【帰ってきた】ガチ議論
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20140308

アンテナの高い奴ら、横につながって一緒に未来を変えよう!-サイエンストークス・インタビュー WITH 斉藤卓也(文科省大臣官房政策課 評価室長)

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文科省の「考えてる人」中堅代表、斉藤卓也氏のサイエンストークス・インタビュー!文科省の「なかのひと」が今、何を変えたいと思っているのか?そして東京オリンピック・パラリンピックに向けて文科省が発表した「文科省 夢ビジョン2020」の本当の意図とは?サイエンストークスとガチ議論ではすでにおなじみとなった斉藤氏の本音トーク、元気がわいて「自分も何かしなきゃ」と感じること間違いなしです。おたのしみください!

斉藤卓也氏 プロフィール
文部科学省 大臣官房 政策課 評価室長。科学技術改革タスクフォース戦略室長、科学技術・学術政策局 政策科学推進室次長を兼任。科学技術政策を専門に活躍。研究現場の声を政策に反映するためのさまざまな活動やネットワーク作りのために幅広く活動。

(1)科学技術改革タスクフォース戦略室とは?

【湯浅*】 斉藤さんは文部科学省 大臣官房 政策課、評価室長を勤められていますが、一方で「科学技術改革タスクフォース戦略室長」という肩書きもお持ちですよね。この戦略室はどういった活動をする組織なんですか? [*聞き手:湯浅誠, カクタス・コミュニケーションズ代表取締役, サイエンス・トークス代表]

【斉藤】 科学技術改革タスクフォース戦略室は、中堅がボトムアップで作った組織です。なので、そんなに(文部科学)省内でもものすごく知名度があって、権限を振るって…という感じの組織ではありません。文科省のある特定の事業を動かすための組織ではなくて、全体の戦略を見れる組織にしようと思っています。たとえば(文科省や科学技術政策を)全体としてこんな風に変えたいんですという意見を集めたときに、「文科省の中の誰に相談していいか分かりません」なんていう話を人からよく聞くんですよね。タスクフォース戦略室は、そういう時の窓口になれたらいいんじゃないかなあと。理想はそうですね(笑)。

【湯浅】 なるほど、そうですよね(笑)。いや、みなさんやっぱり、文科省は人が多すぎて問題があっても誰に言っていいのかわからないというのはよくありますから。こんな問題あるんだけどどうしよう?っていうときに最初の受け皿になるような方がいらっしゃると本当に判りやすいと思いますので。

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(2)日本の研究に、「うねり」が必要な理由

【湯浅】 今、日本の研究力が世界のほかの国々と比べて停滞しているという話があります。先ごろ文科省が出した、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた「文科省 夢ビジョン2020」を拝見しました。あの中でも、「オリンピック・パラリンピック大会の成功と、それに付随する経済効果への期待にとどまらず、日本の将来に向けた変化の“大きなうねり”とすることが必要」という目的が掲げられています。

斉藤さんも夢ビジョンの政策にかかわられていますが、日本の研究に絞って言えば、文科省の立場から見て日本の研究に今「うねり」が必要な理由ってなんなんでしょうか?

【斉藤】 一昔前に比べると、日本の基礎科学の力って上がってきているんじゃないかと思うんですよ。ただ、最近の状況を見ると、論文の数については諸外国がどんどん伸びてきていることもあって日本の地位が相対的に下がっているという事実が明らかに出ています。

中堅でばりばり現場最前線で働いている日本の研究者に「研究者って魅力的な職業だと思いますか?」って聞くと、なんと90パーセント以上の研究者が「魅力的じゃないです!」と答えているんです。こんな現状を聞くと、このままいったら日本の研究は一体どうなっちゃうんだろう?っていう危機感がありますよね。それが最大の理由ですね。

解説しよう!「文科省 夢ビジョン2020」とは?

