【帰ってきた】ガチ議論
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130523

文科省お役人との会合・議事録

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    5月7日(火)〜8日(水)、東京お台場にて「ガチ議論」のプレ企画として「文科省科学技術改革タスクフォース戦略室メンバーとの会合」が開催されました。会合には文科省から2名お越しいただいたほか、国内外の現役研究者(海外からはSkypeのビデオ会議で参加)、科学ジャーナリスト、科学コミュニケーターなど総勢16名が参加しました。

    今回の会合においては、「文科省お役人への質問大募集」に寄せられた質問(「文科省お役人への質問のまとめ I, II, III」参照)をベースに、

    A) 大学院・教育・大学院生の待遇について
    B) (若手)研究者の育成について
    C) 任期制と定年制の問題や大学のスタッフの問題について
    D) 大学のありかたや運営の問題について
    E) 政策の意思決定の仕組みについて
    F) 研究への寄付・アウトリーチについて
    G) 研究の公正や不正について
    H) 文科省の人事制度について

    などのテーマについて様々な疑問をタスクフォース戦略室の方にぶつけて、議論を行いました。会合の日程は2日間でしたが、白熱した議論は会議室の中だけでなく外(レストランや、風呂、宿のロビー)でも行われ、トータル17時間にもおよびました。
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    記事「文科省お役人からの回答」において、文科省の方よりいただいたご回答やご意見について、質問ごとにまとめて紹介しています。また日本の科学を考える/ScienceInJapanのTwitterにも抜粋をのせてあります。まとめてしまうと、2日間みっちり話してこれだけか?と少々寂しい感じがしなくもありませんが、期間をおいてじっくりまとめただけにむしろ贅肉がそげ落ちて、重要な点が浮かび上がってきているような気がします。
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    一つは、お役所の方々も、現場の研究者のニーズから立ち上がってきた「プラン」を強く欲しているということです。研究者サイドでコンセンサスがとられたプランが上がってくれば、そういうものの実現の可能性は高いはずです。現状、お役所と話をしているのはごく一部の「偉い先生方」に限られています。ただしそういう方々は「偉い先生」だけに非常に忙しく、全てを見渡して適切な判断を常にしてくれるはずだ、と期待するのはさすがにムリというものです。現場の声を吸い上げたくてもが上がってこないから、仕方がないので役所側は必死になって、可能な限りの声を吸い上げて、政策を出す。それをみた研究者は現場が分かっていないと文句を言う。この悪循環はどこかで断ち切らなくてはなりません。一体どうするのがよいのでしょうか? 例えば分子生物学会ぐらい大きな学会になれば、我田引水でなく科学全体のことを考えた発言であれば、役所の側もきちんと聞いてくれるのではないでしょうか。
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    もう一つは、役所の問題だと思っていたことが実は自分たちの問題であるということが多い、ということです。定年制は人員枠があるから任期制でしか採用できない、というのはさんざん聞かされていますが、退職金をつけない年俸制で終身雇用のポジションを作るのは全く問題がない、というのは目から鱗です。じゃあなんでやらないんですか!!と、叫びたい。総長室に乗り込んで偉いヒトを一時間ぐらい問い詰めたい。いらない雑用は減らす。会議も減らす。必要でない委員会も減らす。やろうと思えば出来るのに、雑用削減検討委員会を立ち上げました、なんてオチになってしまったら、話し合いだけしていて何も決めないのが趣味なんでしょ、と。大学の外の人から見たらそう見えてしまうはずです。お役所に言われないとやらない、というのは、余りにも情けなさ過ぎます。ではどうすればよいのでしょう? 難しい問題ですが、たとえば誰が考えてもおかしいというようなご当地ルールをこういう公開の議論の場に上げていって、みんなでコメントをつけて、それを元に改善をお願いする、というようなことからはじめていく、というのもあるかもしれません。
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    今回の記事では、会合の議事録をご紹介します。寄せられたほとんどの質問項目について議論をしましたが、時間の関係で議論できなかった内容もありました。それらは「I) 時間の関係で十分に議論できなかったテーマ」にまとめてあります。
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    忌憚なく議論が行われたため、発言には所属組織の見解だけでなく、個人的な意見や、第三者からの情報なども多く含まれました。そのため、発言に個人情報を付けて公開した場合、組織レベルの見解について誤解を招く可能性があると考えられますので、今回は発言者の名前を伏せてコメントを公開することとしました。ご理解いただけますようお願いいたします。また、公開に差し障りのありそうな発言については非公開とさせていただきました。
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    ガチ議論スタッフ一同

