【帰ってきた】ガチ議論
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20130731b

研究不正問題3 公正局の立ち上げは可能か、本当に機能するのか?

ツイッターまとめ
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60

研究不正に対応するシステムとして 「公正局」の設立の必要性が叫ばれる一方で、それが本当に機能するのか、あるいは負の効果の方が大きいのでは、という危惧があります。このスレッドでは、 公正局について、おおざっぱにではなく、もっと突っ込んで具体的に議論します。

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“研究不正問題3 公正局の立ち上げは可能か、本当に機能するのか?” への60件のフィードバック

  1. Miwako Ozaki より:

    以下インラインでお答えしております。

    >私は、所属機関に丸投げしようと考えているのではなくて、疑義の受付や予備調査は公的機関とし、本調査の監督および指導をすれば良いと思っています。

    疑義受付を同じ組織内で受け付けた場合、申請者が充分に守られません。この受付は公正局(第3機関)のような当事者機関でないところが受けた方がよいと思います。

    >調査の為の人材やコストを担保するものが現在見当たりません。

    人材やコストは、調査の規模により公正局が算出その費用は当事者機関が持ちます(ここには強制力が必要です)。

    >データや研究試料に近い所で調査をするのが効率的です。今まで「調査委の○○教授の調査」というのは実際は、その下の現場レベルに精通した准教授、助教が動いて疑義の実証に当たっているわけで、こうした事を代替出来るレベルの人材をどう確保するのか?実際に日々実験していない人間をどうトレーニングするのでしょうか?

    この段階での調査は査察、監査のようなもので、何のバイアスもなく必要資料が回収できた方がよく、調査対象者の近くの研究者が行うべきものではないと思います。この人材は、外部から派遣された方がよいと思います。また、現役研究者である必要もないと思います(その人権費は上記の公正局試算分を当事者機関が支払います)。この人材教育にそれほどの時間を要しません(ど素人の研究者が調査するより外部人材を登用した方が無機質的にこなせます)。

    >先生が危惧されるように、このように研究不正を積極的に取り扱う人間は仲間から白眼視されます。

    研究者同士はこれらの調査に直接関わるのではなく、フォーカスが絞られた段階で研究者としての立場からの意見を述べるに留めることが好ましいと思います。

    >それが現実ではありますが、こうした現実を現場から変えて行く努力も必要だと思います。それが教育だと思います。

    努力は必要ですが、それにはかなりの時間を要します。強制力のない意識改革には、10年、20年単位の時間が必要と思われます。更に10年待った場合、日本の科学技術分野は、外部からみて実体のないものになります(メディアを利用し国内だけで素晴らしいと騒ぐことは可能ですが、国際標準にはのらないと思います)。

    >それは警察的行動だけでは無理だと思います。

    政治力、検察力、法曹に頼ったとしても科学者の目や判断なくして最終決定は下せないと思います。よって、学術界以外の業界に参画頂いても『〜だけ』での行動にはならないと思います。

  2. 池上 より:

    私は、所属機関に丸投げしようと考えているのではなくて、疑義の受付や予備調査は公的機関とし、本調査の監督および指導をすれば良いと思っています。調査の為の人材やコストを担保するものが現在見当たりません。データや研究試料に近い所で調査をするのが効率的です。今まで「調査委の○○教授の調査」というのは実際は、その下の現場レベルに精通した准教授、助教が動いて疑義の実証に当たっているわけで、こうした事を代替出来るレベルの人材をどう確保するのか?実際に日々実験していない人間をどうトレーニングするのでしょうか?私はかなり無理があると思います。先生が危惧されるように、このように研究不正を積極的に取り扱う人間は仲間から白眼視されます。それが現実ではありますが、こうした現実を現場から変えて行く努力も必要だと思います。それが教育だと思います。
    私も、実際に捏造した研究者と仕事をしており、その苦しさを知っております。先方で出たデータがこちらでは出せない。ですから、この現状は変えなければなりません。しかし、それは警察的行動だけでは無理だと思います。

  3. Miwako Ozaki より:

    上述に勿論賛成ですし、所属機関が対応できればそれが理想ですし、それに越したことはありません。しかし、それが難しい状況が続いたのではないでしょうか。2007-2008年から今日まで随分時間が経ちました。その間、誰も何も働きかけをしなかった訳ではないと思います。池上さんのおっしゃるような意見も早い時期からありました。皆さん、それぞれの組織のモラル(公的機関も含め)をある程度信じたのではないでしょうか。

    疑義の評価判定を果たして所属機関ができるでしょうか? 例えば大学役職者が、対策の必要はないと考え寧ろ問題を隠蔽する方向に走った場合、更には事実を捏造するために証拠隠滅を指示するような場合は、正しいものの声はかき消されます。これは極論をいっているのではなく、現実かなりの数起きているであろう、そして何ら改善する意思のない役職者が今尚その地位にあり続けている現実を申し上げております。

  4. 池上 より:

    仮に、日本版ORIに研究不正における疑義の検証機能を持たせるとして如何ほどの人数が必要か?これの試算はあるでしょうか?人材の供給はどうするのか?PMDAなどが参考になりそうですが、具体的なビジョンをどなたかお持ちでしたら伺いたいと思います。

