2014.04.26 トピックス
「ガチ議論」シンポ・テープ起こし (5/6)
宮川
日本学術会議の資料出していただけます?この資料の33なんですが。
宮野
20時回ってますね。どうしよう?
宮川
これ、9時まで取ってあります。
宮野
どう考えても、こっちも、こっちも…、ちょっとブレイクは入れる。もちろん、さあガチ議論なんで、さあまたやりましょうかなんてTweetもあったけど全くその通りで、我々もそういうつもりでここに座っているんですけれども、ただ、聞き漏らすまじ、とみんな思ってるんちゃうかなあと思って。聞き逃したくないなあとみんな思っているんじゃないかなあと思ってね。いったんbreak入れた方が良いなあと思ってね。2時間経ったし。5分ぐらい。きついね。
宮川
本当は10時まで取ってある…。
宮野
やろう、やろう。やろうぜ。大事なことだよ。
近藤
そのあとも皆さん今日、お泊まりだそうです。年会長権限で、皆さんの分は出せませんけれども、どっかで続きをやってくれても一応構わないってことに。私自身はもうちょっと2日ぐらいもう寝てないんで、限界なんですけれども…。一応そこはガチということでよろしくお願いします。
宮野
じゃあ5分?10分!15分から。
宮野
よっしゃー。じゃあまた始めますね。決して休憩中も我々集まって話したわけ全くなくって、普通にトイレに行ってパン食ってただけなんで。糖分ちょっともらっただけなんで。引き続きこういう雰囲気なままで、お送りできればと。で、どうやらUstも1200とかいって、1800?会場も400とかいて、2200とか見て、良いのかなあと思いつつ、なんか壇上で安宅さんも写真撮ってはるし。いい雰囲気になってきたなと思っています。別にまとめる気もないですけれども、また思ったこと、ばーっと吐き出せばいいなと。
宮川
さっきの続きの、声を上げる仕組みっていうのを…。
宮野
一気にぎゅっと戻したね。
宮川
日本学術会議の資料をちょっと出してもらっているんですけれども。「日本学術会議では各論ばかり議論?」というスライドを出してもらっているんですけれども、これ、どういうグラフかと言いますと、そっちに出ているやつですね。日本学術会議のホームページを見ますと提言みたいのがいっぱい出てるページが。ちょっと言葉で説明しますと、グラフがありまして、このグラフが何かというと、日本学術会議のホームページには提言がいっぱい出ているんですね。色んな提言が。その提言を我々でグラフ化してみたものなんですけれども、灰色の部分が個別の話ですね。100万人ゲノムとか、それぞれの業界のこういうプロジェクトをやりたいみたいな提言が、この灰色の部分であって、赤い部分が何かというと、科学技術政策一般みたいな、全ての科学技術の分野にまたがるようなお話に関する提言が赤いので記されているんですけれども、ほとんど、科学技術全般の施策に関する提言というのはないんですね。日本学術会議。僕は皆様とお話ししていて、こういう、なんか一般の研究者の声みたいのがあった時に、本当は日本学術会議って研究者のボトムアップの声を公式に国に提言するような、そういう場なんじゃないかと思うんですけれども、そういう機能が全然果たせていないんじゃないかと。そのような機能を日本学術会議でもいいし、総合科学技術会議でもいいし、新しいものでも何でも良いんですけれども、そういうものですね。お金をかける必要はないと思います。ネットとかでも良いと思うんですけれども、そういうルートみたいなのがあったほうが。lobbying活動っていうのも重要で、そういうルートがあったところで結局人に、重要な人物にお話ししに行かなきゃいけない、と、そういうことはあると思うんですけれども、そういう、分かりやすい、透明なルートがあるってことが、大事なんじゃないかなと。今日、そういうお話、ぜひ、なんとか、実現していただけないかなと、ちょっと思うんですけれども。
鈴木
