですが、交付金が減りすぎという意見も増えているし、地方創成が政権の重要テーマとなっている中で地方大卒の人がノーベル賞をとったので、そういう議論を始めるいいチャンスだと思います。

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PD問題の責任論について
ガチ:まず、「無責任だろう!」という責任論ですが、そもそも、大学院重点化とかポスドク10000人計画とか、非常に大きくて影響のある方策は、誰がどうやって決めるのでしょうか。
生田:そのような大きな方針の場合、誰が、ということは基本的になく、関係諸機関での意見の集約をしていく過程で、だんだん形を成していく、という感じです。役所のものの決め方は個人の責任で決断できる民間企業とは違う、ということをご理解ください。
ガチ:しかし、そうなると、こちらとしては責任論の持っていき先に困りますねぇ。
生田:もともと、役人一人が責任を取ることなどできませんので。ですが、貴重な税金を使うわけですので、1個人の思い付きではなく、関係者諸機関の意見を集約するのは、当然だと思います。
ガチ:関係者諸機関というと?
生田:総合科学技術会議や学術審議会、財務省や政権与党、内閣府、官邸などですね。
ガチ:JSTやJSPS、NISTEPなどは。
生田:もちろん、それらも、重要な情報源です。
ガチ:で、それぞれの諸機関がどういったデータ、根拠をもって意見を出してくるのでしょう?
生田:関係機関のそれぞれが、公開・非公開の審議会で、識者の意見をまとめますが、科学技術に関することであれば、識者の多くはアカデミアの人です。ですから、大きな方針の決定には、基本的にアカデミアの中心的な人が参加している、と認識しています。
ガチ:と言う事は、そのレベルでの議論に勝たないと、大きな予算は通せないと言う事ですね。
生田:そうなります。
ガチ:しかし、経過はどうであれ、ポスドク10000人計画・大学院重点化を打ち出して、それにより、ひどい就職難を起きてしまったのは事実です。そのことに対して、何とかレスキューの手立てをしてほしいという要求があってもおかしくないのでは?
生田:ポスドクを作ってしまったのだから、いきなり切られても困る、と言うのは良く解ります。今のところ、とりあえずできているのは、細切れ予算でつなぐ事しかない、というのが現状ですね。
ガチ:自転車操業ですか。
生田:その通りです。それを脱するには、予算を通さないといけませんが、その目的が「余剰人員を救う」では、難しいでしょう。財務関係からの「もっと別に救うべき人はたくさんいる」という主張に勝てません。もっと積極的に「高度な人材を活用する」というポジティブなプロジェクトを、説得力のある形で提示しないといけない。
ガチ:それを、誰が?
斉藤:ぜひ一緒にやりたいですが、我々にそのアイデアが出せるかというと…やはり、アカデミア側で知恵を集めていただいて一緒に考えていかないといけないと思います。
あと、運営費は減っていますが、その分、競争的な資金が増えているので、大学に投下される予算の総額は変わっていません。ですから、若手のポスト問題の救済を主張する場合、まず、大学内のシステムを最適化してできるだけ改善し、そのうえで主張しないと、社会や財務省に対する説得力がありません。限られた予算を最適化されたシステムで使う必要があり、大学の運営も改革する必要があると思います。

運営費交付金と地方大学の問題
ガチ:大学の改革の話になりましたが、運営費交付金が減らされてすぎて、特に地方大では研究者教育が成り立たない状況が生まれています。
生田:実は、先ほどまでそのことをテーマにした委員会が開かれておりまして、同じことが問題になっていました。減らしすぎて弊害の方が多いという問題です。また、大学側に戦略的な改革を期待しても、組織の維持だけでもいっぱいいっぱいで、それを実行するだけの資金が無い、ということも認識しています。食い止められなかったのか、とも聞かれるのですが、この問題は、毎年財務の側から「人口減なので教員の数、交付金を減らせ」というプレッシャーがあり…結果的に自転車操業的に種々のプロジェクトで総額だけは減らさないようにしているという感じです。
ガチ:それはそうですが、プロジェクト予算と交付金はずいぶん違うので。
生田:はい、それはわかっていますが、予算を通す時に具体的な出口のあるものですと説明しやすいので、どうしてもそっちに注力しがちになります。基盤研究費を皆に、とか、交付金を一律に増やす、だと、それこそ金額の話にしかならないので、説得力を持てません。ただ、今年のようにノーベル賞を地方大出の研究者がとってもらえると、そのことを材料に交渉することができるので、有り難いです。
ガチ:ここまで減ったのを戻すのは無理でしょうか?
生田:国民がそう感じれば。ロケットやスーパーカミオカンデなどは、その分野の人たちがうまく国民に対してアピールしています。両者とも「役に立つ」というロジックから遠く離れていますが、ちゃんと予算を獲得していますから。
ガチ:そこのところは、生命系の研究者一丸となってやってほしいと…。
生田:いくらでもサポートしますが、我々は専門家ではないので、そこは皆さんの役割かと。