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    A) 大学院・教育・大学院生の待遇について
    .質問I-1日本の院生の待遇の悪さA
    .質問I-2日本の院生の待遇の悪さB
    .質問I-3日本の院生の待遇の悪さC
    .質問I-5 学振研究員の待遇の悪さについて
    .質問I-6 博士倍増計画はまずいのでは?

    .をベースにした議論

    1. 院生の待遇が世界的に見ても悪く、高等教育投資のGDP比は先進国(OECD加盟国)の中でも半分ぐらいしかない。

    2. 院生は学費を払って教育を受ける立場なのか、研究者なのか。どちらと見るかで、文科省としての対応が異なってくるだろう。議論をする場合はそこを明確に。

    3. お金の分配の仕方を変えてなんとかしないと優秀な人が来なくなる。

    4. 人数を絞るという考え方があっても良い。院生と教育の質の向上 -> 社会からのニーズの増加 -> 院生と教育の質の向上 -> 社会からのニーズの増加、という良いサイクルが人数を絞ることにより回るのでは。

    5. 博士前期課程(修士過程)は教育を受けるという面があるかもしれないが、博士後期課程(博士課程)は研究の屋台骨を支える存在であろう。

    6. 大学院生の適正な人数はどれくらいか。出口であるアカデミックポジションの数、企業が採用しようとしている博士の数、一人の教員が十分に指導を行うことのできる数、そういったもので決まるはず。これらが吟味されずに定員が決まってしまっている。

    7. 大学教授が無料の労働力として見ていることがそもそも大きな問題。これではブラック企業。

    8. 院生のする実験は単純作業に近いのにそれを教えるのが教育という感覚が残ってしまっている。

    9. 定員割れを放置しておくのはダメというのは神話か?定員を埋めようとすると質が保たれない。

    10. 言われた事を黙々とやる人間をPIは大好き。日本の大学はそういう人間を輩出してしまうシステムになっているのではないか。

    11. こういう能力を持った人を輩出したいというビジョンが教育をする側に無いので人が集まらないのではないか。ビジョンのある人につかないと優秀な人は育たないのでは。

    12. アメリカでは考えさせるためのトレーニングが徹底している。研究計画を自分で考えるようなトレーニングは日本では一般的でない。また、大学院生自体、大学院で何を学び、将来どうしようかというキャリアパスに関する意識が薄いのではないか。超少数精鋭の国もある。

    13. 日本においては大学(院)で学ぶ権利を国が保障するという発想が根本としてある。「学ぶ意欲を持っている人には学ぶ機会を用意しなくてはならない」という考え方と、(人数を絞る)研究の場としての大学院をどう捉えるか議論が必要であるのではないか。

    14. 博士が多すぎるというが、社会的に上の立場にある人に博士が少ないという話もある。博士の数が多すぎるというのならば、大学として考える適切な規模を提示、議論する必要があるのではないだろうか。

    15. 現状では定員を減らしてゆく具体的なプランは特に出ておらず、今後の課題のようだ。議論の方向性によってはあり得るのかもしれない。

    16. 大学院生の待遇という観点から言えば現在でも一部の研究費では支給することは可能。教員がそれだけのお金を持っているかどうかの問題ということになる。

    17. お金を持っている大きな研究室には人は集まるが、そういうところの教授は得てして単に実験をこなすだけの兵隊として大学院生を使いがちである。

    18. 将来のPIを育てたいのか、自分の手下を育てたいのか。業種にもよるが生命科学では単なる手下を育てようとしている人が多いように思われる。

    19. 社会における博士のニーズを高めるには、大学院を出た人はあるレベルをクリアしている、ということが保証されなければならない。

    20. 現実問題、最近は、大学院を修了した人材に関しては本来要求されるレベルの能力について、クオリファイされていない人が多い(簡単に学位を出しすぎてしまっている)。