  5. 池上 より:

    私は、2008年のシンポでも申し上げましたが、日本版ORIを設置するのであれば、教育啓蒙的機能を重視すべきだと思っています。疑義の評価判定は、所属機関が行い、ORIはそれに対する助言や人的支援等に留める。
    研究不正には、日々の研究活動における兆し(夜遅く1人で実験している、実験の歩留まりが著しく良い、データはいつもキレイに整形したもので生データで議論しない等)があると私は考えます。また、そうした人間は一度ではなく度々不正を行う傾向もあるように考えています。ですので、そう言った兆しを実証的にケーススタディから抽出して、ラボの足元で起きつつある不正の芽を摘むべく、助言・教育する機能、といったものがORIあるいはその他の公的機関に必要だと考えます。
    学術誌側もSDS-PAGE像の全体を要求する傾向にあります。やはり生データで丁寧な議論をラボで欠かすべきではありません。その作法をまず徹底する、そしてその為の環境(正当な研究評価・雑用の効率化等)を研究者・政策側が丁寧に検証・改善して行く、そう言った事から始めてゆくのが良いと私は考えています。

  6. Miwako Ozaki より:

    ライフの課長がどのような指摘をされたかはわかりませんが、ORIはそれほど大規模でなくともやり方によってはかなり効果が上がります。本来、裁判になる前に(早い時期に)、当事者機関や研究者を正しい方向に導く役割の方が重要と思っています。

    私の想定するORIは、関係機関に強制力をもって指示を出す場所であり、資料作成にかかる費用やマンパワーの多くは、各機関が捻出する仕組みの方が、当事者機関は、今後不正が起きないように対策を真剣に打ってくるようになると思います(裁判に勝ったとしてもできることなら、あまり前向きではない事案に費用と人材を割きたくないはずです)。

    個々の判断や個人力だけに頼るのではなく、権威をもってある一定の基準を提示する場所は必要と思います。そのために必要な組織の規模と人員、予算は現実的なものです。文科省がやる気になれば、官僚幹部の裁量で捻出できる予算額内です。

  7. 池上 より:

    2008年の若手教育シンポジウムでパネリストをしていた者です。2007年のシンポで日本版ORIの設置をフロアから提案したのですが、当時のライフサイエンス課長から裁判の問題を指摘されました。当時は東大工学部のT教授の裁判(RNAiの件)が進行中で、「東大は裁判で負けるだろう」と課長は懸念を示されておりました(実際には東大側の主張が認められた)。実際、所属機関が裁判の当事者としても、ORIが当該研究不正の評価を行うのであれば、公判に耐える資料を作成することになり、多くのコストが予想されます。現在ではこのコストは所属機関や関係学会が負っています。しかしORIは複数の案件を抱えることになるでしょうから、それに耐えうる組織でなければならないと予想します。実際、そのような組織が人的に可能かどうか?懸念があるのではないでしょうか?

  8. Miwako Ozaki より:

    久しぶりにこのサイトに入りましたが、議論が止まっているようですね。第一弾の区切りはついたかと思われますのでご報告いたします。

     J.Neurochemの図のご指摘を受け直ぐに理研に問い合わせをしましたが、当時脳センター所属の研究者や関係者の殆どは、現在理研におらず、ながらく関係者と連絡がつきませんでした。図作成担当者は、図作りのお手伝いで論文に貢献して頂き謝辞に名のある技官ですが、仮に図に手を加えた可能性があるとしても、図の見た目を綺麗にしたいと軽く考えたのだと推測します(本人の連絡先が解らず本人とはまだ直接連絡がとれていませんが)。これまでの状況を理研監査、コンプライアンス室に報告、理研ではなく第3者機関による公式調査報告をのぞむ旨も合わせ対応依頼を出しました。よって、本件に当事者が関わるのではなく、第3者から報告が上がり、その基準が全アカデミアに適応されることを希望します。ジャーナルへの問い合わせが必要な場合も当事者ではなく、第3者が行う方が好ましく、状況に応じ、情報公開できる体制が必要と考えます。関係者全員に図を操作したという自覚はないですが(恐らく担当者も)、故意と間違いが区別できず、判断基準も決められないのであれば、疑わしきは全面論文取り消しがスッキリした基準と言えます。基準を決めることは公正局の1つの大きな仕事と思いますので公正局の判断にお任せします。

     文科省よりタスクフォース中間報告が出されたものの第3機関設立を考えているようには見えません。学術界内での冷静な議論が難しいことは、今回の件で明らかになったと思います。そうならば、公正局は、1)学術界と文科省以外の機関に設置、2)その最高責任者は、学術界&官界以外(検察主導の方が寧ろ健全)を、政治主導による成長戦略実行国会で是非とも議論してもらいたいと思います。本来公正局が扱わなければならない案件は、科学者の行動規範の遵守、悪質な『事実の捏造』『研究妨害』の取り締まりと思っています。ここが改善されなければ、どのような提案も制度も問題解決に至らない可能性が高いと考えます。作図上の操作をどのように扱うかが次のステップに踏み込めない状況を作っているのであれば、まずは、論文として疑義がある案件は、撤回を原則とし、これを公正局の1つの基準とし、例えば、これまで年間1000万円以上の予算手当を受けている研究者の過去10年(或はデータ保存義務期間の5年)の論文サーベイを最初の仕事とし、その結果から基準を策定してはどうかと思います。

