【帰ってきた】ガチ議論
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しんがり研究

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JST戦略創造研究推進事業の中で、最も成功したと評価されているのは「さきがけ」であろう。先頭を切って敵に突進する勇者である「さきがけ」は、まさに若い研究者の研究助成にぴったりのネーミングである。しかし、もちろん、戦(いくさ)はさきがけ武者だけでは成り立たない。そこでERATO, CRESTが戦闘部隊の本隊として存在するのであるが、実はこれだけでは大事な要素が欠けているのだ。そう、殿(しんがり)である。

殿(しんがり)とは、後退する軍の中で最後尾を担当する部隊を指す。敵の追撃を阻止し、本隊の後退を掩護することが目的の部隊である。限られた戦力で敵の追撃を食い止めなければならない最も危険な任務であるため、古来より、最も武芸・人格に優れた武将が務める大役とされてきた。軍隊には無くてはならない存在だ。現代の研究者社会にも、さきがけ同様、しんがりが必要ではないだろうか。

JSTさきがけは、40歳くらいまでの独立前か、独立直後の個人研究を援助する。期間は3年間、予算規模は年あたり千数百万である。一方、JSTしんがりは、期間、規模はさきがけと同じ。違うのは年齢制限が60歳以上という事だけ。

大学の教官、特に教授になると、「教育の義務、組織のマネージメント、評価、学会の仕事、などなどが山のようにあり、研究の時間がほとんど無い」という。また、大きな研究グループの長になっても、研究費の調達と多数いる研究員の指導に神経をすり減らす。実際、ほとんどの先生はいつも忙しくしており、かわいそうなほどである。彼らが決まって懐かしそうに話すのは、100%の時間を研究に使えたPD大学院生やPD時代の事だ。「PDをもう一度やりたい」「PDが一番良い時代だった」と飲み会で話すのを何度も聞いたことがある。よろしい、夢をかなえましょう、というのが「JSTしんがり」である。

実際、JSTしんがりは夢のような制度だ。応募者は60歳以上の教授、研究部長など。彼らは、自分で研究がしたくて、時間が欲しくてたまらない(はず)。研究人生の最後に、長年温めてきた最高のアイデアを試してみたくて仕方がない(はず)。しかし、日頃は忙しく、それに集中することができないで悩んでいる(はず)。だから、彼らを雑務から解放し、さきがけ研究者の様な立場に戻して挙げよう。当然、教授も部長もやめてもらうので、教育の義務もマネージメントも一切なし。一研究者として100%の時間を使う夢のような日々が待っているのだ。こんな素晴らしいことがあるだろうか?

さきがけ研究者は独創性を求められるが、それだけを追求すると、期間中に成功できない危険もあり、そうそうぶっ飛んだことはできない。ある程度安全運転せざるを得ない。しかし、しんがりはそんなことに悩む必要はない。人生最後の大ばくちに心おきなく挑戦できる。誰もやりたがらないような、誰も信用しないような研究。でも当たれば超大あたりの研究こそがしんがり研究の真髄であり、それが競争的な環境における研究の多様性を保証するのである。まさに、殿軍そのものだ。

しんがり研究は、3年ごとの再審査さえ通れば、自分で研究ができる限り更新可能。知力と体力の続く限りいつまでもできる。唯一できないのは、大きなグループを率いてやることだけ。グループを率いてやるような研究は、もう出来上がっているのだから、誰に任せても問題なし。自分がいなくても大丈夫。ノーベル賞の対象となった研究の多くは、大グループの親分としてでは無く、若い時になされたものであることは、言うまでも無い。

と言うわけで、60歳過ぎてもアイデアがあり研究者魂にあふれた科学者であれば、必ず「しんがり」に応募するはずである。では、そのガッツの無い人達は、、、う~ん、早くやめてもらっても、特に問題無いと言うか・・・・・

text by「元さきがけ研究者」

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“しんがり研究” への38件のフィードバック

  1. 近藤滋 より:

    それは、とても面白いです。しんがりとしての重要な働き方のひとつですね。

  2. 在米高学歴ニート予備軍 より:

