【帰ってきた】ガチ議論
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文科省お役人からの回答

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    「ガチ議論」のプレ企画として開催された「文科省科学技術改革タスクフォース戦略室メンバーとの会合」(5月7日〜8日, 東京お台場)では、「文科省お役人への質問大募集」に寄せられた質問(「文科省お役人への質問のまとめ I, II, III」参照)を実際に文科省の方にぶつけてみました。今回は、質問ごとに回答をまとめて掲載します。なお、この回答は、あくまで文科省の方々の発言の趣旨に基づき「ガチ議論」が独自に編集したものです。内容については会合参加者の皆様に確認をいただいておりますが、文科省やその他の機関などの公式見解ではない点にご留意いただけますようお願いいたします。


    会合では、日本の科学に関する様々な問題について、問題そのものだけでなく、それらの背景にあるものや、それを解決する方法について議論を重ねました。戦略室メンバーとの忌憚ない意見交換を通じて、いくつか意外なことに気づかされました。ひとつは、これまで文科省に責任があると思っていた問題で、実は大学・研究機関、研究者側に責任があったものも多くある、ということです。また、政策・制度は、役所や研究者が一方的に作ったり提案したりするものではなく、双方が常日頃から密に情報を交換しながら「二人三脚」で良いものを作り上げていかなければならないものである、ということにも気づかされました。


    今回は、時間の制約で、個別に取り上げられなかった質問もいくつかありました。また取り上げた質問についても議論をしつくしたというわけではありません。本サイトでは日本の科学をめぐる諸問題について議論を引き続き進めていきたいと思いますが、今回の「回答」がその手がかりのひとつになれば幸いです。いただいた回答について、ご意見やご質問などありましたらお聞かせください。

    ガチ議論スタッフ一同

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    I 研究者の待遇問題

    I-1 日本の院生の待遇の悪さA
    日本の院生は、学費+生活費が自己負担で、5年以上の過重労働と科学への主要な貢献にも係わらず数百万円の借金を背負う可能性が高いという点で、世界的に極めて特殊な存在です。支援機構は単なる学生ローンに過ぎませんし学振などの支援は不十分で恩沢も一部に留まります。抜本的な待遇改善のためには、学費廃止・最低賃金の保障とそれを可能にする少数精鋭化が避けられません。大幅な定員減に舵を切る見込みは無いのでしょうか。(K_MIyamichi さん)
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    お金が貰えて研究できるなら、また覚悟もやる気もなく進学する者が増えるだけです。やはり、学生支援機構の返還免除職を条件を厳しくして復活させるのが良いと思います。例えば学位取得後数年以内に査読付き国際誌に論文X報を第一著者で出すことを条件に加えるなどして。覚悟もない人間には楽な道ではないことを示さねばなりません。実際真面目に研究していればそこまで高いハードルではない。現在の学生支援機構は、現在の学生に過去の負債を押し付けるがごとく厳しいいわりには、外国人留学生に返還義務無しにばらまいている。せめて別機関が行わないと税金ではなく、債務者が外国人を養っているような印象を受けます。(FJ さん)
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    回答 日本においては「大学(院)で学ぶ権利を国が保障する」という発想が根本としてあるそうです。「学ぶ意欲を持っている人には学ぶ機会を用意しなくてはならない」という考え方と、(人数を絞る)研究の場としての大学院をどう捉えるか議論が必要であるのではないだろうか、とのことでした。現状では定員を減らしてゆく具体的なプランは特にでておらず、今後の課題であるようです。議論の方向性によってはあり得るのかもしれません。
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    I-2 日本の院生の待遇の悪さB
    最低限の給与を院生に支払う米国でさえ、合理的なネイティブ達には産業に逃げられており、学生の異常な献身に頼る日本型は世界的に奇異に映ります。また資金を獲得せずとも無料の院生が定常的に確保される状況は、教員の新陳代謝を滞らせる一因になるかと。学生を雇えなくなれば場所を整理でき、そこに新しい教員を採れるはず。お金の流れを抜本的に変え、教員が獲得した研究資金が学生をサポート出来る形になる可能性は有りますか (S_OTA さん)
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    回答 大学院生の待遇という観点から言えば現在でも一部の研究費では支給することは可能だそうです。教員がそれだけのお金を持っているかどうかの問題、ということになります。日本では高等教育にまわる国の予算が諸外国より少ないので、アメリカのような手厚い支援は現状の予算では無理だそうです。