     また、今回の件から、巻込まれることを恐れ何も発言できなくなる研究者(議論の本質が止まってしまう。議論は議論と割り切る必要がある)、安直な解決をのぞみ、指針も出せない学術界と学術行政という状況を考え合わせると、是非とも今期国会で政治主導強制力による第3機関設置を実現してもらいたいものです。

  9. Shinichi Nakagawa より:

    <管理者より>
    Disqusの仕様ではReplyを含めたコメントを新着順に表示する事ができないので、議論の流れが見えにくくなっていますが、公式Twitterアカウント
    https://twitter.com/ScienceInJapan
    の方で、サイトに寄せられた新着コメントを随時紹介しています。手動なのでリアルタイムなアップデートではありませんが、ぜひご活用ください。

  10. Miwako Ozaki より:

    お忙しところご対応頂きありがとうございました。

  11. momonga26 より:

    申し訳ありません。各種設定をチェックしている時に、コメント欄のロックのアイコンを誤って押してしまっていたようです。現在は復旧していますので、よろしくお願いします。

    なお、不具合がまだ残っている可能性もあるので、コメントの文章、別に保存しておいていただけますでしょうか。不手際、お詫びいたします。

  12. Miwako Ozaki より:

    disqus_on74D9uQ77さんの投稿こちらに移しました。
    9 hours ago

    >何故実行しないのかも正式に理由を伺いたいです。

    指針等を実行しない不当さやその理由を文科省の国の機関や学振に尋ねても概して次のように答えます。

    「実行するかどうかは各研究機関の考えになります。実行しないのが不当だと思うなら該当研究機関に申し立ててください。」

    「ご意見は今後の業務の参考とさせていただきます。」

    「各研究機関の考えに基づき判断されますので、研究機関が問題ないと考えるなら○○省としても問題ないと考えます。」

    文科省、厚労省、総務省・・・、学振、JST、・・・どこでも同じで研究機関に丸投げして上がってきた結論を追認するだけです。最近もディオバンの癒着問題で金の流れの調査に対して国が何も協力せず、当事者に丸投げしてしまって真相究明が困難な様が毎日で報じられました。

    要するに国や資金配分機関は完全に各研究機関の任意性任せで、指針が守られなくても関与して改善を図るつもりは全くないというスタンスです。

    http://blog.goo.ne.jp/lemon-st

    尾崎さんがいうように私も文科省のガイドラインはまあまあ良い内容だと思います。研究機関がこのガイドラインを守っていればもう少し公正な調査が多かったと思います。

    しかし、指針にすぎず拘束力がないため、研究機関の任意性に任せると恣意的に扱うのも珍しくないのが現状だと思います。東北大I前総長事件やF医師の世界記録捏造事件もガイドラインを守って大学が調査していればここまで大きくならなかったと思います。

    http://blog.goo.ne.jp/lemon-st

    整理すると、(1)国や資金配分機関が各研究機関に丸投げし監督責任等を果さないこと、(2)研究機関がガイドラインや内部規定を恣意的に扱うこと、の二つが問題だと思います。

    「何故実行しないのかも正式に理由を伺いたい」という尾崎さんの質問に対して、文科省等はおそらく表向きには憲法で保障された大学の自治から行政権
    が内部自治に関与できないので任意性に任せるといったことを回答するでしょう。本当の理由は不正問題を扱っても役人にメリットがないから等何か扱いたくな
    い理由があるのかもしれません。

    国立大学が法人化して文科省としては天下り先ポストが増えたのでしょう。所管の研究機関を敵にまわしたなくないという理由があるかもしれません。東
    北大I前総長の捏造を隠蔽していた黒幕は文科省のキャリアだったY.K.前副学長で、北大総長並の高給、研究業績が皆無なのに流体研教授就任など公序良俗
    に反する厚遇が実在しました。

    文科省に限らず他省庁管轄の研究機関はキャリアの天下り先でしょうし、官学の癒着が原因かもしれません。井上事件が組織的に隠蔽された大きな原因の一つには確実にそれが存在します。

    研究機関も東北大I前総長事件や京都府立医大のディオバンのお手盛り予備調査など数々の恣意的調査を見ると、本音では不正を見逃してほしいと考えていると推測します。

    ガイドライン等が実行されない本当の理由は文科省等としては不正を扱いたくない理由があって問題を大学等に丸投げ、大学等も都合が悪いので恣意的にガイドラインや規定を扱う、文科省等はそれを盲目的に追認。そういう構造になっているからです。