    このコンセプトを実現するのであれば、国内でなく東南アジアなどの経済力は向上してきているが最先端のサイエンスにはまだ距離のある国でラボを開き、その国の未来を担う優秀な学生たちと一緒に仕事をしていただきたい。もちろん、教授も部長も辞めていただいた上で。研究費はJSTと滞在先の国で折半とか。ただ、研究インフラの確立に労力をとられる可能性があるので、それを支援するオフィサーは同時に派遣する必要があるかもしれませんね。

  3. 山形方人 より:

    むしろ、講座制の維持のために、そういう教育を行っているということが正解でしょう。米国などでは、講座制などなくても、教育は成立しています。教育と研究の分担をどうするか、という議論も大切です。私は、講座制の最大の問題は、それが「排他的」なシステムであるということだと思います。

    日本が、科学研究で世界のフロントランナーを目指す、イノベーティブな研究を推進するという仕組みを作っていく観点から言えば、講座制の発想や論理についての問題点を考慮した上で、「しんがり研究」のような方法の導入を議論するべきではないでしょうか。排他性を助長するような方法は、導入するべきではありません。

  4. FJ より:

    学部の授業を行うには(医学部ではとくに)講座制に成らざるを得ないです。そこに研究活動が付帯的にあるのでトップダウンの組織になってしまているのが現状だとおもいます。博士号を持つ者の研究活動に独立性は必要だとは思いますが、そうなると大学院教育の指導の問題が出てきます。講座制はしょうがないものだと思っています。しかし、実力を伴わない、もしくは病的に能力を失ってしまった人物を残しておくと、パワハラやら捏造問題の火種になるので退いていただきたい。しかし、なかなかその判定は難しいので研究提案と成果で判断するというのが妥当だと私は思いました。面接を導入することでゴーストライターのリスクを下げられるのではないでしょうか。
    なので、わたしも「しんがり」には反対ですが、一定年齢以上になると研究活動能力を判定し不合格の場合、退職まではいかないまでも研究室運営から退いて、学部教育などルーティンワークに専念していただくシステムが必要だと思います。
    個々で言う研究活動能力とは最新知識を問う物ではなく、新規性のある提案をし、結果を出せるとを指します。手を動かすことが無くなって最新技術に多少疎くなっても切り捨てられることはできないので、若者からのいじめもできないでしょう。

  5. 山形方人 より:

    全くそのとおりで、ですから、下の方で、私はこう主張しているのです。「結論として、私は、このような制度を大規模に設けても、一般論として役立つなものにはならないので、もっと別の方向からこういう人達をサポートする体制を作った方がよいのではないか、と主張したいと思います。」

    私は、宮川さんのテニュア・トラックの提言では、「講座制の発想や論理」についての問題点を指摘していますが、これも同じことです。

    つまり、こういう制度を作ることで、講座の准教授がそのまま教授となって「講座」を守っていくという人事が更に容易になってしまうという弊害があるのです。そんなことをやるのなら、実力あるしんがり研究者が、独立したラボを現役時代と同様に運営できるような仕組みを用意した方が、日本の研究システムの発展には役立つと思います。

  6. FJ より:

    政治力も大事ですが成果が出なければ続かないでしょう。学会賞をもらったりするには政治力は使えるかもしれませんが実験データは政治力ではどうにもなりませんよ。弟子のラボを繁栄さ成果をだせるマネージメントができている人物なら有用な人材だと思います。「しんがり」の提案ではどこかに居候する時点で政治力を活用できてしまうので同じことだと私は思います。
    「しんがり」に限らず、パーマネントな職にある推進力の無い者、無くした者をどう要職から退いてもらうかという事が重要なのではないでしょうか。

  7. 山形方人 より:

    自分の弟子のラボで世話になるというような仕組みを推奨するのは、好ましくないと思います。退官後にそういうラボを残すために、弟子のラボを自らの都合のよい場所で存続させるというようなやり方が蔓延します。例えば、現役時代に、自分の政治力を使って、弟子を昇進、出来レースをやって、そういうラボを予め作っておくというようなやり方です。こういうやり方が、日本の研究環境やコミュニティのあり方を如何に歪めているか、気づくべきでしょう。