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    I-3 日本の院生の待遇の悪さC
    研究室配属時に「君達の相手は海外のプロ。プロ意識を持て」などと言う教授もいるが、では給与は?と言えば、博士課程に「学費と同程度」渡す、という学生扱い。「バイトなんて研究者のやることじゃない」から生活費は両親からの仕送りで賄う、なんて平気で言う院生も多い。院生が最低限生活できるだけの体制は整えるべき。個々の大学の教授陣の意識改革を待つより、上がきちんと決めるべき。その為に院生の数を絞るのも仕方ない。(SH さん)
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    I-1, I-2の回答をご参照ください。
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    I-4 若手研究者の雇用不安定/ワーキングプア問題
    若手研究者の雇用不安定/ワーキングプア問題は、国が取ったポスドク1万人計画が先々までデザインされていなかったという国の失策による部分が大きく、ポスドクの自己責任では済まされない問題です。科学技術立国日本の将来を背負う若手研究者にどうやって雇用と研究環境を提供していくのか(経済の鈍化などといったexcuseはこの際抜きにして)具体的な方針を教えて下さい。(Taruho KURODA さん)
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    回答 若手の研究者の大学の雇用に関しては、まず大学の裁量にできるだけまかせるのがよいだろう、とする文科省側の方向性があるようだ、ということが指摘されました。その上で、法人化で大学の自由度が増えたにもかかわらず、若手のポジションを増やさないのは大学側の裁量によるものなのではないか、ということでした。また大学側、官僚側、双方が若手研究者の育成について、本来あるべき理想的な姿を議論することが重要である、との考えが文科省側から示されました。また、この種の制度について大学側で変えられる余地はたいへん大きいが、適切な「外圧」のようなものがあるとベターかもしれない、とも。大学が自ら改革を進めるようになるための「外圧」のようなもの、その適切なレベルを研究者側、官僚側、双方で考えていく必要があるということかもしれません。その上で、お金の出し方や制度は役所が変えることができるので、そのためにも研究者と役所で一緒に考えることが重要である、との意見が出されました。また、きちんと議論を重ねていかないと、社会的な勢いで十分な議論を経ていない必ずしも合理的とは言えない制度が突然できてしまう可能性もある、という点が指摘されました。
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    若手研究者のワーキングプア問題については、 これを社会全体の問題として捉えるのであれば、それはアカデミアだけでなく国全体の問題になってしまう(他業種でワーキングプア問題でご苦労されている方も多くいる)かもしれない、という点が文科省側から示されました。さらに、博士一人を作るのに多くの税金が使われているという話がある一方で、学部卒で企業に入って研究している人は税金を納めていること、そもそも博士号を取得するような人は元々が自分でいろいろできる能力の高い人たちである可能性が高いであろうことが指摘されました。その上で、そのような方々をさらに国が支援するということについて国民から理解を得るためには様々な観点から十分な検討する必要があるのでは、とのコメントをいただきました。
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    工学部出身者の教員免許が工業高校でしか実質的に通用しない状況はすぐにでも変えられませんでしょうか。農学部出身者が高等学校で理科を教えることが出来て、工学部出身者が教えることが出来ないと言うのは理解に苦しみます。教員採用試験の競争率が高い状況でそこに制約をかける必要など全くないと思います。(Tak さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    I-5 学振研究員の待遇の悪さについて
    学振の「採用しても雇用関係はないから健康保険とかの社会保障はなしな。でも他の所から金貰うんじゃねーぞ」にはMEXTとしてはどう思ってるんですか?(GNK さん)
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    回答 この問題については研究者サイドの会合参加者からは「学振PDは雇用関係と規定されず、社会保障費が負担されないにもかかわらず、他からお金をもらってはいけないとしているのは法令違反ぎりぎり」、「ほとんど脱法行為」、「訴えれば勝てるかも?」というコメントが出ました。 JSPSに直接問い合わせをしていただいたところ、その返答は「研究に専念していただきたいため」と、募集要項に記載してある回答がありました。
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    I-6 博士倍増計画はまずいのでは?