    私は明らかに(1)(2)の問題があると思うので、拘束力のない規定にしたり、研究機関の任意性に任せるだけの対策にすると実効性が不十分だと思います。

  13. Miwako Ozaki より:

    ガチ議論スタッフの皆様、お忙しいと思いますが、<緊急>研究不正問題のまとめスレッド内で新規書き込みもreplyもできなくなっていますので対応の程宜しくお願いします。代わりにこちらにreplyします。

    disqus_on74D9uQ77さんが例をあげておられる各省や関係機関からの回答例、確かによく聞く文言です。判を捺したように同じ言葉が返ってきます。それでも敢て、ガチ議論より会合の場を設定頂き、文科省幹部審議官以上か科学技術学術政策局局長(少なくとも幹部でなければ駄目です)よりご説明を頂きたいと思います。その場には、文科大臣、政務官にもご同席を お願いしたく。安倍総理か麻生財務大臣ご自身のご参加でもよいかと思います(それくらい現政権の政策に関わることであり、この場に及んでも文部官僚の個人的都合が優先されるようでは非常に問題があります)。そこでの会話は記録に残し、公開をお願いします。

    その結果により、学術界以外からの強制力のもと公正局を設立しなければならないかどうかが明確になると思います。

    東北大元幹部黒幕のようなことは関東エリアの国立大学と私立大にもあります。残念ながら人材育成事業も随分悪用されてきたと思います。このような官学の関係 が、教育や研究開発の場が本来の姿を無くし、審査、評価も敢てねじ曲げる、他グループからユニークな業績がでそうな場合は、事実を捏造してまで潰していく ということが起きるのです。それを容認してよい訳がありません。高等教育も科学技術も国の将来の根幹に関わることです。

  14. Miwako Ozaki より:

    ご教示の程ありがとうございます。

  15. Miwako Ozaki より:

    FBの方にご連絡頂いているのですか。気づきませんでした。

  16. Satoshi Tanaka より:

    SFさんに助けていただいたように、こうした募集要項は人事で見られます。例をあげるとその機関だけをこの場であげつらうことになるかなと考え、尾崎様のFBの方に個別にメールいたしました(多分、「その他」の方に仕分けられてしまっているでしょうから、お気づきではなかったかも知れません)。ご容赦ください。福井大学もかなり話題になったことを記憶しております。

  17. SF より:

    Tanakaさんではありませんが,代わって回答してみます。
    グラントではなく,教員公募の募集要項のことではないでしょうか?
    例えば,以下の福井大学のテニュアトラック教員には,Nature, cellなどが講師昇任に必須との記載があります。こういうことを公然と書くこと自体が福井大学の見識のなさを示していると思いますし,バイオ系分野のゆがみを表していると感じます。
    http://www.jst.go.jp/tenure/koubo/15_fukui_01ja.pdf

  18. Miwako Ozaki より:

    Tanakaさん 以下をご教示お願いできますでしょうか。

    「Cell, Nature , Science論文を複数もち、継続して大型研究費を獲得していることが要件」という募集要項のグラントを教えて頂けないでしょうか。

  19. [...] れまでにも参照させていただいておりますが、その中でも「研究不正問題3 公正局の立ち上げは可能か、本当に機能するのか?」では、「公正局」の設立について具体的な議論が交わさ [...]

  20. Miwako Ozaki より:

    学会の理事選出は、特に変える必要はないのではないでしょうか。それぞれの学会の事情もあるかと思います。日本学術会議、会員は別であると思います。

    評価に問題があるという点は、私もそう思います。また、私は、公正局を設立することが学問の独立を妨げることになるとは思っていませんので(これは、全く別のことです)、公正局は必要と思っています。

    武市先生との議論は、これを日本学術会議が担う事ができるかどうかという点です。私はやはり、現状を考えると学術界の中においた場合は、機能しないと思っています。

    ちなみに、「Cell, Nature , Science論文を複数もち、継続して大型研究費を獲得していることが要件」という募集要項のグラントを教えて頂けないでしょうか。

  21. Satoshi Tanaka より:

    生命科学領域の学会の理事の選出方法は、現在の当該分野における研究者の評価を反映することから、現在の評価基準そのものがが生み出す問題点を解決することが難しいのではないかと感じます。中川先生が率直に自らの認識の変化を述べていらっしゃることに感銘を受けましたが、早くに成果をあげ継続して恵まれた研究環境にある研究者がこの問題を適切に認識することはなかなか難しいことです。一方で、一線を越えてポジションを得た研究者にはその自覚があるので、相当手強い抵抗があることは予想できます。一部の学会で明るみになりつつあるように、トップにはこの二種類の研究者しかいないというコミュニティもあるかもしれません。

    私は研究不正の問題は、研究者の評価が丁寧にできていないことに発端があると見ています。本来研究者は、丁寧に新規性にたどり着く誠実な研究と、そうでない、見かけと結論は派手だが危なっかしい研究を区別することができます。しかしながら、現在そうした評価に時間のかかる方法が採用されることは、今や人事においてですら稀なことだと思います。雑誌の格で研究の水準を決定することは評価する方にとっては手間がかかりませんし、数値化も簡単で、非科学者の方への説明もスムースです。たくさん研究費を取る研究者は良い研究者だから研究費を与えるというのは自家中毒的ですが、実際に一つの基準となっています。