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トップダウンプロジェクトの問題点
ガチ:総額で変わっていない、とのお言葉ですが、競争的な資金は使途を自由にできるわけではないことを忘れないでください。大学はお金が無いので、リーディング、GCOEなどのトップダウンプロジェクトは、莫大な労力をかけて、しかもかなり無理をしてまで取りに行きます。それって、大学に取って大きなコストになるのです。
斉藤:そうかもしれませんが、それを含めてうまくやるかどうかも、競争のうちでいいんじゃないかと思いますけどね。コストをかけても取りに行くかどうかも含めて、大学の経営能力とポリシーが問われる、と。
ガチ:運営費が減らされているので、そんなポリシーが働かないんですよ。あと、プロジェクトを5年単位で止めず、続けてほしいです。運営の蓄積があれば労力も減り、無駄もなくなる。また次の新しいプロジェクト、となるとたいへんです。そもそも短期のプロジェクトの連発で大学の改革を促す、ということが間違っているのではないでしょうか。
斉藤:一応、名目上は短期のプロジェクトは試行という意味が大きく、うまくいったものに関しては、継続してもらうということで、先導の事業を進めています。うまくいったら次は大学のお金で自腹でやってください、が建前です。
ガチ:でもうまくいっても、大学にそんなお金ないですよ。
斉藤:だから、うまくいったから、このお金は切っちゃいけない、というそういうロジックを作っていかないといけないのですが、それをやる仕組みが無いのが根幹のところの問題なのかな。今WPI事業の担当をしていますが、まもなく支援期限を迎える拠点の能力の維持が最大の課題になっています。
ガチ:交付金が減ったらできないですよね。
斉藤:ですので、間接経費をもっと増やすことや民間からの資金獲得を進められるように色々検討が進んでいます。
ガチ:50,60%に増やせると?
斉藤:不可能ではありません。
ガチ:でも、今よりもさらに間接経費頼みとなると、地方大は消滅しますよ。
斉藤:ですから、世界と戦うために競争的環境に生きる大学と、地方と共生して人材育成や地域産業への貢献を重視する大学に分類分けし、そっちの方は、間接経費ではなく別のロジックで与える…。
ガチ:な、なるほど、そういう理屈で大学の3分類が出てくるのですか…。

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トップダウンの決まり方はどんなやり方?
ガチ:ではそのトップダウンのプロジェクトの決め方なのですが、具体的にはどんな方法でしょう?
生田:基本的にアカデミアの意志を吸い上げて、となるのですが、政治家や内閣の誘導によるものも有りますので、色々です。
ガチ:いわゆるロビー活動のように、官僚と個人的接触のある学者がプロジェクトを持ってくるというのは?
生田:結構あります。実際のところ、予算は急に決まることが多く、そのタイミングで、既に形になったプランがあると話が早いので、利用させてもらう事が多いのです。しかし、これが良いと納得しているわけではありません。
ガチ:どういう事ですか?
生田:審議会行政の悪いところと言いますか、役所に足しげく通う御用学者ばかりが我田引水的に得をして、分野のためにはならない可能性が心配するからです。もちろん、我々にも責任があり、待ってるばかりでなく自ら探さねばいけないのですが、専門的知識と時間が無いのでできていません。
ガチ:そういった点が学会が果せる役割が有りますか?
生田:学会でオープンに話し合う事でコンセンサスが保証されているようなプロジェクトがあれば理想的で、そちらを選ぶことになるのでは、と思いますがどうでしょう。その点、物理系、化学系は、結構しっかりしていると言う印象があるのですが。
ガチ:う~ん…生命系がまとまるかなあ…。

