【帰ってきた】ガチ議論
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アンケート結果への科学政策改革タスクフォース戦略室長・生田知子さんのコメント

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アンケートで上がった主な問題点について、文科省の生田さんにご意見を伺ってきました。
以下、一問一答式でのお答えです。(コメントは、文科省科学政策改革タスクフォース戦略室長生田氏の個人的なコメントであり、文科省の公式見解ではないことにご留意ください。)

 

近藤:研究費が少ない、大学の運営費が減っているのが元凶、と言う意見が多数ありますが、増やすことは可能でしょうか?
生田:若年層の人口(20歳前後の人口はピークの半分くらいしかない)の減少と国の厳しい財政状況を考えれば、単に増額するのは無理だと思います。文科省としては、精一杯予算を確保する努力をしておりますが、そのためには税金負担をしている国民やその意を受けてリソース配分を行っている財政当局に十分その必要性・効果を理解してもらうことが一番重要であるという現実をご理解ください。

近藤:どういった状況になれば増額は認められるでしょう?
生田:基礎科学の重要性に対する国民のコンセンサスを作る努力をすることが、研究者、役人、共に重要だと思います。

近藤:最近のノーベル賞受賞者が地方大学出身で有ることからも、サイエンスには裾野の研究が重要であり、そちらの方がコストパフォーマンスも良いと言う意見も有ります。
生田:「選択と集中」に対する反対意見ですね。先ほど申し上げたように、行き過ぎた集中に対する反対意見は、省の中でもあります。当然ながら知の源泉のタネを多く蒔いて裾野を広げ、未来の可能性を広げることは重要と考えています。結局はバランスの問題となりますが、どの程度のばらまきと集中のバランスが最適であるか、具体的な意見やデータがあればもっと議論も深まるのではないかと思います。

近藤:支援する分野が、応用研究に偏り過ぎである、という意見も多かったです。
生田:文科省としては、基礎の研究が重要であることは認識しており、必要以上に応用研究に集中しようという意図は有りません。まさに大変革時代における社会変革に挑戦し続けるためにも、日本発の「ゲームチェンジ」を興す新たな価値創造が求められているのではないでしょうか?第5期科学技術基本計画の検討過程においても、基礎の重要性を主張しているつもりです。しかし、出口が解りやすい研究の方がその成果を享受する具体的なイメージがしやすいことから、国民や財政当局からの理解が得やすいのも事実です。いずれにしても、応用と基礎のどちらかに寄せるという単純な問題ではなく、そのバランス論や基礎と応用の関係のうまい見せ方次第ではないかと思います。

近藤:競争的な環境が行き過ぎているため、研究者と言う職種自体が敬遠されているという意見も有ります。
生田:競争環境もその通りかもしれませんが、そもそもアカデミアの場における研究者としてのキャリアパスの具体的なイメージが出来ない、身近にモデル像がいないことが、研究者の職種が敬遠されている原因ではないでしょうか。

近藤:20年前に大学院の重点化を進めたことで、現在40歳前後のPDがたくさんおり、非常に厳しい就職難になっています。この年齢層に対する何らかのケアは可能でしょうか?
生田:難しいと思います。財政当局の視点からすると、その年齢層の研究者に対して、大学院重点化を通じて高額の投資をしたという解釈になっており、その人達をケアするための別途の予算措置は理解を得られないのではないでしょうか。本来であれば、産業界が、その人材を吸収するはずだったのですが、産業界と大学とのミスコミュニケーション、さらには90年代からの不況がそれを不可能にしたのではないでしょうか?

近藤:トップダウンのプロジェクトに関して、分野の選び方、研究者の選考が不透明であるという意見も多かったです。
生田:政府全体のリソースのうちR&D投資のパイを増やすためには、ある程度何らかの分野・領域を強調して常に新しい分野を切り拓いていくことが必要です。厳しい国際競争下で日本の目指す方向性を国として提示し、これを効果的・効率的に進めるためにも、トップダウンのプロジェクトは不可欠であると思います。その際、どのような分野に張っていくかは、官僚だけで決めているのではなく、広い見識を持つと思われる複数の研究者や企業人などの有識者へのヒアリングなどを通じて決めています。研究者の多くが、分野に偏りがあると感じるのであれば、その「有識者」の考えと研究者のマジョリティにずれがある、と言うことでしょう。確かに、少数の研究者だけにヒアリングして大型予算を決めることには危険があると思います。しかし、今のところ、それ以外に方法が無い状況をご理解ください。もし、学会などで、研究者社会のコンセンサスを取っていただき、それをベースにしたプロジェクトを持ってきていただけると、こちらとしても理想的ですが、学会でそう言ったことが可能でしょうか?
近藤:う~ん、今のところできそうもないですねぇ。

近藤:忙しすぎて考える時間が無い、と言うのも多くの研究者の感じていることです。運営費交付金が減っているので、文科省から何らかのプロジェクトが提示されると、それを獲得するために全力を尽くさざるを得ません。その過程で、現役研究者がどのくらい疲弊するかを考えたことが有るでしょうか?
生田:現場の研究者が研究活動に割ける時間が減っているという話は良く聞きます。本来的には研究者を支援する部局が有効に機能していれば、現場の研究者が疲弊することはないはずなのですが、特に日本の場合は研究を支援する者に対する理解が進んでおらず、キャリアパスとして構築されていないことも原因ではないかと感じています。

近藤:大型研究費を多数に分割する方が、全体として効率的である、という意見も多かったです。大型研究費の場合、大勢の研究者が集まっているわけですから、何らかの成果が上がるのは当然です。しかし、スポンサーの文科省としては、その資金を他の研究に回した時との差を評価するべき、という意見ですが如何でしょうか?
生田:そのあたり、具体的なデータ等があれば改善できると思います。様々な主張をしていくためには、昨今は特にエビデンスベースが求められており、是非そうした観点でアカデミア側からも情報提供いただけると我々としても政策形成につなげていけるのではないかと考えます。

どうでしょう?何かひとこと反論したくなるような回答ですよね。さあ、盛大にコメント欄に突っ込んでください。「これは鋭い!」というご意見を集めて、再び文科省に行ってまいります。

BMB2015ガチ議論企画スタッフ 近藤

 
 
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