平成25年9月に下村文部科学大臣が東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に任命された際、下村大臣より「2020年を単に五輪開催の年とするのではなく、新たな成長に向かうターゲットイヤーとして位置づけ、東京だけでなく日本社会を元気にするための取組を『夢ビジョン』として打ち出し、社会総掛かりで実現していく」ことが表明されました。これを受けた文部科学省が他府省庁に先駆けて、省内の中堅・若手職員を中心として省内アイディア公募のほか、若手のアスリートやアーティスト、研究者らとの対話を実施しながらまとめたのが、2020年の日本の姿を描いた「夢ビジョン2020(文部科学省版)」。文科省職員の夢や想いが詰まった未来のビジョン。「いや、もっとこうしたほうがいい!」というみなさんからのアイディアも募集中だそうです。

「文科省 夢ビジョン2020」の詳細はこちら

(3)文科省から変えて、好循環を作る

【湯浅】 「夢ビジョン2020」には、「夢ビジョン実現のための省内改革」という提案も含まれています。外部の人間から見ると、「省内改革」が必要とされているポイント、今の文科省の内部で変えるべきだと認識されている問題ってどんなものがあるんだろう?と非常に興味があるんですが。

【斉藤】 「夢に向けて省内改革」って、夢がないよな~って話に聞こえるかも知れないですね(笑)。確かにそういう見方もあるとは思うんですけれども、「夢ビジョン2020」のような新しいことをやっていこうと思ったときに、どうやったらできるだろう?というのを考えると、今の科学技術関係の政策立案のシステムとか、大学や研究機関で研究を行っているシステムというのは、どうもいろいろなところに問題があって、隘路があって、あんまりいい循環になってないんじゃないかという問題意識があるんですよ。

まずは文科省の中の仕組みとか、文科省自身の政策決定の仕組みっていうのを変えていかないと、ダメなんじゃないかと思っているんです。そのために現場の研究者のみなさんの生の声もお聞きします。また、実際に現場で生み出した研究成果をしっかり分析して、それをエビデンスとして示していき、それを元に政策を考えて、政策オプションを提示していくようなやり方が考えられます。そのように、政策立案過程をどう改革していくか?を考えるプロジェクトをすでに文科省内でやり始めていまして。「夢に向けて省内改革」は、それの延長線上の考え方でもあるんです。

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(4)「文科省 夢ビジョン2020」にかける想い

【湯浅】 「夢ビジョン2020」は、名前も中身も明るく希望に満ちたヴィジョンに仕上がっていると思いますが、文科省がこういったソフトで明るい夢のある方向性を出してきたことが、当たり前のような、意外なような…。どんな経緯で、今回こういう形のヴィジョンにまとまったんでしょうか?

【斉藤】 下村文部科学大臣が東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に任命された際に、単なるオリンピックをスポーツイベントとして成功させるだけではなくて、これをきっかけに社会が変わるとかうねりを作るのが大事だと、その意味で「夢ビジョン2020が必要だ」、ということをおっしゃっていて。

高齢化社会とか国際社会の中競争が激しくなってるとか、日本国内でもなんだか暗い雰囲気が漂っている中で、オリンピックを契機に明るい話をするいいチャンスですよね!と。普段「夢ビジョン」なんていうと、そんなふわふわした話をして、といわれちゃうところがありますよね。普段仕事をしていると、役所ですらそうだということかもしれないですけれども、非常に近視眼的に、「来年の予算要求何出しましょうか?」とか、そういうところから議論が始まってそれに終始しちゃうみたいな面があるんですけれど、今ならなんか(夢を語ることが)正当化されるというか、チャンスというところがあるんじゃないかと思っていて。

(5)夢ビジョンを作った、本当のねらい

【湯浅】 かなり具体的なテーマや目標を掲げていますが、いろいろあるアイディアのなかから、これらのテーマを選んだ理由というのは。

【斉藤】 「夢ビジョン2020」に関しては、具体的な中身がどうこうというよりも、もっとこういう夢を語って、みんなでこういうふうに変えていきたいんだ!ということをもっと考えていきましょうよ!という社会の動き、ムーブメントを起こしましょうというのがこの資料の趣旨なんです。逆に文科省はこんなこと書いているけれど、もっとこんな夢もあるだろう、こんなアイディアもあるだろう、といろいろ言っていただきたいし、一緒に議論もしたいし。まさに議論のきっかけになる材料を提示できれば、という意図が強いです。

(6)Science Talksに期待すること

【湯浅】 斉藤さんのお話を普段から伺っていると、改革を起こすためには問題意識を持った人たちの横のつながりを作ることがまず必要で、さらに、そのみんなで徹底的に解決策を議論していく場が必要だと感じられているんですよね。そのための人材発掘やネットワーク作りに力を入れられています。

今回、サイエンストークスもまさにそういう場を作って、普段は科学技術や学術関係の政策に疎い方やまだ若手の研究者の方など、いろんな人の生の声を吸い上げて意見をまとめていきたいと思っているんですけれど、そういったムーブメントに対する斉藤さん個人としてのご意見をぜひ伺いたいです。