    多忙になった研究者がピアレビューに対して時間をかけなくなった(あるいはかけられない環境に変化した)ことと、研究費配分をどういう基準で実施するのが適当かという評価軸をもたないfunding agencyという両方の要因が、現在の研究費配分の矛盾点として表出しているのではないかと思います。

    「ここで二桁のIFの雑誌が欲しいな」という研究者間のつぶやきや、「Cell, Nature , Science論文を複数もち、継続して大型研究費を獲得していることが要件」という募集要項(実在します)に見られるよう歪な生命科学領域を是正するための提言が必要だと思います。

    ここで罰則を含めた後始末に拘ると、醜い泥沼化は避けられません。私は将来の健全な研究環境を取り戻すための公正局的存在が必要だと考えており、そこでは研究不正の監視に加えて研究者評価の見直しが必須だと思います。

  22. 武市正人 より:

    Ozaki 様

    学術会議の立ち位置については、ご指摘のようなところがあることは私も感じております。2005年に会員選考制度等の改革が行われました。私はその前の第19期に会員を務めましたが、新制度による第20期にも会員に選出されました。本来は6年任期なのですが、半数改選の初期状態を作るために、第20期の3年任期で任命され、さらに第21期-第22期の会員として選考されて6年の任期を務めています。長きにわたる会員としての活動の中で、科学界における「科学の独立性」を都合よく使ったことはありません。むしろ、「日本学術会議の政治からの独立性」を通じて、科学界が(政治や権力から)独立した研究活動を進めるようにと考えてきました。最近の学術界では、社会への責任についての認識は、(少なくとも、表向きは)高まっていると思います。

    しかし、科学界を代表する学術会議においても、以前とは異なる印象を受けることはあります。新制度によるものかどうか、今は分かりません。第19期に会員となったときとは違う感じがしますが、これは、自らの経験のなかに置くべきことかも知れないからです。ただ、たとえば、最近の会長談話「真に成果の出る日本版NIH構築のために」(2013年6月21日)
    http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-d3.pdf
    の前文にある「日本学術会議は、この戦略に共感し」というのは、政権からの独立性ということから見れば、会長個人の見識を表明したものだとせざるを得ないと感じています。

    日本学術会議の健全性委員会が科学界や社会から信頼されるように運営されることを私も望んでいます。学術会議の会議は原則として、公開されています。
    http://www.scj.go.jp/ja/member/plan/index.html
    傍聴ですので、現地に足を運ぶ必要があります。
    なお、一般からの意見を聞く機会も作るよう、関係者にも伝えたいと思います。

    学術会議の関係者にも、問題意識を共有する方々は多いと考えています。これまでにも、意見を交換している方々やアドバイスをいただいている先輩の先生方もいらっしゃいます。「公正局」のあり方をきっかけに、議論できる機会がえられたことに感謝いたします。

    このサイトの本来の目的から逸脱しないよう留意して、今後も意見を交換させていただきます。

  23. Miwako Ozaki より:

    日本学術会議や日本の科学者が「政府からの独立性」を固く意識して活動し、それが政治との軋轢となった時代は過去のことかと思います。残念ながら、今の日本の学術界からそのような気概のある精神を感じ取ることはできません。『大学の自治』『学問の独立性』というワードが都合良く使われることはあっても、そこには責任や一定の緊張感も付随しているのだという言葉の重さが伝わってきません。また、現状、科学の独立性が保たれているようにも見えません。

    日本学術会議でかつて公正局の必要性が議論されたこともあったと聞いています。しかし、毎回かき消され、議論の蓄積もないという状況のように見えます。これは何故でしょうか。

    先生がおっしゃるように、日本学術会議に公正局としての機能を持たせるのであれば、まずは、学術会議が信用を得ることが必要ということに同感です。日本には物事を決定した責任者が責任を取るという文化、習慣が決定的に欠落していると思います。責任を問われる側とは、先ずは下のものではなく決定権のあった側です。責任を問うということは、批判とは全く別ものと思っております。本来、ここは(責任あるもの同士は)実名で議論してもよいくらいと思っております。

    先生の高い志同様の志を、「科学研究における健全性の向上に関する検討委員会」の委員の皆様方にも期待したいと思います。できれば議論は公開で、一般からも意見できるような体制でお願いしたいと思います。

  24. 武市正人 より:

    「公正局」の必要性、また、そのような機関の設置の可能性に関する議論を拝見させていただいています。このサイトで、分子生物学に関わる研究不正の問題が真摯に議論される背景も理解したつもりです。米国ORIのことも知りましたが、どのような学術分野にも積極的、強制的に調査することのできる独立した「公正局」のことの議論については、明確な意見を持っていません。

    文科省や内閣府といった組織がそのような「独立した」機能を果たせるのかどうか、ということについても議論の余地があるでしょう。「公正局」がいかにして独立して公正な判断ができるか、また、その調査機能を有することができるか、そのような法的な裏付けをどのようにするのか、等々。

    一方で、学術界では、本来の研究活動のあり方として、政治や権力からの独立性を確保すべきであるという基本的な立場があります。言いかえれば、「公正局」を学術界の外に置いて中立的で公正で(強制力のある)機関を設置することの是非も検討すべきでしょう。学術界の自律性が問われることになるからです。