    21. 学部の頃から大学院がどういったものであるかについての情報を十分に与える必要がある。

    22. 博士が増えて産業界の反応も悪かった。

    23. 一方で、ポスドク1万人計画は研究の質の全体的な向上には明らかにプラスであった。Natureをはじめとしたトップジャーナルの掲載数は増えた。そういう事実はしっかりと認識した上で大学院の定員の問題やポスドク問題を考えるべき。

    24. 博士倍増計画は自民党教育再生本部からの提言ではないか。海外諸国では近年も博士取得者数が増加する傾向があり、これらの国と比べて日本の博士号取得者数は劣っているという状況がある。今後産業競争力会議等で議論されていく見通し。
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    B)(若手)研究者の育成について
    .質問I-4 若手研究者の雇用不安定/ワーキングプア問題
    .質問I-5 学振研究員の待遇の悪さについて

    .質問III-12 日本版K99グラント
    .をベースにした議論

    1. ワーキングプア問題を社会全体の問題として捉えるのであればそれはアカデミアだけでなく国全体の問題になってしまうかもしれない。

    2. 本人達の責任もあるだろう。甘い見通しで研究者をめざす人が多すぎる。

    3. 大学への支援の基本的な考え方は、教育機関としての部分は運営費交付金。研究の部分は競争的な資金。研究者の雇用は後者の部分の問題になる。

    4. ポスドクの就職難は深刻。就職したとしても若手は待遇が悪い。

    5. 博士一人を作るのに約1億円の税金が使われているという話(生化学若い研究者の会HP記事)がある一方、学部卒で企業に入って研究している人は税金を納めている。

    6. 博士を取るような人は元々が自分でいろいろできる能力の高い人たち。そのような方々をさらに支援することについて国民から理解を得るためには、様々な観点から十分な検討する必要があるのでは。

    7. ポスドク1万人という数は需要と供給のバランスを精査してはじき出されたものではないというのは常識。国際水準に比べて少ないですね、というところから出た話。

    8. 法人化で大学の自由度が増えたにもかかわらず若手のポジションを増やさないのは大学側の裁量によるものなのではないか。

    9. 現状、博士をとったという付加価値は低い。やはり付加価値を増加するべく大学院生の数を絞るべきではないか。

    10. 大学側、官僚側、双方が若手研究者の育成について、本来あるべき理想的な姿を議論することが重要であろう。

    11. 大学側で変えられる余地は大変大きい。しかし、場合によっては適切な外圧のようなものがあればベターかもしれない。

    12. お金の出し方や制度は変えることができるので、そのためにも研究者と役所で一緒に考えることが重要。

    13. きちんと議論を重ねていかないと、政治的、社会的な勢いで、十分に議論されていない必ずしも合理的とは言えない制度が突然できてしまう可能性もある。

    14. 大学が自ら改革を進めるようになるための外圧のようなもの、その適切なレベルを研究者側、官僚側、双方で考えていく必要があるかもしれない。

    15. 文科省からのお金の分配の仕方でも変えられるかもしれない。たとえば、改革の努力をしたところにお金を手当てする、など。

    16. 若手のポジション不足の問題は、大学側のマネージメントの問題も大きい。学長の裁量でできないものか。

    17. 実際は学長には権限が無く、学部が権限を持っているという側面が多い。学部の教授達が学長を選挙で決めるために、それらの人々の顔色をうかがうことになる。

    18. 新しいテニュアトラックの仕組みを作ることができないか。たとえばアメリカのK99グラント(研究者の独立支援のためのグラント)のようなシステムはどうか。

    19. K99グラントは、アメリカでも本道のシステムではない(全米で年間150〜200人ほどしか選ばれない)。日本国内でそのようなトラックが求められているかどうかは調べてみないとわからない。

    20. 海外に出る日本人は減っているのだろうか。海外で独立する人は確実に増えている。

    21. 海外に行っても、戻ってくるのが大変。日本のポジションにアプライすることはできるが、面接のための費用を自腹で払うなどコスト的に厳しい。

    22. 呼び戻すためのサポートはどうすればよいのか。

    23. 海外の人を積極的にとりたいという積極的なモティベーションが大学側にない、と言われても仕方がないのではないか。アンケートの結果(第3-3図; PDF)を見ても、優秀な研究者を採用するために積極的なことはしていない、と答えた大学の部局が半分以上である、という結果が出ている。