【斉藤】 科学技術にまつわる問題意識の調査を以前したことがあります。その結果を分析すると、全体のうちの3分の1は、憲法が、とか、財務省、総務省が、とか、要するに国のもっと上のほうのシステムを変えないとどうしようもないものが3分の1ぐらいあるんです。次の3分の1は文科省が予算を取るとか、文科省自身が持っている法律とかで変えることができるもの。残りの3分の1は大学とか研究現場でやれば何とかなるものだったんですね。

現場ではこんな問題があって、政策的にはこんな問題がある。それは分かったんだけれど、じゃあそれを解決するためには一体何をどうやって変えなきゃいけないの?という次のアクションにつながるところまでをちゃんと議論できるような仕組みというか、取り組みというものがないと何も変わらないのかなという気がしているんです。

そういう意味だと、サイエンストークスなり、ガチ議論なり、まさにそのさきがけとしてはじまったみたいなものなんだと思うので、引き続きこういう枠組みができて一緒にいろいろやっていければ、変わるんじゃないかなという期待は持っているんですけれどね。

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(7)「変える」仕組みづくり

【湯浅】 変えるためには人の力と知恵が必要で、たくさんの人を巻き込まなければ動かないわけですが、ステークホルダーから意見やインプットを集めたり、活動への協力者やサポーターを増やすことは簡単じゃありません。

【斉藤】 組織は15%の人が変われば動き出す、みたいなところもあるので。タスクフォース室も、そういう意識を持っていて、現状にいろいろ問題があるから何かしなきゃいけないよねと思っている人たちが、じゃあどうしようか?一緒に考えましょうよ!ということになったときに窓口になれるような組織を一応目指しています。

【湯浅】 今はまさに、サイエンストークスでも政府に提案をしてく意見やアイディアのまとめ役をしてくれる方を積極的に募集をしようと思っているんです。ただ、それをこちらから誰か決まった人にお願いするというよりも、「そのアイディアいいよね。その問題を自分でもちょっと解決したいと思っていたから、僕がそれまとめるよ」と思っていただける方が自然と出てこないかなと思っているところなんですね。

(8)これさえ変えれば!まで落とし込め

【湯浅】 サイエンストークスで今回開催している「勝手に第5期科学技術計画みんなで作っちゃいました!」というムーブメントでは、研究者のみなさんなど、クラウドから集めた意見を総合科学技術会議さんや文科省さんに意見を頂きながらまとめて、最終的に提案まで持ち込もうと計画しているんですが、文科省の中の人の立場からみて、この企画、うまくいくコツはあると思いますか?また、「こういう提案なら使えるから、喜んで聞くよ」という要望はありますか?

【斉藤】 こういうムーブメントって多分、まあちょっと大きい話なんで動くか分からないけれど、もし成功すればもっとよくなるかもしれない、っていう種類の活動に、人々がどれだけの労力をかけるのか?っていう話で、そこが課題なんですよ。

たとえばいい企画には自分で喜んで手を上げて参加して、忙しい中でも休暇をとって行くとか。あるいは、たとえば何か意見募集があれば、いろいろあって疲れて帰ってきたんだけれど、でもこれだけは言っておかなきゃ!といって書き込みをするとか。そういう自発的に動いている人のアクティヴィティをいかに高めるかっていうことですよね。

提案に関しては、わーっと意見やアイディアを集めて、ただそれをくっつけて整理するだけでは、それこそよく言われる「電話帳」みたいなものになってしまって。何でもかんでも全員分の意見が載ってますみたいになっちゃうと、電話帳があってもなかなかその中の誰に電話かけていいかわかりませんよ、という話になっちゃう。

だとすれば、全員分のデータの載った電話帳を作りましたけれど、自分たちなりに議論して精査した結果、この3人に電話かけるのがいいですよ、というメモを作って電話帳と一緒に出してもらえれば、受け取った人は多分「3人にかけるぐらいのことはやろうか」となりますよ。

「この3つだけ変えればとりあえず少なくとも今よりは劇的によくなります」という意見を具体的に提案するというか、その部分にもちゃんと時間をかけないと。それをなくして電話帳作りだけで終わっちゃうとたぶん何も変わらない。

【湯浅】 これから一年弱、ぜひご協力をいただければと思いますので。よろしくお願いいたします。

【斉藤】 はい、よろしくお願いします。

斉藤さん、ありがとうございました!みなさんぜひ感じたことをコメントでお寄せください。

サイエンストークスの記事を許可を得て転載;サイトフォーマットに合わせるため画像等を一部改変)

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