    これまでの議論でも触れられていますが、日本学術会議の役割にも関わると思います。学術会議は内閣府に置かれていますが、「政府から独立して職務を行う『特別の機関』」として位置づけられています。
    http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html
    60余年の長い歴史の中では、さまざまなことがありましたが、わが国の科学者は「政府からの独立性」を固く意識して活動してきました。ときにはそれが政治との軋轢となったこともあったといえます。

    このような存在である学術会議の理念からすれば、研究者の所属する大学等の研究組織が研究不正の調査にあたるのではなく、科学者コミュニティの代表としての学術会議が自律的に「公正局」の機能を果たすべきだといえるでしょう。学術の独立性を確保するという点からも、望ましいと考えられます。しかし、そのような機能を果たすためには、まず、学術会議が研究倫理に関して信頼される存在である必要があります。直接的に「公正局」を意図したものではないでしょうが、日本学術会議では、2013年7月26日に「科学研究における健全性の向上に関する検討委員会」を設置して活動を開始しており、構成員、設置の主旨が公開されています。
    http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kenzensei/kenzensei.html
    また、これに関する会長談話が発せられています。
    http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-d4.pdf

    私は、現在、学術会議の会員ですが、この委員会には関与しておりません。委員は、会員210名による総会から意見の表出等を委任した16名からなる幹事会のメンバーです。

    この委員会の審議が学術界で信頼され尊重されるためには、科学者・研究者の行動に関する議論にあたって、委員は自ら研究活動の状況を公開した上で意見を述べるべきでしょう。
    http://takeichimasato.wordpress.com/2013/08/16/科学者倫理に思うこと/
    http://takeichimasato.wordpress.com/2013/08/23/研究費に思うこと/

    私は、2011年10月から1年半、科学者コミュニティのあり方を担当する副会長を務めていました。しかし、その間には、研究倫理に関わる課題に取り組むことはできませんでした。その反省からも、自ら研究倫理について学びながら、考えを発信しつつ行動を通じて学術界に貢献したいと思っています。

  25. Miwako Ozaki より:

    Tanakaさんのご懸念はよく理解できます。できるものなら、科学技術分野全体のことを考えることができる元研究者にイニシアティブを取って頂くにこしたことはないのですが、現状厳しいと思っています。被疑者を辞めさせて終わり、謝って終わりではないでしょうから。

    シンガポール宣言の中でも、捏造等は科学者の行動規範の後ろの方に来ます。諸々の科学者としての行動規範があり、別には教育者としての行動規範があり、それぞれが何処かで破綻した結果としての捏造であるため、実はかなり根が深いと思っています。私は、寧ろ、公正局には、論文という形あるものではなく、直接間接によるデータ捏造強要、研究妨害や妨害を目的とした事実の捏造など論文捏造に至る前の段階を取り上げて欲しいと思っているくらいです(これは単に倫理教育すればよいということではありません。双方が納得するまでの責任追及か解決までが必要と思っています)。

    対立構造をつくる前に解決できることは多いのですが、権力のある側が、敢て隠す、取り合わない、恫喝するといったことにより状況をより悪化していく過程を何度かみました。改善すればよいだけなのにと思うこともよくあります。こういった行動規範の常識のような部分を扱うには、出身業界関係なく公正さの感覚をもち、専門外でもその説明の本質を理解できる理解力ある方が相応しいと思っています(研究者は良い意味でも悪い意味でも、大先生であっても若干視野が狭いと感じます)。

    前述のような方は文系にもいらっしゃいますが、今回は、できれば理系で、産業界か検察か法曹界あたりの方で、その下には、元研究者も含む専門家を配置し、合議のもと運営していき、定期的に評価に曝されるというのが効果が上がると思います(研究者の常識が一般常識ではないことも、またその逆も明らかになると思います)。更に、公正局の評価者は、公正局や扱い案件の利害関係者でないヒトである必要があります。このループが回りはじめたら(書面上の作文だけでなく、実行されたら)、厳しいながらも健全になると思います。これは、威圧とは質の異なるものです。

    元研究者の専任人材の条件は、以前にTanakaさんが記述された以下のような項目を満たす方というのは悪くないと思います。彼等が公正局メンバに加わり、研究(者)とはどういうものか、その実状と研究者独特の価値観や判断基準を代弁されたらよいと思います。

    引用:
    1)公正局のトップは以下の条件を満たす人物から選ぶ。
    ・科学研究の健全な発展のために尽力できる。
    ・元研究者であり、現在進行中の研究費申請には関わっていない。また、着任後は永久に研究費申請資格を失うことに同意している。
    ・PIとして研究グループをリードした経験を持つ。
    ・大型研究費の分担、あるいは公募班等の経験を持ち、大型研究班の実状をある程度知っている。
    ・55歳くらいまで。定年退職時の異動は不可。

    更に公正局には、2)調査権限を与えても罰則権限を与えず、活動内容として、項目4)の大型研究費に対するピアレビューを評価し、不適切な評価者を排除する役割も併せ持つ、も入れられたらよいと思います(不正の背景をたどっていき、背景を素直に理解し、行動を起こせば、自然とこの項目は入ってくると思いますが)。