    24. 大学が競争的な環境を用意していないので、優秀な人が集まらない、そういった問題がある。

    25. 成果をあげることができず努力もしない大学部局が没落するような仕組みは必要であろう。運営費交付金が削られているのだから、いずれ没落するところは没落していく。

    26. 運営費交付金の毎年の1%削減は今後も続くのかはわからないが、急に右肩上がりにはならないのではないか。

    27. アメリカの大学では学部一丸で改革のためのプロポーザルを出している。学部ごとなくなる場合もあるから真剣に取り組んでいる。

    28. この部分だけ取り上げても難しい。20年後の理想的なあり方、ビジョンを考えるという方向性で考えなければならないのでは。

    29. 学振PDは雇用関係と規定されず、社会保障費が負担されないにもかかわらず、他からお金をもらってはいけないとしているのは法令違反ぎりぎり。ほとんど脱法行為。訴えれば勝てるかも?

    30. (上記29について)JSPSの担当者に直接問い合わせたところ「専念していただきたいため」と、募集要項に記載してあるのと同じ回答。
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    C) 任期制と定年制の問題や大学のスタッフの問題について
    .質問I-7 任期制は奴隷制?
    .をベースにした議論

    1. この問題、どこの問題かといえば、各機関・部署の裁量で決まることであって、役所の問題ではないのでは。

    2. バランスの問題。任期制だけでやると長期間に渡る仕事をやる人がいなくなってしまう。

    3. 仕事をしなくなった定年制の人間はやめさせられないのか?

    4. やめさせることはできなくはないが、そのための労力が半端でないので、大学は嫌がる。

    5. 私学ではかなり厳しくクビにしている。それでも過失などがないと難しい。

    6. 組織は作ったときはパフォーマンスが良いが、そのうち劣化してゆくもの。したがって、任期制で回してゆくというのは一つの優れた解決策。

    7. 定年制の職員の適正に合った配置転換ができるような仕組みを導入できれば良いが。

    8. アメリカでは間接経費が潤沢であり、大学の自由裁量でできることの幅が広い。

    9. アメリカでは学生の数、部屋の広さ、そういったものが研究のアクティビティーに応じて変動する仕組みがある。

    10. 任期制の良い側面を考え、若手研究者は任期制を受け入れる覚悟を持たなければならない。

    11. 研究教授は任期付、教育教授は定年制、そういう区別は合って良い。

    12. 20年間連続で素材の引張試験を行い有用なデータを提供している旧国研がある。こういったところは任期制とはなじまない。内容により任期と任期なしのバランスをとることが大事。

    13. 今、働かない人たちを全員クビにするというのは難しい。20年後のビジョンが大事で、それに向けて徐々に移行。

    14. ビジョンは文科省だけが作るものではない。大学の人間、一般の社会、役所が一緒になって考えていかなければならない。

    15. 大型の補正予算や、今回の成長戦略など、何か新しい制度を作るチャンスはある。しかしながらそれは多くの場合突然やってくることが多いので、日頃からの準備や十分に議論を重ねておくことが重要。何も議論していないということは望ましくはない。そのためにも、日頃から研究者の側と役所側のコミュニケーションが重要となるはず。

    16. 組織を作るときには内部にちゃんと壊す仕組みを(たとえば任期制とか)作ることが重要。時代によって集中投資すべき分野は変わる。そのような変化にも対応できる。

    17. 任期付と任期なし、という二分法でない方法もありうる。給与体系を根本的に変更することはできないだろうか。例えば、原則、任期なしの定年制で、最低限の基本的給与(たとえば博士号所得者の場合、月20万円ぐらい)は運営費交付金やJSPS・JSTなどの独法からの予算で保証する。そこに研究や教育の活動に応じたアドオン(間接経費や授業コマ数などから)をつける。そのようなやり方をすれば定年まで職にしがみつくことだけを最優先するような人はいなくなる。

    18. しっかりとした業績のある人であっても終身雇用のポジションにつけないという今の現実は受け入れがたい。

    19. 定年制と任期制の中間的なポジションはあっても良いし、導入することも可能な仕組みになっている。現在の定年制の定員枠は退職金がつく職の数がベースとなっている。年棒制にして終身雇用、というシステムは大学の裁量で導入できる。