いいですか。いや、僕は全く大賛成なんですよ。大賛成で、私自身も日本学術会議がこういう政策についての提言をもっとしてくれたらね、いいなと思っているんですが、一つやっぱり、原山先生みたいな先生の質と層がやっぱ日本はあまりにも薄いですよね。こういうことをちゃんとオーガナイズしていくっていうか。結局、教育議論でも研究の議論でも、自分の経験をすごく一般化する傾向っていうのが非常にあって、そこの危険性に陥らないためにはやっぱり科学技術政策の専門家集団、っていうかね、が、もっと分厚くなるってことが大事だと思うし、かつ、それは、今のご提案は僕は最大限応援したいとは思いますが、どこがボトルネックなんですか?大西さんはそんなに理解のない人じゃないと思うんだけれども。僕別に明日にでも電話してあげてもいいんだけど、ちょっと一回やってみたらどうですか。あるいは、明日分子生物学会で日本学術会議は今なに、1本とか4本とかっていっているものを、10本ぐらいに増やせとか、あるいはもう科研費の基金化の前面化については、もうやるって言って大会決議をしてですね、学術会議の、今日もおそらく幹部が見えていると思いますけれどもその紹介で持ってっちゃって、どこが引っかかってどうなるかっていうのを…。
宮川
学術会議の先生いらっしゃいますよね。この中で…、山本先生はいらっしゃらない?もしよろしければマイクを…。
山本
学術会議の第2部、生命科学の部長をしています山本です。まずこのグラフですけれども、学術会議の仕組みは、全体のことを決めている幹事会という組織がありまして、それから3つの部、人文社会科学、生命科学、理工学に分かれた3部構成です。さらに例えば第2部生命科学であれば、その中にまた9つの分野別の委員会があります。基礎生物学、統合生物学とか、基礎医学、臨床医学などの形で9つあります。さらにその分野別委員会の下に分科会がありまして、2部では全部で100以上の分科会があるのです。それぞれの分科会は例えば免疫学だとか林学だとか、それぞれの領域にspecificな問題を取り上げているわけです。あとですね、今期は大西会長のリーダーシップで設置されたものもありますけれども、課題別委員会という、学術会議全体で課題を取り上げるような委員会もあります。例えば日本の少子化のこの先はどうなるんだろうかとか、科学者の意思を社会にどうやって伝えるかとか、そういった、非常に一般的な、たぶん宮川さんがそこに書かれている科学技術全般の施策に関するような提言を出すような委員会が10ぐらいあるわけです。重要課題を取り上げるという意味で。そうすると、全体としては300ぐらい細かく分かれた分科会があって、それらそれぞれに提言を出す権限があるわけです。実際提言は出てきます。ですから統計的にご指摘の数になるのは当然なんです。むしろ今期なんかは課題別委員会の活動を強めています。現在論文不正の問題とか研究費不正使用の問題、これについては会長が委員長になって取り組んでいますし、それから今期は原子力発電の将来像とか非常に重い課題があって、こういったものも全体で議論しています。ですから、これ単に全部の分科会にですね、みんな科学論を議論しろというのは成り立たないことで、それぞれの分野にspecificな提言があってもいいことです。それからこれもまた分かりにくいのですけれども、学術会議からの意見表明は強い順でいうと、勧告、要望、声明、提言、それから報告という形になります。普通分科会など小さなグループで出すのはせいぜい提言どまりです。例えば今期「科学者の行動規範」の改訂版を出しましたけれども、これは声明です。ですから、勧告、要望、声明というところを見ていただければ、そこのレベルでは少なくとも科学界全体を見渡したものを出している、とそういうことになります。
宮野
なるほど。分かりました。分かった。
近藤
学術会議が声明なり提言を出した時に、文部科学省はどれぐらい正確にそれに従って動くんでしょうか。
山本
多分、文科省で考えておられるのにぴったり合うような提言が出てくると拾っていただける…。
近藤
でもそれでは提言にならないですよね。それだったら提言しなくとも良かったということに…。
山本
おっしゃる意味は分かります。それはだからその政府なりと我々とのすりあわせで…。
近藤
それで学術会議と文科省の考えが違っていたらどっちが強いんでしょう?