  8. FJ より:

    研究三昧になりたいのであればポスドクになれば良いだけでは?弟子をちゃんと育てていれば身の置き場くらい確保できるはず。そういう先生いらっしゃいますよ。Cognitive test として利用する意外にメリットを感じません。

  9. 元さきがけ研究者 より:

    ですから、大ラボを維持するための苦労、大型研究費を連続して取得する苦労、学内のマネージメント、学会やシンポの主催、もろもろの審査審議会、たくさんの講義などなど全てから、解放される研究三昧の素晴らしい時間をあげましょうということなので、「研究費を取るな」などと言ってはおりませんのです。実際、私自身は偉大な業績を上げた人たちを、本当に尊敬していますし、その人たちが研究に集中したら、どんなにすごいだろうと、本当に思っています。

  10. 匿名中年研究者 より:

    一瞬ただのネタかと思いましたが、要はどの世代にどのぐらいの研究費を分配すれば良いかを議論する、ということでしょうか。

    常識的に考えて研究者としての能力のピークが引退間際という事はないでしょうから、研究者としての能力に応じた研究費の配分を目指すのであれば、このような制度を作って大御所に引退願うというのは効率的かもしれません。ただし、日本社会で、目上の人に研究費を取るなというのは大変言いにくい事ですし、審査部会でそういう事を口にすると、死ぬまで様々な圧力を受けるような気がします。

  11. 元さきがけ研究者 より:

    面接は、当然公開です。アイデアを話しても誰も真似しないであろう独創性の高いもの限定なので、公開しても問題なし。シニア研究者の真剣勝負のプレゼンは、若い人にとってもおおきに勉強になるでしょう。

  12. 生涯任期付きたろう より:

    なるほど、とにかく「しんがり」になってもらうことが肝心なのですね。

    2期6年は基本認め、3期にはコアな研究バカを残す、ぐらいが良さそうです。

    評価は4次面接ぐらいまでしてはいかがでしょうか?
    自分で頭と手を動かしている人は幾らでも語れます。

  13. 元さきがけ研究者 より:

    特別推進について調べてみました。
    現在生命系では21人が取得しています。
    70歳以上 2名
    65歳以上 4名
    60歳以上 7名
    55歳以上 3名
    55歳未満 5名
    これをどう考えるかです。
    ほとんどの人は、問答無用にすごい業績を持っていることは間違いないです。

  14. 元さきがけ研究者 より:

    しんがり研究者の論文は、必ず筆頭著者でなければならない。(co-first 不可)。
    しんがり研究者の採用、評価は45歳以下の研究者。

    この2つで大抵の問題はクリヤーできると思います。

  15. 生涯任期付きだろう より:

    大変意義が有ると思います。

    まず、若手も含め多くの研究者が「将来は俺もしんがりに応募する!」と思えるような魅力あるシステムにすることが重要だと考えます。(そうしないと誰も応募しない)。そのためには、”過度”の規制(兼任の”完全”禁止や、人件費に絶対使ってはいけない、インパクトファクター至上評価などなど)は禁物です(裏ルートができる)。そのため、「60歳以上の人は予算で雇える」など色々と小技を考える必要があります。

    色々と工夫すれば、およそ理念どおり運用されそうです。しかし、
    「表の役職は無いが裏からがっちりコントロール、ゴーストポスドクがデータを出してゴーストライトして業績は完璧、永遠に引かない”しんがり”」
    が1人でも現れると終りです。

    理念が骨抜きにならないよう設立・運営するための仕組みを考えると面白いです。

  16. 若手(B)研究者 より:

    若手のポジションがないというのに引退されたはずの先生が大型研究費を獲得していつまでも研究を続けておられのを見ると複雑な気分になる事もありますが、分野を作ったような先生がたくさんポスドクを抱えて仕事を出した方が成果は上がりやすいでしょうし、国際的にも目立つ研究成果を効率よく出す事ができ、日本の国際社会におけるプレゼンスは上がります。ですので、元気な老人研究者、大いに結構。「しんがり」では予算が足りないと思います。