    自民党が博士をさらに倍増させる計画を発表していますが、いったいどういうつもりなのでしょうか。これまでの大学院・ポスドク問題をどうとらえてどう解決するつもりなのか、まったく見えてきません。博士のキャリア問題は日本だけでなく欧米でも同様な状況なのですが、いったい自民党はそういう勉強はなさっているのでしょうか。博士倍増案は誰のどういうプランであるのか、責任をもってはっきりさせていただきたい。(Kashimata さん)
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    回答 この博士倍増計画は、自民党教育再生本部からの提言のようです。海外諸国では近年も博士取得者数が増加する傾向があり、これらの国と比べて日本の博士号取 得者数 は劣っているという状況があるとのこと。今後、この計画は、産業競争力会議等で議論されていく見通しだそうです。
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    I-7 任期制は奴隷制?
    研究機関の任期制職員が、定年制職員に比べ、経済的に不利な立場で雇われている合理的な理由はなんですか?任期制職員の雇用条件、任期、契約更新など生活基盤そのものの決定を定年制職員が決めているという構図は、研究者に2種類の身分階級があり、一方が他方を奴隷としているのも同然ではないかと思われますが、どのようにお考えでしょうか。(任期制研究員 さん)
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    回答 この問題、どこの問題かといえば、各機関・部署の裁量で決まることであって、役所の問題ではないのでは、とのご指摘がありました。定年制と任期制の中間的なポジションはあっても良いし、導入することも可能な仕組みになっている、とのことです。現在の定年制の定員枠は、退職金がつく職の数がベースとなっており、年棒制にして終身雇用、というシステムは大学の裁量で導入できるのだそうです。じっさい、年棒制の任期なしポストについて、一部大学では導入を検討しているようです。
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    I-8 適正にあった配置転換の仕組みの導入A
    とかく研究行政のてこ入れというと、大型プロジェクトにどかんと研究予算をつける話を連想します。そういったプロジェクトのリーダーは、研究者というよりはマネージャー的資質が有能なのではないかと疑いたくなりますし、遅く生まれてきたものはいつまでもプロジェクト組織の最下層で働くしかないのかなと思ってしまいます。年齢とすばらしい研究経験を重ねたマネージャー資質の人は、あえて研究現場を離れ、研究行政側へとステップアップしていただいて、第二第三の若き山中教授を発掘することに心を配って欲しいなと思います。文科省の役人さんも人材のスカウトや事務局として大いに活躍していただきたいと思います。世代交代が起こりにくいことを上の世代から心配されることこそが最悪の状態だと思っています。(とくめい2 さん)
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    回答 プロジェクトリーダーの選定や置き換えについては大学・研究機関の裁量でそのような配置転換は可能で、研究から行政への異動についても文科省でも最近は博士採用が増えているそうです。文科省・総合職入省案内パンフレット45ページ「過去5年間の採用状況」(PDF)で公開されています。官僚、大学、民間を回るようなキャリアパスが長期的には構築されるとよいかもしれない、という考え方は一部にはあるようです。
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    I-9 適正にあった配置転換の仕組みの導入B
    学生が大学院に進学しなくなった原因としてポスドク問題が良くあげられますが、そもそも魅力のある授業や実習が出来る大学教員の数が少ないということはないでしょうか。質の低い大学教員には交代してもらう。そんなシステムは作れませんかね。文科省の問題ではなくて各大学の問題?今に始まった問題ではない?(とくめい さん)
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    I-1, I-7, I-8の回答をご参照ください。
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    I-10 研究者のインセンティブと評価の仕組みはどうあるべきか
    現在の科学技術政策において、「研究者にインセンティブを与えることによって日本全体の研究レベルが向上する」ことが前提にされているように思います。しかし以下のTEDで紹介されているように「インセンティブ」の与え方によっては、研究者の内発的動機(創造性)が損なわれる危険があるように感じます。知的好奇心を満たすために邁進し、自分自身の発見が世界に共有されることに心が奮え、そのことに対して国に心から感謝できる研究者が一人でも増えるような政策ができることを願っています。
    http://www.ted.com/talks/…(M.Tada さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    II 文科省についての質問

    II-1 研究職から行政職へのキャリアパス
    研究職から行政職へのキャリアパスが日本にはありません.現在は博士後期課程まで行けば行政職への道は事実上断たれます.形式的には国公一種試験に受かれば受け入れは可能ですが,現実には行政組織はそのような人材を拒絶する素地があるのではありませんか?