宮野
強制力っていう意味で?
近藤
ええ。
山本
それは分かりませんね。学術会議は鈴木さんが言われた通り、法律で定められた提言権というもの、権利は持っているわけですけれども、執行機関ではないということはもう何度も何度も言われていて、予算付けてくれと言っても執行に関する予算は一切つきません。ですから、現状は言いっぱなしです。
斉藤
提言の扱いについて一行政官視点なんですけれども、多分提言がまとめられると、会長から大臣とか局長とかに手渡されてっていう感じで正式にくるんだと思うんですけれども、その時点ではもう全く変更ができない状態でバチッと来ますし、しかもそれを見て担当の課とかに降りてくるわけですけれども、分かるところもあるけれども色々事情もあって、もっとここは踏み込んで議論しないといけないよねとか、ここはもうちょっとこういうふうにやるやり方もあるんじゃないのかなとか、言いたいことは一杯あるんですけれども、これで、というふうに来ちゃうので、なかなかそのすぐに動けないみたいな面があるのかなと思っているんですね。だからそのいきなり上から上っていうルートだけではなくて、そういうものを一緒に考えていくような仕組みが、行政も、中堅か若手で、多分、研究者、学術会員も含めて中堅若手の人たちが、本当にその現場も見えているような人たちが横につながって一緒に提言を作っていくような仕組み、で、そこでできたら両方の上に上げていくような、仕組みがいるのかなというのは常々思っているところです。
原山
国内じゃなくて英国の事例なんですけれども、英国にはRoyal Societyっていう、歴史ある由緒正しい学会の総本山みたいのがあるんですけれども、あそこでも一つのビジョンとして政策提言に関して議論してしっかりとしたエビデンスベースのpaperを出しているわけなんです。外部からみるとその提言した内容にかなり近いものが政府側の意思決定する時にreferしながらやっているのと、公の場でもって我が社の場合は、我が国の方針というときに、それとかなり似たような文脈の事が書かれているってことは、共鳴しているわけなんですね。それは、長い歴史の中で、また人によっても違うんですけれども、Royal Societyのヘッドをしている方がアメリカでもってバリバリやっていた方が戻ってきて新風を吹かせていると。強く制作側にも働きかけているし、新しい共鳴の関係ができている。やはりこれは作り込まなくてはいけない話であって、単純に制度でもって法律でこれがruleしているからできるものじゃなくて、やはりそれを引っ張る、コミットする人が中にいると行くし、そうじゃない場合やはり、ふらっとなってしまうという現状だと思うんですね。今の大西先生っていうのは総合科学技術会の充て職としてメンバーになったわけなんです。で、基本的に総合科学技術会議っていうのは、基本計画作ったりとか科学技術政策に本質的なところを決めるところなんだけれども、その中に必ず学術会議のトップの方が入っていると。今制度上は情報が入るようになっているし、学会、いわゆる学術会議っていうのは一応複数の主たる学会の総本山であるから、個々の学会の方達が言えば、その形でもうすっと上がっていく、そのルートはできているんですね。でもそれをどのように活用していくのかっていうのはpracticeなんです。それはやはりしていかなくてはいけないし、その方針として色んな大事なコアとなるとこをまとめているんですけれども、やはりお互い持ちつ持たれつで、総合科学(技術会議)でできないことは学術会議で出していただいて、それを使うものは使っていく。そういうやり方っていうものをやはり試行錯誤ですけれどもやっていかなくちゃいけないと思います。