  26. Satoshi Tanaka より:

    公正局の設置の是非について研究者に選択権がない可能性が高いと考え、研究者側からの要望という意味で公正局の中身について以前に提案いたしました。リーダーは公正な人物+適切な評価体制があれば良いというご意見が続いておりますが、研究者側の要望としてそれで良いのか私は疑問です。了承いただけるかどうかはさておき、研究者からはトップは元研究者(現役は×です)という要望を出した方が良いのではないでしょうか。

    捏造問題は既に議論されているとおり、背景の事情は様々で、プレイヤーも若手研究者から大ボスに至るまで多様です。デビュー時は清廉な研究者が一線を越えるケースもあるでしょう。研究者ならではの動機を領域外の方が推測することは難しいと思います。公正局が研究者の倫理を高め、研究不正を抑止する上で機能するためには、研究者コミュニティから支持を受けていることが大事だと思います。これは実力者からお墨付きを得ているとか研究者サイドであるという意味ではなく、研究者が支持できるロジックを展開できる人物が相応しいということです。科学研究の発展において真に悪質な不正とはどういうものかという軸をもつ人物でなければ、相次ぐ内部告発やネット情報にのみ込まれてしまうかもしれません。

    相手が捏造研究者であれ、対立関係から生まれる成果は小さいと思います。「研究不正のメカニズムなどはどうでも良い、不正の摘発と処罰が重要」という考えであれば、研究者に忌み嫌われていても良いかも知れませんが、真相を解明し、有効な対策を打つ上では研究者コミュニティからの信頼が欠かせないと思います。

  27. Miwako Ozaki より:

    目的に向けてブレずにリーダシップを発揮できるのであれば、何界出でなければならないということはないと思います。『リーダーは研究のことを最低限は理解しており、モチベーションや使命感を持って公正さの感覚があるようなであればよいのでは。』は、私もそう思います。

    今、元研究者と官僚が難しいかもと思う理由は、これまでの長い間の慣習、しがらみ等で、リーダシップを発揮しにくくなる可能性が高いと思っています。また、公正さの感覚はあっても調整型の方では何も動かないと思っています。

    構成員は、予算規模によると思いますが、予算が沢山あるのであれば、研究経験者や文科省の技術士(以前にKuboさんが提案されていましたように)を実務担当専任として配置することに反対ではありません。しかし、専任は少人数で充分で、調査やトラブル調停の多くは外部委託とし(文科省に委託してもよいと思います)、公正局が担当しなければならないところは、調査が本当に公正に行われているか等のチェックや方向性を示す機能、要するにヘッドクオータ的機能があればよいのではと思っています。

    そして、その専任(トップも含め)は、公正局が機能するための評価項目毎に評価され、目標値に達しなかった場合は、他の方に代わって頂くといったヘッドクォータ運営のためのルールが必要と思っています。箱をつくり、単にヒトを配置するだけでなく、公正局機能を回していくためのシステムが必要です。この仕組みが公正局の機能を持たせつつも暴走をさせないバランスを取るのだと思います。小規模ならば直ぐにできます。

  28. tsuyomiyakawa より:

    「公正局」のリーダーが元研究者や官僚でなければならない、ということはない、というのはおっしゃるとおりだと思います。逆に、元研究者や官僚はなってはいけない、というルールも不必要ではないでしょうか。リーダーは研究のことを最低限は理解しており、モチベーションや使命感を持って公正さの感覚があるようなであればよいのでは。組織の中のフルタイムの人材として、研究経験のある人はいたほうがよいと思います。外部の委員のような方々だけでは十分な調査やガイドライン作製、トラブルの調停などを行うことは困難であるように思います。

  29. Miwako Ozaki より:

    言葉足らずですみません。上記役人の意味は、公務員としての役人という意味ではなく、当事者の可能性のある省庁関係者やファンディングエージェンシー関係者は不適切であろうという意味です。

  30. Miwako Ozaki より:

    以下よく纏まっていると思いますので紹介します。

    研究不正調査制度の問題点について
    http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/72f625b1e46de4d92031c4d78210ec4d

    設置すべきは米国ORIのような機関ではなく、どんな分野も客観的、積極的、強制的に調査できる第三者機関
    http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/c27703f2cf878fdb0792ce49c8661ed8

    更に、外部に対して何故、当事者ではなく、独立した機関が調査、説明した方がよいかを示す記事です。http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130711/250982/?mlm

    参考になる部分の抜粋:『事故を起こした当事者が語ると、どれだけ誠実に多くの情報を出したとしても「隠している」「嘘をついている」と疑われます。直接的な遺族・被害者でなくても感情的になる。「この人たちがやったんだな」と。

    『教訓の整理3  誰のために働いているかを明らかにし、その基本姿勢を貫くこと。』

    上記対応例には、科学技術分野にも共通していえる事があると思います。大学や関係機関は当事者に当たると思います。また、誰の為(何の為)に働いているかを明らかにし、基本姿勢を貫く(ぶれない)ためにも、最低限、公正局は独立に存在している必要があると思います。公正局リーダは、専門家を束ねる能力のある方であれば、本人が、元研究者や官僚でなければならないとは思いません。