     ますます高度化する科学技術に迅速に対応するには専門的知識と対応力を有した人材を外部から入れることで常に対応力をアップデートし,最先端の分野に適応する事が必要です.現在は学会からの人材を非常勤で使う事でやりくりしている訳ですが、米国でDOEやNIHのトップに最高の研究者を招いて活性化を図っています.我が国でも「本気で」やれる研究者の人材を行政組織内部に取り込む事で、強化を図る時期ではないでしょうか.(Shigeo Hayashi さん)
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    I-8の回答をご参照ください。
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    II-2 文科省官僚のキャリアパス
    「40歳代以下のアカデミア」は他の業界に先駆けて日本型の終身雇用を廃して欧米型の雇用体制になったと思いますが、遅かれ早かれ殆どの職種が終身雇用ではなくなるでしょうし、そうならないと国は滅びると思います。最もそうなるべきなのは霞ヶ関だと思いますが、文科省をはじめ各省庁の皆さんは、ご自身のキャリアパスについていかがお考えなのでしょうか?研究者出身の文科省事務次官とかいてもいいと思いませんか?もっと流動性のある官庁であるべきだと思いませんか?(nemo さん)
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    回答 I-8の回答をご参照ください。なお、省内の流動性は実は高く、一定の年齢からは転職する人の割合がどんどん増えていくそうです。ジェネラリストを育てるか、スペシャリスト(専門家)を育てるか、現在は前者のほうが数的にはより多いようです、とのこと。これには、様々なことをバランスよく検討し決定することができる資質をもった、組織のトップを育てるという意味合いもあるそうです。
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    II-3 文科省戦略室メンバーのキャリアとインセンティブ
    斉藤卓也氏ほか戦略室のメンバーの皆さんがこれまでどのような法案や政策に関わったか、役人としての経歴を教えて下さい。よろしくお願いします。
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    (略)研究者のインセンティブについてのご意見がありますが、では官僚のインセンティブについてはどうなっているのでしょうか。具体的には、官僚はどういう数字によって業績評価されるのか、ということを教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。(M.Tada さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    II-4 行政官の情報公開
    真に日本やアカデミアのために実働された行政官を応援したいです。そのような方々こそ本省に残られ、給与、人事面において優遇されるべきと考えます。それが解るような情報を一定期間が過ぎたあと(政策上問題ない時期)に公開してもらえないでしょうか。その結果も含めての公開を希望します。(Miwako Ozaki さん)
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    II-5 科学技術政策の意思決定の問題A
    文科省の生命系の科学政策の大筋は、誰がどこでどのように決めているのですか?「事実上」の決定権は誰にあるのですか?(shigeru kondo さん)
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    回答 文科省が提案し、政府予算は、最終的に財務省・国会が決めます。政策の元になるようなものは研究者も含めていろいろな人が提案を行なっているそうです。現状はいろいろな人の意向を聞いた役人が取りまとめて政策を作っている、とのことでした。ヒトが小さくモノが大きい、物理や天文のような分野ではスケジュールなどもはっきりしているため順位を決めやすいが、生命科学では研究の先が読みにくいので、優先順位の選定が難しい面がある、との指摘もありました。決定を行う人が当該のものに詳しくないという面はあるかもしれないので、専門家である研究者コミュニティの側でしっかりと優先順位をつけることが生命科学の分野では重要だ、との指摘がありました。
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    II-6 科学技術政策の意思決定の問題B
    大学教員の年俸制案の話題ですが元ネタは産業競争力会議に提出された下村文部科学技術大臣の提出資料のようです.
    http://www.kantei.go.jp/…(*PDFファイル)
    雑多な案がてんこもりですが大学で外国人を増やし,英語力と国際競争力を増す.それと同時に年俸制がパッケージになっています.この案を検討している教育再生実行会議は5月末には提言をまとめ総理に手交予定とあります(pptの12ページ目).
