【帰ってきた】ガチ議論
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研究者の声はどうすれば届くのか?

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自民党の河野太郎議員の一連の活動が研究者の間で話題になっています。研究者が自らの所属する研究機関や文部科学省に対していくら意見を述べても全く変わらなかった慣行が、議員の一声で実効的なアクションとして私たちの研究環境を改善したわけです[1, 2]。研究機関のローカルルール問題は、このガチ議論でも、そしてもっと古くから様々な場で研究者が訴えてきましたが、研究費の不正使用などの問題が起こる度に肥大化し、研究環境は悪化の一途をたどってきました。研究者の負担を増やす変化については誰も問題視しなかったわけです。今回の教訓は、文科省は国会議員の意見に対しては速やかに対応するということでしょう。

河野議員は科学技術行政については文科省不要論を出されていますが、一方で今後は内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が科学技術政策を主導すべきとも主張されています[3]。内閣府といえば、つい最近、科学的にはナンセンスな予備的成果を企業と共に社会にアピールするという出来事が批判的に報道され、ImPACTは本当にサイエンスに基づいた事業なのかが話題になりました[4, 5]。上記の五月祭イベントでも筋悪の研究への集中投資の例としてやり玉に挙がっていたようです。

最近では大学を再編成し、「役に立つ」大学を目指そうという動きも活発で、地方ではそうした試みが具体的にはじまる兆しがあります。このままではアカデミアとしての大学はますます規模が縮小しそうです[6, 7, 8]。我が国における基礎研究力の低下は様々な場で可視化、指摘されていますが、これまでの政策の問題点を振り返る試みは殆ど見当たりません[9,10]。科学研究衰退に対する処方箋も「オープンイノベーション」に代表されるキーワード先行で具体性に欠けます。そもそも基礎研究力の低下が政府にどの程度深刻に受け止められているかは定かではありません。

こうした最近の一連の変化を見ると、研究者の存在感が感じられません。科学研究は研究者がいなければできませんが、その枠組みや方向性の決定において、研究者の最大公約数的な意見を反映する仕組みはないようです。五月祭イベントのレポートのタイトルも「大学研究の現場から声をあげよ」です。

そもそも、科学者の意見を代表する組織はあるのでしょうか?

日本学術会議は公的に承認されている唯一の科学者を代表する組織です。しかしながら、Webサイトをご覧いただきたいのですが、ガチ議論で繰り返し表れてきたトピックとは関心の方向が違うようです。日本学術会議には若手アカデミーという組織があるのですが、若手研究者のみなさまでご存知の方はどのくらいいらっしゃるでしょう。旧ガチ議論で文科省の斉藤さんから助言がありましたが、研究環境を改善するためには「研究者の声」が散発的にあるだけでは駄目で、これを届け、政策につなげる仕組みが必要です。ノーベル賞受賞者の声で変わらないことが、掲示板の議論で変わるわけがありません。現状は「科学顧問」的な立場の科学者も、科学者を代表してと言うよりはむしろ個人の考えを述べる傾向が強く、肝腎なところで影響力が発揮できていないようにも見えます。もっと連携する仕組みが必要です。

科学者の意見を代表するといえば、Researchmapは個々の研究者の「名刺」として機能を充実させており、ジャンルを超えた研究者の場として存在感を増しています。研究者の声はResearchmapと連携することにより集められないでしょうか。誰がどんなアンケートを作るのかという問題が生じそうですが、相応しい人を探すという方向ではなく、「私が日本版AAAS」くらいの気持ちでボランタリーに始めてみてはいかがでしょうか?軌道修正はこの掲示板でも議論できます。楽観的ですが、うまくいかなければ、その経験を活かしてどんどんプレイヤーが交代すれば良いのではないでしょうか。みなさまのご意見をお待ちしております。

田中 智之

1. 河野太郎公式サイト:「お花見中の研究者の皆様へ」
https://www.taro.org
2. 河野太郎・瀧本哲史対談「大学研究の現場から声を上げよ」五月祭イベントレポート
https://lab-on.jp/article/26
3. 文科省国立大「現役出向」241人リスト#3
http://bunshun.jp/articles/-/2254
4. チョコで脳の若返り?大いに疑問な予備実験での記者会見
https://news.yahoo.co.jp/byline/takumamasako/20170201-00067091/
5. 日本の科学はここまで墜ちた!?明示のチョコ若返り宣伝に見る”お墨付き”効果
http://www.foocom.net/column/editor/15801/
6. 私大振興、国公立の枠越えた協力提言 文科省有識者会議
http://www.sankei.com/life/news/170425/lif1704250041-n1.html
7. 地方大学で即戦力育成=地元経済人を登用-安倍首相表明
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017053101132&g=soc
8. 「スクラップ&ビルドを」大学改革を議論、経済財政諮問会議
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/523892/
9. 日本の科学研究はこの10年間で失速していて、科学界のエリートとしての地位が脅かされていることが、Nature Index 2017日本版から明らかに
http://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8622
10. 被引用多い論文数、国別10位に後退 科技白書で指摘
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG02H17_S7A600C1CR0000/

上記の意見は、筆者個人のものであり、その所属とは無関係です。また、ガチ議論スタッフの意見を代表するものでもありません。

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