    20. 年棒制の任期なしポストについて、一部大学では導入を検討しているようだ。

    21. 大学の裁量で終身ポジションを作ることができるのに作らないのは数年で任期付を解雇できる方が簡単だから、と言われても仕方がない。
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    D) 大学のありかた、運営の問題について
    .質問I-9 適正にあった配置転換の仕組みの導入
    .質問III-2 研究リソースの効率化
    .質問III-3 研究者の雑用問題
    .質問III-4 古い縦割りの分野をどうするか
    .質問III-13 国土強靭化法としての新しい国立大学の設立

    .をベースにした議論

    1. 日本では大学間の競争が少なすぎる。

    2. 日本では研究費はプロジェクト期間中、基本的に固定されており、期間途中の大幅増額はまずあり得ない。アメリカでは、研究中に大きな発見があった場合、NIHなどではボードメンバーが評価して認められれば、プロジェクトの途中であっても研究費を大幅に増額するサポートシステムがある。

    3. 日本では間接経費をプールして運用するということがうまくいっていない。間接経費を大きくすると動きやすいのではないか。アメリカでは、間接経費の割合は50〜100%で、これがうまく機能し大学のやる気を引き出している。本来、間接経費は大学が研究を推進するためのモティベーションとなるはずであるが、日本ではそれがうまくいっていない。

    4. 間接経費を年度を越えて留保できないというのも大きな問題。間接経費を年度をまたいで使用することができないのを改善できないか。間接経費は留保できないので大学側が使おうと思ってもなかなかできない。

    5. そもそも、税金という観点からすれば余っているのならば戻すのが自然。

    6. 間接経費はむしろ研究を行うことに対する、国からの大学への報酬・対価に近いものとして考えたほうがよい。そうなれば、「余っているのならば戻すのが自然」という考え方ではなくなるはず。

    7. 間接経費の現在の30%というレベルは文科省の側からは色を付けないお金として、財務省と交渉し、ようやく実現したもの。大学には内部留保できるお金はそれなりにあるはず。たとえば、予算をその辺りでやりとりして、対応できるのではないか。

    8. 大学の運営側でできることはたくさんあるはず。実際にやっているところもある。阪大ではスタートアップの資金は間接経費を玉突きして内部留保のお金で用意している。

    9. アメリカでは秘書代をはじめとして研究サポートのために間接経費が使われている。日本では何のために使われているのかいまひとつ良くわからない。

    10. 運営費交付金を全て無くしてすべて私立大学にしてしまえば良い。

    11. 運営費交付金を増やせという話と、間接経費を増やせというのは、両立する話ではない。

    12. 違う立場にある人がそれぞれの意見を言っている。

    13. 教育にはお金がかかるが、教育の機会は平等に作らなくてはいけないという考えがある。国立大学に国が資金を投ずる理由としてはそれが大きい。

    14. アメリカの学費は異常に高い。それに比べると日本の学費は異常に安い。

    15. 「教育の機会を平等に」ということであれば、国立大学に交付金を出すかわりに、学生に奨学金を出せばよいのではないか。現状では、大学間の競争がフェアとはいえない。また、私立大学の学生に不公平感を持つ人もいる。例えば、大学入試センター試験の点数を奨学金授与(または貸与)の基準にすればよいのではないか。

    16. 日本では人は、今いくら貯蓄をもっているかが重要であり、借金は学資ローンであっても否定的な文脈で語られる。しかし、アメリカでは借金とは「人からどれだけ投資を受けられるか」と肯定的に取らえられる。日本とは同様な議論はできない。

    17. 東大の学生の半分が親の年収が1000万円超、とかいう話が出てくるが、教育の平等という点でネガティブに使われることが多い。

    18. 日本の大学では雑用が多すぎるがなんとかならないか。

    19. 全共闘時代に大学教員が権利をとりすぎた。事務方が行うべきアドミニストレーションも教員が行なっている。事務方に移すべき事項は移すべきでないか。

    20. 某有名大では伝統的に大学教員(助教)が電気メーターの使用量をチェックする。こうした雑用はいかがなものか。

    21. 雑用が多すぎるということではやる気のある若い人がつぶれてしまう。意味の無い仕事を仕事と思っているという側面もあるのではないか。

    22. テレビ会議システムや、各種調整もネットベースで行うということは可能であろう。文科省やJSPS、JST関係の書類についてIT技術(例えばe-Radや ReaD&Researchmapなど)を活用し研究者の負担が減るようになることが望ましい。