    教育再生実行会議のメンバーはここ(http://www.kantei.go.jp/…
    文科省の官僚も全能ではありません.このようなケースは文科省内部で議論があった事でしょうか?頭越しに振ってきた事かもしれませんね.上記プランの性急な実行は大学,教育を破壊する事につながります.戦略室が現場の意見を汲み上げる機能を果たしてもらいたいと思います.(Shigeo Hayashi さん)
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    回答 年俸制度に関してはI-7の回答をご参照ください。政策決定については、以下のような趣旨のコメントをいただきました。新しく大きな制度を創成するチャンス(大型の補正予算や、今回の成長戦略など)は突然やってくることも多いので、日頃から制度を作る側(役所)と制度を利用する 側(研究者)で十分に議論を重ねておくことが重要。そういうチャンスが来たときに、何も議論していないということは望ましくはない。そのためにも、日頃から研究者の側と役所側のコミュニケーションが重要となるはず。
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    II-7 文科省の役割
    文部科学省って必要なんですか?他の役所と仕事内容がかぶっていて、省の存在価値が分からないのですが??たとえば科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局の3局は学術会議の事務局でいいのでは?大学・研究機関において無駄な雑務や会議が増えた原因は、文科省などからの多大な事務作業依頼に起因しているかと思ってます。上部機関である文科省等がスリム化すれば、そういった事務作業依頼が減るのではないかと期待しています。(AD さん)
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    時間の関係で十分に議論できませんでした。雑用の問題についてはIII-3の回答をご参照ください。
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    III その他の質問

    III-1 日本の科学がおかれている国際的に不平等な状況
    ある米国の有名PI(バイオ系)が言っていたことです。「日本から留学してきたポスドク(特に女性)にはCNSクラスの仕事を任せる。CNSに論文が載ればそのポスドクは帰国してアカポス取れる可能性が高まる。日本のポストでも引き続き留学中のテーマを持ち帰らせて実験させる。日本ではCNS持ちに研究費をたくさん出してくれるから、日本の研究費にフリーライドして研究成果を出せる。もちろんコレスポは渡さない。」本当にそういう事例があるか不明で、この米国PIの「個人的戦略」かもしれませんが、気になったのであえてここで紹介しました。MEXTとしての見解をお願いしたいです。(ATSUSHI TOYODA さん)
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    これはある頻度であると思います。特にCNSに関しては。日本女性研究者は便利な存在と思われていることも。仮にコレスポを渡したとしても。女性というより日本人がこの戦略対象として使えると思われているように思います。いつも失礼な話と思いながら聞いていますが。(Miwako Ozaki さん)
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    こちらの見解は重要です。日本に有力学術誌がなく、実質カネと情報を吸い取られている状況になっている点もあわせてみると、科学の植民地化が進んでいるとみるべきではないでしょうか。ぜひ政府で議論してください。(Akiyama さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    III-2 研究リソースの効率化
    次世代シーケンサーなどの「ハイスループット」機器は現在、初期投資と維持のコストの構造はひとつの研究室のような小集団で賄えません。少数台導入しても技術の進展が早くすぐに時代遅れになります。中国はBGI、米国はBroadと集約型の巨大研究所を立ちあげて牽引しています。全日本のハイスループット機器需要を一挙に引受ける「一個」の集約拠点を作り、十年のような長いスパンで人と機器を運営していくべきではないでしょうか?(Takashi Hamaji さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    III-3 研究者の雑用問題
    日本の研究者は無駄な雑務や会議に追われています。ゴミ箱一つの設置場所すら教授が会議で議論するという話を聞きます。研究者が関わる事務書類や委員会をまずは半分を目標に減らすよう各大学および日本学術振興会に通達を出して頂けませんでしょうか。(Tak さん)
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    回答 まずこの問題の多くについては、役所の問題ではなく、各機関・部署の問題である、との指摘がありました。その上で、雑用(某有名大では伝統的に大学教員が電気メーターの使用量をチェックする、など)が多すぎるということでは、やる気のある若い人がつぶれてしまうのではないか、危惧されていました。問題の背景として、人件費=コストという意識が十分とは言えない、という側面があるのではないか。改善につながるアイデアとして、例えば、大学教員の人件費のうち雑用で使用された部分を コストとして捉えるような感覚があるとよいのではないか、と。また、文科省やJSPS、JST関係の書類についてIT技術(例えばe-Radや ReaD&Researchmapなど)を活用し研究者の負担が減るようになることが望ましい、という意見にはご賛同いただきました。