宮野
それやっぱちょっと問題意識があって、この前とある御大の講演を作る時に調べたんですけれども、3.11以降、提言の数、調べたんですよ。グラフで。どわー(っと)、増えてるんですよ。もうやっぱり明らかに何というかな、その提言にかかるエフォートってすごいエフォートかかるんですよ。でもそれ安宅さんの言うね、戦略と違うんですよね。ねえ。だから、しかも敢えて言うと政策のための政策というか、言葉は悪いけども、総科である提言に書いてあるから文科省やりますっていう、ひとつのエビデンスになっていますよね。それがなんか元々そうは違わないですよね。まず。近藤さん、おっしゃった質問に絡むけど。そうは違わないんですよ。燃料電池?大事だ!そりゃ大事だ!みたいな。だから、エビデンスに使っていて、それが、その、それこそ原山先生がおっしゃる、その、ビデオとかにあったけど、末端…、ってここ指してすいません、現場の研究者にいくまでにどんどん丸め込まれてね。やっぱ全然効果発揮していないという現実はあるような気がするんですがどうでしょうか。って、まただれかにむちゃ振りしているという…。
原山
じゃあ皆さん考える間ちょっと、余興じゃないですけれども、先ほど鈴木さんがおっしゃったように科学技術の政策のための科学っていう柱は建てていただいたんですけれども、ちょっと大風呂敷というか、中身が伴わないという斉藤さんの指摘があって、そこは、どこに、何がネックになっているかっていうと、そういう文脈でもって研究する人の研究者層がすっごく弱いんですね。ほぼいない。私がなんで総科なんかに入っているかっていうと、たまたまそういうことを研究対象としていて、たまたま女性であって、たまたま海外にいたからっていう、色々な条件が揃って私がこの立場にいるんですけれども、やはりこれを、層を厚めに作っていかないと、いつまでたっても、大きな声の人がこれが重要だから、だからそれが政策になるっていうなりかたになってしまう。それも、声の大きい人たちは、自分たちの研究者としての積み上げがあって、感性っていうのがあって、鼻が利く人がいるわけなんですよね。その、(鼻が)利くのもすごく重要なんだけれども、それが、その匂いがちょっと弱くなった時に、その人に判断を任せていいかっていうと、必ずしもそうじゃないので、バランスを取る意味でそういう人とプラスにもうちょっと全体像をscientificに見渡せる人が必要だっていうのが私の現状認識です。
宮野
分かった。ここでちょっと議論を整理したいんですよ。割と混同していると思うんですよ。いろんなところでね。何を言いたいかといいますと、政策提言ってそもそも何か、っていう話ですよ。領域決めるってことですか?研究者自由な発想でやるって言っておいて、この領域やって、っていうのはなんかおかしい。つまり何を言いたいかというと、内閣府が総科なんで、やっぱりそれはメシの種だと思うんですよ。ちがうの?メシの種、産業、競争力になるっていうことを目的として領域設定するっていう事ですか?総科の提言っていうのは。アカデミアの領域を、ぼうっと強化するんじゃなくて。
原山
「メシの種」ってどういうふうに理解すれば良いんです?
宮野
ま、技術につながるというかね。産業を生むとか…。
宮川
いやそのメシの種だったらメシの種で良いと思うんですけれども、領域設定というか、要するにどういう分野にどれくらいの、重点的に配分するかっていうそういう問題があるっていうことですよね。
宮野
それは何を目的として?