    23. 人件費=コストという意識が十分とは言えない、という側面があるのではないか。大学教員の人件費のうち、雑用で使用された部分をコストとして捉えるような感覚があるとよいのではないか。

    24. アルバイトがやれば良いような仕事は、アルバイトにまかせるのが良い。

    25. いっそのこと新しい理想の大学を作るという発想があっても良いのではないか。

    26. 予算も限られている中、新しいものを作るよりは今あるものを変えてください、というほうが自然である。いまの大学では改革はできないのか。

    27. いったん解散、ガラガラポンして、何校かあつまって再編成というのはどうか。

    28. 統合しないと生き残れないという意識は徐々に芽生えつつある。

    29. 今の延長で統合だけする、というのでは意味がない。ビジョンが必要。

    30. 少子化で大学を減らせ、という圧力があるところで、新しい大学をつくる、ということについて国民から理解を得ることは容易ではない。財務省からも圧力がある。海外に比べると大学の数は多い。国立大学を減らせという声はあるが、国立大は日本の全大学の約10%に過ぎない。残りはそのままで良いのかという議論もある。

    31. ゼロベースで理想の大学を新たに設置しようというのは、今のままでは改革できないということの裏返し。

    32. 役所の問題と思っていたことが実は自分たちの問題であるということが多いのではないか

    33. 本当は大学のあり方は研究者コミュニティ、各機関、社会の要求などによって総合的に決まっているのに、全てが文科省のせいにされてしまっている側面がある。

    34. 「25年度に大学機能の再定義を行う」ということが文部科学大臣発表の資料(PDF)の中で言われている。その中には極端な区別(教育大学では研究できない、研究大学では教育しない)を行うという案は入っていない。

    35. 大学側がみずから「本学は研究大学」などとレッテルを貼るというのは難しいかもしれない。
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    E) 政策の意思決定の仕組みについて
    .質問II-5 科学技術政策の意思決定の問題A
    .質問II-6 科学技術政策の意思決定の問題B
    .質問II-7 文科省の役割

    .をベースにした議論

    1. 科学技術について意思決定がどのようにして行われているのかはっきりしてほしい。

    2. 政策の元になるようなものは研究者も含めていろいろな人が提案を行なっている。現状はいろいろな人の意向を聞いた役人が取りまとめて政策を作っている。

    3. 文科省が提案し、政府予算は最終的に財務省・国会が決める。決定を行う人が当該のものに詳しくないという面はあるかもしれない。専門家である研究者コミュニティの側でしっかりと優先順位をつけることが生命科学の分野では重要だ。

    4. 物理や天文では優先順位が決められている。これらはヒトが小さく、モノが大きい分野で、スケジュールもはっきりしているため、順位を決めやすい。生命科学では研究の先が読みにくいので、決めて良いかどうか難しい、という面がある。

    5. 大型プロジェクトのアウトプットというのも、事後にきちんと精査することが重要なのではないか。現在は精査が十分に行われていないのでは。

    6. プロジェクトの帰結がはっきりしているダム工事のようなものと、全く新しい知見やものを生み出す研究を一緒にすることはできない。

    7. 政策の効果、効率を評価、分析して今後に役に立てるという「政策の科学」という取組を始めている。

    8. プロジェクトの成果をレビューしたとしてもフィードバックして次に活かさないと意味が無い。

    9. 研究という不確実性を孕んだものにどのように投資するかは判断が難しい。意思決定のプロセスをオープン化することは必要かもしれない。

    10. 対応が常に後手後手になるのはいかがなものか。次世代シークエンサー関連の人材育成についてはアメリカと比べると5年以上遅れている。

    11. 例えば5年前に次世代シークエンサーの人材が必要であるという提案を出すべきだったのは文科省の人間だったのか、というとそれは違うような気がする。現場に近い研究者からそのような提案は上がってこなかったのでは。