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    III-4 古い縦割りの分野をどうするか
    大学教員の公募をみてみると、非常に限定されたまた既存の分野に対する公募が多いです。新しい分野に対する間口が狭すぎないでしょうか? でも、これは大学の問題で、文科省の問題ではない?(YK さん)
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    回答 制度上は、大学独自の方向性を打ち出すことに何ら問題はないようです。この問題に限らず、役所の問題と思っていたことが、実は、大学や自分(研究者)たちの問題であるということが多いと会合参加者は感じました。
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    III-5 大学の教養課程の必要性
    大学の教養教育をなくし、卒業研究の開始時期を1年前倒しすべき。3年春から卒業研究を始められれば、企業も、教員も、学生自身も3年冬には卒業研究の進捗状況から学生の能力・適性を客観的に判断して進路を検討できる。学生の卒業研究に対する熱意も高まる。何より、技術立国の礎となる大学生の専門能力を確実に今以上に高めることができる。大学からは変えられません。文科省の強いリーダーシップに期待しています。(kaz さん)
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    時間の関係で充分に議論できませんでした。しかし、会合の参加者からは、あまりにも一般的な教養の低い人が多いのではないか、教養課程はやはり必要なのではないかという意見がありました。
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    III-6 科研費の応募資格
    科研費の応募資格のことなのですが、任期付の場合、任期が応募を予定している研究期間に満たない場合は応募できないのですが、これってなんとかなりませんか? 例えば、科研費を獲得できた場合には任期を延長できるように人件費も支給することはできないものでしょうか。(Shigeru さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    III-7 文部科学省の意図と、受け取る側のずれ
    文部科学省で議されている政策が、JSTや大学に落ちると、ネジ曲がってしまうのはなぜでしょう?(橋本 昌隆 さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    III-8 研究に関わる研究者以外の人材の育成や雇用について
    コメントにも多々あるように研究に伴う事務作業を研究者は無駄、雑用と切り捨てますが、本来公的予算の執行や資材の管理はプロフェッショナルが行うべき重要業務です。そういった分野のプロを育ててこなかったのは大学や大学院の責任でもあり、他人事ではないと思います。このような研究に関わる研究者以外の育成や雇用についてどのような展望があるのか、大学院政策の観点から伺いたいと思います。(Kouno さん)
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    I-8, II-2の回答をご参照ください。
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    III-9 研究への寄付
    海外と日本で大きく違うのはドネーションベースの研究費の額です。アメリカにはHoward Hughes Medical Insitituteを始め、大きいものから小さいものまで多種多様な私的グラントが存在します。これは一般の国民が研究をサポートする事で社会に貢献するという、成熟した国の一つのかたちだと思います。日本でもこれをもっと導入すれば、研究費のほとんどが国家予算という現状を改善でき、研究費の使いやすさが格段に向上することでしょう。文科省は財務省と協力して、(小額であっても)研究費への寄付には大幅な税制控除を与えるような法整備を検討できませんでしょうか?(TK さん)
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    回答 寄付金控除の拡充の検討は行われたことがあるようです。現在、1万円寄付すると800円戻って来るそうですが、それを増額するような検討はされていたことがあったそうです。実際にそのような提案が今後なされるかどうかはわかりません、とのことでした。
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    III-10 公正な科学技術のあり方
    論文の不正事件が起こった時は大学や研究者の自浄作用に任せるのが文科省の方針のようですが、大学を解雇されて研究者コミュニティーから追放された人物が実在しない組織名を使って、不正が疑われる論文を発表していた場合はどの組織が対応すべきなのでしょうか?