宮川
予算は限られているわけなので、どういう分野にどういうふうに配分していくかと、いうことを、総合科学技術会議でされるわけですよね。重点的に大型プロジェクトとかを選別するとか。そういう話…。
原山
私、今、日本に2年いなかった頃の話なんですけれども、基本的に科学技術基本計画っていうのを5年ごとに作っているっていうのがベースですよね。96年以降。それが、大方針を示して、それを踏まえた形で関連省庁、その中で最も大きなactorっていうのは文科省なんですけれども、が、政策を立てる時にその方針にあった形でもって立てていって、予算化してっていうそういう一連の流れっていうのは一応皆さんがアクセプトしている状況な訳です。その中で第3期まではどちらかというと今おっしゃったような特定分野、これが重要だ、日本の将来のためにこれが重要だという分野を4つから8つ立ち上げて、それに重点的に投資するという、ま、流れをしたわけであって、と言いつつもわりと幅の広い領域だから、こじつければ全ての人たちの、私のプロジェクトっていうのはここに入れるって、それは作文的にできることであって、それをいかに目地切りするかっていうのが各省庁の難しいところなんですよ。そういう方針があったんですね。それに対して今第4期の真ん中なんですけれども、ここで舵切りをしたのはそういう、その、分野をピックアップするっていうか、日本が解決すべき社会的大きな課題っていうものを大きくいくつか取り上げて、それに対する解決策というか、それを乗り越えるための科学技術イノベーションていうふうに打ち出したわけなんですよ。それは前の方達が作ったからそれをgivenなものとして、私、今、ハンドリングしていると。そういう流れっていうのは日本だけじゃなくて、G8の国、ほぼ全部シフトしているのが昨今の流れで、課題解決型の科学技術政策ていうのが今流れになって。別にアメリカがやるから後追いする必要もないし、日本がやるからダメなんじゃないけれども、同じ方向に向いていることは確かなんですね。しかもその中で、そのための、役に立つ技術、役に立つ科学っていう発想っていうのがその根底にあって、それが強く流れているっていうのはやはり財政危機があって、なんか役に立つものでないとっていう、そういう色んな背景があるわけです。その中で今の政策があって、で、と同時に、その、いわゆる競争力っていう、さっきもおっしゃったような、安部政権になってなおかつそれが強くなってきたわけなんですけれども、それだけで十分かっていうと、完全に、表面的なことしかないわけですよ。今日、明日の話で、閉じるんならそれで良いかもしれないけれども、やはり、人がいて、それから研究者層っていうのは一、二年で作れるもんじゃないし、今のうちにinvestしていなかったら将来目が出るところに人がいかなくなったら困るわけですよね。だから基盤的なところも手当てしなくちゃいけない。そのバランスが重要であって、バランスをどういうふうに取っていくかっていうのが、政府の舵取りだと思うんですよ。その、基盤的なとこっていうのはさっきおっしゃっていたみたいに、すぐに目に見えないから、お金つけない、でもそれも担保することがいわゆる国の役割でっていう、アメリカもうかなり言い切っているわけですよ。目的思考と同時に、肝心なのは人であって、それに対するinvestmentはしっかりすると。基礎研究もあってって。大体皆さん、両刀使い、しているわけです。どこに線引きするかっていうのは国によって違っている。
鈴木
と、書いてあるわけですよ。ポイントはね、どういうことかっていうと、原文読んでいただければ、私も科学技術振興計画の方には関わりました。課題型とか、あるいは特に人材っていうコンセプトを相当出したのは、その通りですね。まず、原山さんのさっきのお話で、本当に層が薄いので、ぜひ、僕は今日リクルートに来て、5%ぐらいの人が原山門下生になってくださいっていうか、そういうそのトータルの戦略を。今ね、power-based policy makingなんです。これをなんとかevidence-based policy makingにしたいので、で、例えばその総科の問題にしても学術会議の問題にしても実はメンバーの問題っていうよりも事務局の問題なんですね。