    特別推進とかCRESTとか、引退間際の(定年退官された)先生方が取られている例が散見されると思いますが、重要なのはその総額です。実はたいした事ないのではないでしょうか。そういう人が全体の半分の予算を牛耳っていたら明らかにおかしいですが、全体の1%ぐらいであれば、むしろ50代研究者の良い目標になるかもしれません。

    ただ、そういった老人研究者。大いに結構なのですが、人材を育ててきたかどうか、そこだけは大型研究費の採択の際の判断基準として入れていただきたいものです。多くの若手研究者が育っているのであれば、老害にはなりません。逆に、どんな素晴らしい成果を上げていてもその研究室からろくな研究者を輩出していないような方には、ビタ一文貴重な税金を使ってもらいたくはありません。

  17. 元さきがけ研究者 より:

    極端な制度とは思いません。ほとんどの会社は、50代に一度定年を迎えその後も働く意志のある人は嘱託として再雇用されますから。それに、ほんとのところ、全く酷ではないと思いますよ。科学者が、科学者としての研究三昧に没頭できるのです。失うのは、政治的な力だけですし、逆に、より一層の尊敬を勝ち得るはずです。

  18. FJ より:

    しんがりと言う言葉になじみが無いにもかかわらず飛ばしてちゃんと読んおりませんでした。若手、中年、老年と区分けし、老年はcognitiveテストとして利用するということですね。私の周りには良きアドバイザー的な先生もいらっしゃるので酷な気もしてしまいます。一方、年のせいなのか思い込みの激しさから自信過剰な困った方もいらっしゃいます。これは、研究の世界のみならず自動車運転免許を筆頭に社会全体が抱えている問題ですね。半年に1回義務で行うcognitive testで一定のラインに達すると退職金や年金が減るシステムにして衰えてしまった方には早期退職を促すか、自ら社会に被った損失を穴埋めしていただくシステムをつくらねばならないと思いますね。
    研究の世界だけ極端な事をするべきではありませんし極端な例えでは受け入れてもらえないでしょう。社会全体として能力に見合わない権力を返納していただくシステムを作るべきです。きっと多くの方が賛同してくださるはずです。

  19. 元さきがけ研究者 より:

    FJさんは、提案の趣旨を逆に取っておられるかと思います。元記事の特に後半部分と、”あ”さん、”元CREST研究者”さんのコメントをご覧ください。
    ただ、政治とマネージメントで時間の動きの取れない元天才研究者達が、完全な自由を得れば、本当に凄いことをやってくれるのでは、と期待していることも事実です。

  20. 元CREST研究者 より:

    気づいてない人が多いようで驚きだが、元さきがけ研究者さんの案は単なる反語であろう。このしんがり研究に採択される研究者は、しんがり予算の何倍、何十倍もの予算を動かし、研究費・人事の審査・評価を年間50件はこなし、大型プロジェクトの策定も数人の仲間内でこなすような人たち。このような人たちをまとめて「しんがり研究」に丁重にいざない、その中だけで活動してもらい、速やかにご退出いただけないか、という話。国の科学推進の観点から考えると、ご退出してもらうのにこの程度の微々たる予算を使ってもその予算を越える効果が得られるだろうということ。そうでもしないとご退出いただけないであろうということ。

  21. FJ より:

    思いませんね。なので定年があるのでは?定年しても素晴らしい記憶力と体力の先生もいらっしゃるし、定年前でも議論をループさせてしまう方もいらっしゃいます。年齢ではなく何らかのcognitive test を導入した方が良さそうだとは思います。
    となれば、しんがり研究は実績のある若手を採用するよりもリスキーですね。
    上の者が下の者を育成して次世代に知識や技術をつなぐというのは職人の世界だけに限った話ではありません。若手と議論してアイディアを受け継いでいくべきです。ベテラン優遇は日本人には『観ておぼえろ』といい、外国では論理的に指導し技術流出した産業の二の舞ですよ。

  22. 元さきがけ研究者 より:

    数多おられる指揮官の頭が、どれもはっきりしていると思いますか?