文科省とのかかわり方
ガチ:ロビー活動の話が出てきたので、文科省との関わり方についてお聞きしたいと思います。実際のところ、何かアイデアが有って、それをまとめて持って行ったとしても、聞いてくれるように思えないのですが。
斉藤:色々な陳情がありますので、いきなり見ても、単に我田引水のような陳情なのか、本当に科学的に意味のあるプロジェクトなのか直ちには解りません。やはり、何らかのやり方で(学会等でとか)意見集約してくれていると、話が進みやすいと思います。
 一方で役所の方も、「政策のための科学」という動きを進めていまして、論文分析など客観的なデータに基づいて、政策を作ったり、プロジェクトや戦略目標を立てたりする方向にしていきたいと思っています。
あと、できれば、そのプランを作るところから参加させていただけるとありがたいです。一緒に作ったという一体感がある方が、担当者も本気を出して動きやすいと思いますし。事業として進めて行くには色々と必要なノウハウや根回しなども有り、いきなり結果だけいただいても対応できないことも多いです。

ガチ:しかし、お役所というと敷居が高くて、下っ端が出てきて門前払いをくらい、というイメージがあるのですが。
斉藤:本気でどうしても通したい話があるのであれば、体を張って抵抗をしてください(笑)。そのためにも、アカデミアと役所の日頃からのコミュニケーションが必要だと思います。
ガチ:いや、ですけど、大学にとって官僚っていいますと、雲の上の存在的なイメージがあるのですよ。15年くらい前に、ゲノム特定領域の班会議(1000人くらい参加)の懇親会に、とても若い担当の官僚が来た時、こちらの長老教授たちがやたらVIP扱いしていたのをはっきり覚えています。
斉藤:なにやってんですか(笑)。係長とか課長補佐とかは、入省して数年の若者です。大学では学生か、博士取り立てくらいの年齢ですかね。お歴々がそんなのに、へへーとなってしまうのがおかしいと思います。大学がバカ殿教育しているようなものです(笑)。ちゃんとした批判を堂々としてくれる人がいないと、役所の方もダメになると思います。大学、科学界が、予算を気にして文科省に言うべきことを言わなくなると、健全な議論が出来なくなり、省内が内輪の理論だけで回ってしまう。結果として社会には受け入れられず、他省との交渉に勝てない政策になってしまいます。

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グランドデザインの有無
ガチ:文科省に、しっかりしたグランドデザインというか、高等教育・研究支援のポリシーが無いのが問題、という意見もあるのですが。
生田:その点は自覚しています。文科省は、研究機関以外にも、幼稚園から小中学校・高校・大学と膨大な現業部門を抱える省であり、緊急対応を要する現場の問題の種を無数に抱えています。役人はそれぞれに対応するのに手いっぱいで、そのような大きなビジョンや構想のようなものを描くという時間的余裕がなく、本当の意味での政策官庁になりきれていないのが課題と感じています。
ガチ:しかし、教育も科学も国の未来への投資ですから。
生田:もちろん、そのような考えで活動している人間もいます。ですが、残念ながら少数であり、どうしても目先の問題が先になるので、省としての意志につながらないのです。こんなことではいけないと思っているのですが…。
ガチ:確かに、しっかりしたポリシーが無いと、折衝とかでは不利になりそうですね。
生田:例えば経済産業省などは現業の少ない省ですが、その場合、自らの存在意義について常に考えていますから、論理的と言うか、口がうまいと言うか、言い負けてしまう感じです。
ガチ:アカデミアと文科省がきちんとタッグを組まないとだめ?
斉藤:本当にそうしたいと思います。当然ながら役人だけでは政策は作れませんので、現場の問題を知っていて一緒に考えてくれる方が必要だと思います。そういうきっかけを見つけるのが難しいのだと思います。仲間だと思っていたら、同じ人が、別の省に行って文科省のプロジェクトを非難していたなんて話も聞いたことがありますし…。
ガチ:・・・。

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