事務局の数と質と多様性の問題です。私、もともと国家公務員でそのあと学者になりましたけれども、法律を書くとか予算書にするとかものすごく得意なんです。そこは。だけど、必ずしも別に科学技術のいろいろな現状を分析し、それを戦略に引き上げるっていうのはそういう訓練とかそういう評価をしてきた人ではないので、村上さんとか斉藤さんを前に、もちろんそういうことを、一生懸命努力はしているけれども、全部役人だけで事務局やるっていうのはなかなかもう限界があるよね、っていう議論をしてきて、何で科学技術政策のための科学をやったかっていうと、5年ごとか10年後にはいわゆる今のお役人みたいな人が事務局の3割から4割いてもらって、残りの3割ぐらいは原山先生の門下生みたいな人たち、もちろん反逆してもいいんですけれども、この周辺、この分野の人たち。それから残りの3割ぐらいはそれぞれのフィールドにおいて非常に強い人。こういう事務局体制ができたらいいよねというもとに。すぐには解決はできないと思います。少なくともPhDがでて、そういった人たちが現場でいろいろトレーニングを積んで、そして一生ずーっと事務局にいたらそんな人は使い物にならない訳であって、研究の現場を歩き、そしていろんな具体的にラボのadministrationとかmanagementもやり、そして、15年ぐらいたったところで、10年ぐらいたったところで、そういう事務局に来てっていうローテーションを2回ぐらいまわすっていうような人材イメージを考えていましたと。そういう、もちろん博士から入ってくれる人もいてもいいし、2周目ぐらいからですね、入っていただく方もいてもよくて、そこに僕は一緒にリクルートに来ましたので、5%ぐらいの人はですね、そちらに転向するのもよし、それから35歳ぐらいになったらそっち側にちょっと加勢してくださいという、そういう話が一つと。それから今の文章はまあまあそこそこそれなりに文章としては、計画としてはきれいなものになっていますが、やっぱり弱いのはそれに至るエビデンスとか、立論とか、その部分がもうちょっとあってもいいかもしれない、というが今の反省点。ただ、最大の問題は、じゃあ計画通り予算がついているのかと。そこなんですよ。要するに。
宮野
そうよね。その提言がちゃんと活かされているかというかね。
鈴木
そういうこと。だから提言もいい提言出しているし、総科のpaperもですね、もちろん100点とはいえないけど、なかなかいいできです。それでちゃんと基礎研究にも配慮しているし、いろんなバランスも見ているし、何かを切り捨てるっていう文章になっていません。しかし、しかし、そのことと、仕上がりの予算は全然、まあ全然とはいわないけれど、違うものになっていますと。で、僕は今日ずっと申し上げているのは、これは、文科官僚の責任は3割ぐらいなんですよ。それは財務省を説得しきれないという責任と、それから国民の支持を皆さんの代弁者として獲得しきっていないという責任はあるかもしれないけど、しかしそれはですね、国交省も、経済産業省も、総務省も、みんな頑張っているわけですよ。その中のプライオリティと、ある種の広い意味での政治力の勝負になっていると。予算をとるって言った瞬間からはね、もうきれいごとでないってことを言いたいわけ。さらに言えば、文科省はすごくよく頑張っていて、なぜならばですね、科学技術の分野を応援しようって言う政治家は5人ぐらいいたのがいまや3人ぐらいに減っているわけですよね。国交省には応援団が何人ついているかっていうと400人とか500人いるわけですよ。720分のですよ。その割にはパフォーマンスは極めて高いっていうのは、まず、だからこういうのは要するに役人と、現場の関係者と、それを束ねるいわゆるコミュニティーの、これは学術会議になるんかもしれないし分子生物学会になるのかもしれないけど、それのトータルの政治力っていうかね、要するにもっと言うと国民の支持を獲得するチームとしてこの分野が、公共事業に対して弱いという話なんです。私はコンクリートから人へと言って、研究費を増やし、科研費を増やしたけど、結局、いまや議員でなくなってきているわけで、その話を言いにきたわけじゃないんだけど、だけど、そらそうですよ。研究強化法とかの話だって、超党派の部会をやったってですね、もう一桁しか来ないんです。国会議員は。だけど一方でTPP反対のですね、農業問題だったらですね、直ちに議員会館が満員になると。やっぱこの状況をまずちゃんと直視しないと、提言は、少なくとも予算のことについては生かされません。それから労働者契約法については今回研究開発強化法で僕の置き土産ですけれども、なんとか議員立法で改正すると思います。10年、5年を10年に。だけど、これだってですね、結局いわゆる研究者の働き方の特殊性について、やっぱ社会がそれはnegligible、smallだよね、っていう議論になっちゃったってことなんですよ。