  23. FJ より:

    60を過ぎた有能な研究者はお金もあるはずなので、雑務を捨てて勝手に実験すればいいだけの話では?博識な先生のアドバイスはすばらしいことは認めますが、実際に実験をしたいと仰られると、上げ膳据え膳につき合わされる下の者が必ず出てくるはず。頭がはっきりしていれば指揮官でいいではないですか?手を動かす必要性がわからない。趣味としてやりたいだけでしょ。

  24. 山形方人 より:

    実験系では、若い人達と同等な集中度と厳しい労働ができないという時点で、無駄だから、そういう制度は成り立たないと思います。意味があるのは、理論を中心にした分野かもしれませんが、理論系では、年配者の方が創造力が低くなるのは一般論としてあると思いますし、理論中心の場合、大きな研究費は必要ないのではと思います。結論として、私は、このような制度を大規模に設けても、一般論として役立つなものにはならないので、もっと別の方向からこういう人達をサポートする体制を作った方がよいのではないか、と主張したいと思います。

  25. 元さきがけ研究者 より:

    >邪推ですが・・・・・・・ちがうのかな?

    本当にサイエンスの能力が傑出した科学者が、マネージメントや政治に時間を使い、サイエンスができなくなるのを憂慮している、と言うのが第1です。
    同時に、最前線の科学者として闘い続けることが、「ビッググループのボスになる」よりも尊敬される状況を作ることが第2です。
    さらに、いつまでも引退しな、、、、、、、、、、(自粛)

  26. 元さきがけ研究者 より:

    >つまり、こういう人達が自らの手で実験をやろうというのは、60才以上になったら無理であって、他人の手が必要になります。

    他人の手が必要な人は、最初から対象外です。年金支給のための制度ではありません。

  27. 山形方人 より:

    >定年制をなくすのは、若手の雇用問題が解決してから
    この点については、基本的には賛同します。権力のある老人が、優先的に自分達のための制度を作るというのは容易に実行されるので注意が必要だと思います。

    分野にもよりますが、バイオ系の真の実験系の場合、一日15時間以上の実験、土日もなし。食事も不規則になります。更に時々泊まりこみ。これくらい実験して、始めて真の実験研究者といえるのではないでしょうか。体力的や身体機能的(老眼、肩こりなど)にも無理になります。60才以上の人に、こういう無茶な実験生活は無理であるということです。

    名なりを上げた研究者ですと、50才くらいから、実際の実験をほとんどしていないというケースが、バイオ系では多いです。したがって、具体的な実験の方法などわかっていないという研究者が多いです。会議、接待などにも関わる研究者になりますと、実験に集中して取り組むということもできなくなる。実験中に会議に行くと、忘れてしまったり、中途半端になってしまう。ラボで動こうにも、試薬の置き場所がわからない、機器の使い方がわからないなどで、ラボで働いている人からは、こういう人が実験をたまにやろうとすると迷惑になるので、やらないということになってしまうのです。実験をやらなくなって、5-10年も経つと、手法もガラリと替わってしまうのが、バイオ系では普通で、それくらいの期間、実験をやらないと、もうだめでしょう。

    つまり、こういう人達が自らの手で実験をやろうというのは、60才以上になったら無理であって、他人の手が必要になります。若手のように長時間働くわけでもなく、中途半端な時間を使って、他人に迷惑をかける人に実験をさせて、若手と同じような研究費を配分するのは、無駄という考えもできます。したがって、ポスドク、学生、テクニシャンなどの存在は、必要になるのです。

  28. あ  より:

    >60才を過ぎた研究者というのは、実験を実際にやる実行者としては全く機能しないと思います

    分野によると思うのですが、全く実験者として機能できない指導者が実験を正しく評価し論文を書くのでしょうか?研究者は実験者として全く機能しない状態でできるでしょうか?