    もしこの論文の内容が事実ならば、遺伝子組み換え人間を誕生させた組織が千葉県内に存在していることになります。
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23605829(reprogramming さん)
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    *なお、このテーマでは、これまでにトピックとして、『監査局や研究公正局の設立の必要性』というご意見もいただいております。今後また「捏造特集」の際にさらに議論を行う予定です。
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    時間の関係もあり、時間の関係もあり、このテーマに関しては深い議論を行いませんでしたが、6月に本格的にガチ議論サイトのほうで議論してゆく予定です。文科省としても納税者である国民にたいして説明責任がある、という意識はあるそうです。社会に対する説明、引き続き投資する事について、一緒に考えていきたいということですので、ぜひ皆さん、議論の方にご参加ください。
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    III-11 もんじゅプロジェクトについて
    もんじゅプロジェクトは文科省が行っているということですが、もんじゅにはこれまで2兆円が投じられ、現在も維持のみに「一日当たり」5500万円相当のコストがかかっていると聞きます。高速増殖炉は米、英、仏、独いずれも撤退する中、一度たりとも成功せず不祥事だらけのもんじゅに巨額を投じ続けるのはまさに無駄ではないですか。このお金を多様な研究や学生に投じれば多くの問題が改善するでしょう。もんじゅの無駄についてご意見をうかがいたいと思います。(Yoshimura さん)
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    時間の関係で議論できませんでした。
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    III-12 日本版K99グラント
    ポスドク(特認助教も含む)が独立しやすくなるように、アメリカのK99グラントのようなものを新設することはできないでしょうか? JST の”さきがけ”は似ているように見えますが、研究領域が限定されていて、非常に不公平に思えます。また、この新設グラント(スタートアップ費用と3年間の 研究費(実験助手1人ポスドク1ー2人程度雇用枠を含む)を支給、給与、保険を保証)を保持している研究者は、本人が希望する日本国内の研究可能な施設 (国立、私立大学、国立研究所等)で独立ができ(テニュアトラック)、その後、業績、教育歴、大学、研究所運営へのコミットメントが良ければテニュアに移行する(審査は学外者によって行う)。その際には、所属大学に教官一人分の雇用にかかる費用を文部科学省から増額する。こんな案は可能でしょうか?ちなみ に、このグラントには、何処にいるポスドクでも募集可能にすれば、海外在住の日本人ならびに外国人の研究者も募集するようになるかもしれません。この案を 提示しているのは、現在のテニュアトラック事業は、大学側がテニュアトラック研究者を選ぶために、恣意的な採用等があって不公平がある場合があるからで す。また、順番に異なる大学にテニュアトラックのグラントを分配しているために、ある期間のみ大量のテニュアトラックポジションが特定の大学にできて効率 的でないと思っております。(Yoshiyuki Wakabayashi さん)
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    回答 K99グラントはアメリカでも本道のシステムではありません(全米で年間150〜200人ほどしか選ばれない)。日本国内でそのようなトラックが求められているかどうかは調べてみないとわからないとのこと。一方で、「例えば、国外の日本人ポスドクが日本に戻ってくる際の活動を補助するようなグラントは研究者にとってニーズある だろうか?」と文科省の方から逆に質問をいただきました。制度を考える際には、長期的にどのようなシステムが理想であるかを研究者と役所の間で議論を重ねてゆく ことが重要、ということで会合参加者の間で意見が一致しました。I-8の回答もご参照ください。
    優れた人材を獲得、育成する事は大学や研究機関にとって非常に重要な事であると考えられます。しかし日本の大学や研究機関を対象にしたアンケートでは「優れた研究者を確保するため組織としての取組がなされているか」という質問項目に対して「何もしていない」と答えた大学が半数以上を占めるという驚くべき結果が出た、ということが文科省側から指摘されました(PDF資料 第3-3図)。このアンケート結果に触れて、機関の側にも多くの問題があるのではないかという意見が文科省サイド以外の参加者からも出ました。
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