宮野
宮川先生。
宮川
よろしいですか。今すずかんさんがおっしゃったことって、本当に日本の研究者コミュニティーにものすごく足りないと思うんですね。いわゆるそのちゃんとその政治家の方々とかにどれだけ基礎研究が重要なのかとか、そういうのをしっかり、なんというんですかね、advocacyっていうんですかね、advocacy。それをやるっていうことを、全然しないですね。研究者コミュニティーで。その政治家の方々となんかお話ししているのはちょっとdirtyな感じの研究者だみたいな。
宮野
でもまたそれも研究者にじゃあドーンとやれ、ってこと?研究以外の…。
鈴木
やらなかったら、来ないっていうこと。
宮川
全員はやんなくていいんですよ。全員はやらなくてよくて、研究者コミュニティーとして、代表を出せばよくて、アメリカの神経科学のSociety for Neuroscienceは、advocacyに関することすごくやっていて、毎回、いつもNewsletterにadvocacyのこと書いています。政治家のコングレスに行ってこういう説明をしましたとか。そういう、それ関係のは必ず書いていますよ。
宮野
文科省の意見も、聞きたい。
斉藤
今のでちょっと参考なんですけど、私、オーストラリアのほうに、大使館に赴任していて、向こうで科学技術の担当をしていたことがあるんですけれども、向こうの研究者と国会議員の関係に非常にびっくりしたことがありまして、首都のキャンベラにいたんですけれども、ある日突然science meets parliamentという旗が首都のそこら中についてですね、何じゃこりゃと思っていろいろ調べてみたら、年に一回向こうの学術会議的組織が、首都に全国の研究者集めてきて、国会議員と一対一みたいに、交流する機会なんですね。まずは政策側がこういうふうに政策やっていますという大臣とシャドー大臣と両方出てきて発表した上で、研究者側もいろいろそういうことを、どういうふうに研究していますっていう説明して、さらにその出身の、なんというんですか、選挙区の研究者と、その選挙区の国会議員が、ペアを組んでですね、キャンベラにいる間は、国会議員の後に研究者がついていって、どういうふうに政策が決まるのかっていうのを、ずーっと見て回ると。逆に、自分のところに帰ると、国会議員が大学に行って、ああ、こういうふうに研究やっているんですかというのを見て回って、地元でこんないい研究やっているんですかっていうのも理解してもらうっていうのを、毎年ずっとやっているんですよね。それって、あ、すごいなと思って、日本は国会議員はおろか、役人とすらそういうこともやっていなくて、距離がものすごく遠いなと思っていてですね、お互いの理解のためにはすごくよいシステムなのかなというふうに見てました。
宮野
なるほど。例えば、ちょっとだけ戻るけど、その、提言があって、重点領域があって、それに従って競争的資金というかプロジェクトが来ますよね。で、競争的資金、運営費交付金が下がっているから競争的資金のプロダクトが大きくなっていますよね。それはイコール申請書が増えてますよね。イコール短期的な論文、論文になりやすい論文にみなさんも本当はもうちょっとはっちゃけたいけれども、論文になりやすいことをやりますよね。いいの?というかね。提言そうなっているよ。
鈴木
いや、だから、それはね、事例だけでいうと、少なくとも私のときは運営費交付金、V字回復したわけですよ。だけどそれについて共鳴も何にもなかったじゃないですか、ということなんですよ。
宮野
はは。それ、わりと先生はおっしゃるけど、僕、言ったよ、みたいなことを言いたい?