    >大学院生の学位の期限、ポスドクの就職先、テクニシャンの職としての安定性などという問題
    40代の若手独立研究者でもいえますよね?
    なぜ60Overの方々だけそう思われますでしょうか?
    若手だろうと壮年研究者だろうとPIになってしまえば状況は変わらないと思います(たぶん)。

    今自分は30代ですが、上記3つをきっちり持っています。

    邪推ですが、JSTしんがりの意味は「プレゼンスを徐々に削ってゆく」ことにあるのではないでしょうか?
    ビッグネーム一辺倒の投資方式を(若手~壮年)循環型投資形態に変えていく「さきがけ」な投資方式の提案だと思いましたが…ちがうのかな?
    あと、定年制をなくすのは、若手の雇用問題が解決してからにしてほしいものです…

  29. 元さきがけ技術参事 八木健吉 より:

    さきがけ「生体分子の形と機能」の研究総括を努められた郷信広先生は、現在X線自由電子レーザーによる単分子タンパク質の構造解析に向けての理論研究をお一人で着々と行われています。実験研究がついてくると構造解析手法の革新になるよ、と仰っていました。まさに10-20年後に花が咲くかもしれない本当のさきがけ研究を自ら行われています。

  30. 山形方人 より:

    実験系の分野ですと、60才を過ぎた研究者というのは、実験を実際にやる実行者としては全く機能しないと思います。つまり、ポスドク、学生、テクニシャンなどの存在が必須になるでしょう。そうなると、例えば大学院生の学位の期限、ポスドクの就職先、テクニシャンの職としての安定性などという問題も生じてしまい、3年といった期限がリスクになってしまい、うまく機能しないと考えられます。したがって、「さきがけ」のような形態の研究は不可能ではないでしょうか。

    定年制をなくすという形で、自ら納得するまで研究できるような仕組みを構築していく方が優先されるべきで、その仕組みが整備されたところで、研究費の問題も考えればよいのではないでしょうか。

  31. 元さきがけ研究者 より:

    永野博さんは現政策研究大学院大学 非常勤講師
    http://www.grips.ac.jp/list/facultyinfo/nagano_hiroshi/
    であり、また、最近出版された
    「世界が競う次世代リーダーの養成」(近代科学社)
    の著者でもあります。

  32. 永野 博 より:

    このアイデアは実現した方がいい。コストパフォーマンスもとてもいいでしょうね。私も一度、さきがけ研究21の変型判として科学技術庁に説明したことがありますが(15年くらい前?)、その時は趣旨はわかるが、とりあえず予算も限られているので先ずは若手に回しましょうということで折れたことがあります。これが実現すると秀でた研究をする方は定年と関係なく仕事ができるということで、少子高齢化時代のファンディングの目玉としてとらえることができますね。前のコメントにあるように、当時、科技庁に説明した時も、審査は35歳までの人が行うという設計にしていました。応援したいです。

  33. 元さきがけ研究者 より:

    もちろんです。そういった雑務からの解放こそが、しんがり研究の真髄ですから。

  34. 元CREST研究者 より:

    しんがり研究者には、学会役職、各種研究費審査員、大型プロジェクトの策定に関する審議などの免除義務規程も加えるべき。日本学術会議の会員を5年以上行った研究者には無条件でしんがり研究者の権利を付与できるとなお良いだろう。しんがり研究者自身はもちろん、若手研究者、日本の研究コミュニティにとってもwin-win-winの関係になることが期待できる。

  35. 元さきがけ研究者 より:

    倍返しですよ

  36. 大和田常務 より:

    我々のような今の素晴らしい日本を作ってきた功労者世代に対する素晴らしい案ですね。

  37. 元さきがけ研究者 より:

    重複申請は、もちろん不可です。そもそも、自前の研究室を持つのでなく、どこかに居候、というスタイルの個人研究ですのでそんなにお金はいらないはず。総括アドバイザーは当然45歳以下。
    採択回数はの制限は必要ないと思います。ピペットを手放し、自分で論文を書かなくなった時がやめる時でしょう。
    一番大事な条件は「自分自身で研究。エフォート率90%以上。」です。兼職は認めません。

  38. より:

    科研費「老人研究A~S」ですね…採択回数2回まで・60才以上限定・重複申請不可。「JSTしんがり」だと重複可能で「富めるモノは富めてしまう」ので、科研費の方が…で、基盤研究枠を若手に譲る。ところで、審査委員はUnder40にさせてもらえないですか? そうすれば、若手イジメ的な制度も作りにくくなったりして、二度おいしいですよね?科研ではなくJSTしんがり場合は、総括&アドバイサーもUnder45で構成したら面白そう。

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