    12. だからこそ研究現場の意見を上に反映させるための仕組みは重要。

    13. 研究サイド、役所サイド、お互いのせいにし過ぎという側面がある。だから遅れてしまう。

    14. 現在文科省に出入りしているいわゆる大御所の提言に依存し過ぎなのではないか。

    15. 現場の意見を集約反映するシステムはない。パブコメなどで意見を述べても、「のれんに腕押し」で意見がきいてもらえているのか、施策に反映されるのか全く見えない。

    16. 日本学術会議や総合科学技術会議は機能しているのか。本職が忙しいはずの方々がメンバーにみられる。アメリカではこういった委員に職をかけ持ちしてなるようなことはないのでは。名誉職のようになっており、役人にお墨付きを与えるためのだけの組織になっているのではないか。

    17. ライフサイエンス委員が、立場が上の人の話だけでなく現場の意見も聞いてあげれば良いのではないか。実際には、そのようになっていない。

    18. ナノの業界では役所側と研究者側が一緒に知恵出しし、良い方向に回っているのではないか。

    19. 環境やライフではいまいちそこが回っていないのではないか。

    20. ライフサイエンス大型プロジェクトの提言ではそのような動きはあったのか?

    21. これに関しては生物科学連合の動きであり、学術会議や文科省とは関係ない。

    22. 生物科学連合の提言には脳科学関連の学会などはほとんど関与していない。

    23. 大型のプロジェクトに関しては欧州、特に物理系の分野では個別の課題についてランキングがしっかりとなされている。欧州各国の研究者が互いに連携し、各国の政府に直接働きかけている。日本の(生命)科学者は意向をまとめてしっかりとランキングをつけるべきでは。そうでないと必ずしも専門的に判断できない人の意向で決まる、ということになるかもしれない。

    24. 確かに研究者コミュニティで現場の研究者も含めた意見を集約する仕組みが必要(特にライフ・サイエンスでは)。

    25. どうやってそういう仕組みを作れば良いか。匿名の外部の審査員が必要。現在は評価はほとんどの場合匿名でないので利害関係が反映されやすい。

    26. プロジェクトの責任の所在は何処にあるのか。

    27. 意思決定は基本的に個人でなく組織によってなされている。プロジェクトは長いので、個人が責任を取ろうとしても5年もたつと人がいなくなっている。責任は個人でなく組織に求められるべき。

    28. アメリカでは研究者出身の大臣による指示方向付けが明確で分かりやすいが、日本ではそのような人がいない。

    29. アメリカでは大統領のしっかりとした後押しがある。日本では政治家が大臣になることも多いので、日本の仕組みを踏まえた仕組みが必要。
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    F) 研究への寄付・アウトリーチについて
    .III-9 研究への寄付
    .をベースにした議論

    1. 研究への寄付はアメリカでは最高65%が控除される。日本でもそのような制度を作ることはできないか。

    2. 現状は課税所得から引くという所得控除という対応になっている。

    3. 現在、1万円寄付すると800円戻って来る。それを増額するような検討はされていたことがあった。実際にそのような提案が今後なされるかどうかは不明。

    4. アメリカでは確定申告は全員するので敷居が低い。日本では天引き制度があり、これを利用している人にとって確定申告は煩雑であり、制度が定着しない面がある。

    5. アメリカではドネーションした人が分かるようにクレジットする仕組みがある。そういったものが必要なのではないか。

    6. 研究者や大学が何をやっているかは外から見ると必ずしも明確ではない。外の人が何を求めているのか分析する必要もあるだろう。

    7. 「はやぶさ2」の場合は、寄付が集まったことを、予算を確保するための根拠として使うことができた。国民のニーズが見えるようになることが重要。

    8. 日本では、寄付を行った場合の税金の控除が弱いのでモティベーションが高まらない。

    9. 寄付を行った際の税金の控除のメリットが大きくなれば、研究者は科学コミュニケーションを眼の色を変えて一生懸命やるようになる。そうなると、国民の間に科学技術がより浸透し、よいサイクルが回る。うまく働けば、科学者も国民もwin-winの関係になることができる。
    .