鈴木
いや、違う、違う。僕は…、提言。やっぱりね、トータルの分子生物学会のコミュニティーの5%はadvocacyに割かなかったら、それは無理です、っていうことです。それは、上の先生が3割引いて、若い人は1%で良いとか、そこはもうポートフォリオで決めてもらえば良いし、一番上の人は5割とか、それはいいんだけど、トータルのボリュームとしてね、そりゃ5%advocacyにならなかったら、それは、取れないという。少なくともね、政策プロセスの勉強をしてください。それは。
原山
アメリカの例なんですけれども、AAASっていうAmerican Association for Advancement of Scienceっていうのがあるんですが、それは、いろんな科学コミュニティーを集めているんですけれども、それ、もちろんそのサイエンスを広めるっていうadvancementっていうのもありますけれども、同時にlobbying活動もしているわけで、そこの中にやはりチームがあって、もうある種のprofessionalみたいなもんですが、元々研究者の人たちが何年間かそこでもって活躍して、実際実務をしながら学んでいきながらやっていくと。その中にAAASフェローっていうのがいて、いわゆる研究者が何年間か、そのためにやるっていうそれがある種の層を強めていく一つのツールなんです。そういうのもやはり、何らかの形で埋め込まれていかなくちゃいけないというのと、やはり、個人の人がlobbyingするのはなかなか難しいんですよ。だから組織化しなくちゃいけないし、それでもってそのお互いに、自分の研究者人生の何%の時間っていうのが、これに費やすと、それはコミュニティーのためにやるわけであって、それはまた次に続く人がいてっていう、その共通財産として活動することが必要であって、個人ベースのボランティアであったら絶対つながんない、続かない話だし、個人ベースのことしか留まんない。どれをどういうふうに組織化するかっていうのは、すごく問題だと思うんです。それから、一つ反省事項っていうか、総合科学技術会議の事務局って大体100人規模の事務局で、そこには関連省庁から人を出していただいていて、本当のproperの人って数人しかいないんですね。中にもう一つのカテゴリーっていうのが、研究者。大学から、またその国研からの方が5、6人いて、それから企業からも5、6人いますと。その趣旨っていうのは、それぞれの分野の方達に来ていただくことによって、事務局機能を高める、まさにイノベーションの話でいえば企業のこともわかる人が入っていなきゃいけないし、研究開発法人、いわゆる大学の人が必要だと。そういう意味で、来ていただいているんですが、大体、准教授クラスの方です。私、すごく申し訳ないと思っていたのが、その方達をフルに使い切っていなかったというのが、これまでの反省で、今、少し方向性を変えていて、彼らの持ち味である研究の現場を知っているという、またその准教授くらいですと、本当に中堅だから、何が大変だってことを重々承知した上でもって、その人たちの力っていうものをうまく反映する形に使いたいなと思っています。ですので、このチャンネルっていうのはもうちょっと幅を広げたいと思っているし、ちょっと循環っていうかたちでもって大学から何年かここに入っていただいて、on site trainingになるんですけれども、体験していただいて、わかった上でもって大学に入って、戻って、大学の戦略の作り方もこっちの、相手の手を分かった上でやるのと、なんとなく想像でやるのとは全然違ってくると思うんですね。そういう人を少しずつ増やしていきたいなと思っております。
鈴木
誤解なく申し上げておくと、advocacyっていうのは対政治家だけじゃないんですね。対メディアとかね、対社会。特に科学技術政策の場合はそっちのほうが大ことです。もう、政治家はちょっと当分の間科学技術政策に理解力のある政治家は選ばれないので、この国のシステムで言うと。ただ、政治家は中身わからなくても、新聞の一面とかテレビでの露出分数が増えれば、それは必ず、これは日本の、私は政策形成過程論の専門家として申し上げますけど、訳わかんなくても、つけます。あるいは…、だからすごくわかりやすくて、ノーベル賞の人がくればですね、みんな握手しにくるんですよ。そのかわり、握手、一緒に写真とってくれればですね、ノーベル賞の人が、もうそうすれば政治家はそれで絶対つけるので。それから、案外大事なことはですね、政治家の多くはですね、なんとか大学教授って、ものすごい尊敬していますね。その人と握手できたっていうのは、ものすごい嬉しいことなんですよ。そういうバリューをよく理解していただいてですね。だから、advocacyっていうのは、政治家(だけ)じゃないっていうことを。
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