    G) 研究の公正や不正について
    .質問III-10 公正な科学技術のあり方
    .をベースにした議論

    1. 問題が大きく、また研究者サイドの問題という側面も大きいので、別途改めて議論する必要がある。今回は時間の関係上、議論しない。

    2. 6月に本格的にガチ議論サイトのほうで議論してゆく。

    3. 文科省も納税者である国民に対して説明責任がある。社会に対する説明や、引き続き研究に投資することについて、研究者と一緒に考えていきたい。

    4. 「2ちゃんねる」は捏造の解明に一定の役割を果たしている。あれはすごい。

    5. 内容は玉石混合。誹謗中傷もあるが、根拠のないものはちゃんと淘汰されるようだ。

    6. 偉い先生の中には「2ちゃんねる」の存在を忌み嫌っている人がいる。
    .

    H) 文科省の人事制度について
    .質問I-8 適正にあった配置転換の仕組みの導入A
    .質問II-1 研究職から行政職へのキャリアパス
    .質問II-2 文科省官僚のキャリアパス
    .質問II-3 文科省戦略室メンバーのキャリアとインセンティブ
    .質問II-4 行政官の情報公開

    .をベースにした議論

    1. 文科省の内部に研究の経験者というのはほとんどいないのではないか。

    2. 文科省でも最近は博士採用が増えている。

    3. 博士だから採用を拒むということはないし、逆に博士だから無条件に有利になることもない。昇進は学位に関係なく実力次第。博士でも採用時の年が重要視される。

    4. その辺りの資料をしっかりと出してもらうと分かりやすい。

    5. 文科省・総合職入省案内パンフレット45ページ「過去5年間の採用状況」(PDF)で公開されています。

    6. 1、2年で担当部署が変わるのは癒着を防ぐためという側面もある。

    7. ジェネラリストを育てるか、専門家を育てるか、現在は前者が数的に多いようだ。様々なことをバランスよく検討し決定することができる資質をもった、組織のトップを育てる意味合いもある。

    8. 研究者の側でも、研究科長は罰ゲーム、みたいな雰囲気がある。それではいけないのではないか。

    9. 官僚、大学、民間を回るようなキャリアパスが長期的には構築されるとよいかもしれない、と考え方は一部にあるようだ。
    .

    I) 時間の関係で十分に議論できなかったテーマ
    .質問I-10 研究者のインセンティブと評価の仕組みはどうあるべきか
    .質問II-3 文科省戦略室メンバーのキャリアとインセンティブ
    .質問II-6 科学技術政策の意思決定の問題B
    .質問II-7 文科省の役割

    .質問III-1 日本の科学がおかれている国際的に不平等な状況
    .質問III-2 研究リソースの効率化
    .質問III-5 大学の教養課程の必要性
    .質問III-6 科研費の応募資格
    .質問III-7 文部科学省の意図と、受け取る側のずれ
    .質問III-8 研究に関わる研究者以外の人材の育成や雇用について
    .質問III-11 もんじゅプロジェクトについて

    .



    参加者(敬称略)

    斉藤 卓也(文科省, 科学技術改革タスクフォース戦略室長, 会計課予算企画調整官)

    原 裕(文科省, 国際交流官付交流官補佐)

    林 茂生(理研 発生・再生科学総合研究センター, グループディレクター)

    島田 祥輔(サイエンスライター)

    神田 元紀(大阪大大学院 生命機能研究科 博士課程)

    横山 雅俊(科学コミュニケーター;5月7日のみ参加)

    内村 直之(科学ジャーナリスト;5月8日のみ参加)

    湯浅 誠(カクタス・コミュニケーションズ;5月8日のみ参加)

    河田 孝雄(日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長;5月8日のみ参加)

    匿名(在オランダ, 研究職;5月7日スカイプで参加)

    若林 良之(NIH, Heart Lung and Blood Institute, Project Researcher;スカイプで参加)

    近藤 滋(分子生物学会年会大会長,「ガチ議論」スタッフ; 大阪大 教授)

    中川 真一(「ガチ議論」スタッフ; 理研 准主任研究員)

    宮川 剛(「ガチ議論」スタッフ; 藤田保健衛生大学 教授)

    小清水 久嗣(「ガチ議論」スタッフ; 藤田保健衛生大学 助教; 司会担当)

    高宮 義博(日本科学未来館 宮川プロジェクト 研究補助員)
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