  31. FJ より:

    先生の意見に同意します。新しい機関を作ってもシステムが出来上がっていなければ機能しません。新しい機関を作る目的はたいていの場合、人員を含めてシステムをリセットしたい場合です。新しい組織を作ると人員が増えるとともに新たな連携を構築しなければならなくなります。現在の重複した事務所類の様になってしまうのではないかと懸念します。現在あるものが機能しないのはリダーシップ足りないだけだと思います。事務系はシステムに忠実に動くことは得意ですが臨機応変な対応は責任の所在がはっきりしないので苦手です。事務側で一から評価するのでは機能する訳ありません。最低限の役人で機能させるには、通報システムを構築し、科研費の審査のように技術的評価を専門家に投げるシステムが良いのではないでしょうか。そこで黒と判定された物に関して再現性などの調査を行い、最悪の場合、研究費の返納命令を出す。再現性の調査をどのように行うかが現在持っていない機能ではないでしょうか。

  32. tsuyomiyakawa より:

    > 公正局に役人を配置する事

    これは、配置せざるを得ないのではないでしょうか。公正局を国が運営するとすれば、そこに入ったとたん公務員(かそれに準ずるもの)になってしまうわけですので。現在の窓口が機能していないのは、単に、人員不足や組織の体制が整っておらず専門性が弱いことなどが主な原因ではないかと推測します。

    元研究者の存在も必須でしょう。そうでないと何が不正でそうでないのか、理解が困難であると思います。

  33. tsuyomiyakawa より:

    岡山大の件は、この報道 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130805-OYT1T00572.htm を拝見しましたが、これだけでは情報不足で本当にmisconductなのか、そうであるとしてもどの程度の問題なのか、がはっきりしません。
    和文雑誌のオリジナルの論文で掲載した内容を翻訳し、英文誌に出しなおしたようですが、「解析内容を変え」とあります。データが同一であっても、異なる解析をすることにより異なる新しい知見がでてくればそれは論文になりえます。「残りの1本は他の2本を組み合わせていた」とあり、これについては問題のように思えますが、一応、メタ解析というのもあり得ます(実際にはたぶんそうでないでしょうが…)。
    さらに、「引き続き事情を聞くとともに処分などを検討している。」との記載があります。そもそも、このようなマスメディアでの発表は、事情を十分に聴取し、公式の裁定がでてから行われるのが本来良いのではないでしょうか。マスメディアでの発表は影響力が極めて大きく、当該の研究者のキャリアに大きく影響してしまうわけですので。
    ということで、この件についても、十分に機能しているかどうかはわからない部分があるでしょう。単に問題を表に出せば良い、ということでもないのではないでしょうか。
    この件のような事例では、「公正局」のような第三者組織が、できるだけ過不足のないバランスのとれたガイドラインを提供し、大学・研究機関による調査・裁定とその後の行動を補助していくようなことが望ましいのではないでしょうか。

    また、論文捏造&研究不正さんがこちら http://disq.us/8ehe65 でご指摘されているように、大学が不正を正式に認定しているにもかかわらず、その後、何の具体的対策も講じられず、科研費も交付されている、という例があるようです。現在の仕組みの問題の一つとして、当該の研究者が異動してしまうと旧所属機関は何の措置も行うことができない、ということがあると思います。これも現状の仕組みが機能していない例でしょう。

  34. Miwako Ozaki より:

    不正が徐々に表に出てきているのは、科学行政下やアカデミアの監査室等の力(改善)というより、2ちゃんの皆様の功績なのではないでしょうか。

    公正局が扱わなければならない案件として、データ捏造以外に沢山あります。データ捏造以外の部分に公平性をもって対応できる機関は、現時点ではないといってもよいと思います。

    また、少なくとも私は、公正局に役人を配置する事には反対です(意見交換の場として利用することは必要ですが)。それでは、すでに存在している窓口が機能しないのと変わらなくなると思います。少なくともトップは、研究者や官僚出身者では駄目だと思っています。

  35. ちょっと待った より:

    実は機能しているのではないですか?毎日のように出てくる不正ネタですが、

    岡山大は5日、大学院医歯薬学総合研究科の40歳代男性准教授が、医学系学会の学術誌に発表した自らの論文について、学会の転載許可を得ず、引用も明示せずに、英文専門誌3誌に投稿していたと発表した。

    これ、たぶん数年前ではすぐには表に出てこなかった内容ですよね。だんだん表に出てくるようになってきたのは何故でしょうか。隠すのは得策ではないというコンセンサスが、出来つつあると思います。それは、制度が変わったから出来たコンセンサスではないですよね。ディオバンがらみの事件も、各大学がどんな対応をするか見ものですが、制度がなくったって、中途半端な事をしたらどんなひどい目にあうか、みんなわかっているんじゃないですか?

    公正局を作るなんてのは、自己満足で実行力がない。と、2ちゃんネラーの私は思っていますが。天下りの数が増えるだけでしょ、と。

  36. tsuyomiyakawa より:

    > 我が国の実情に合わせ、より「賢い」制度を作るという観点も必要なのではないでしょうか。

    おっしゃるとおりだと思います。組織の規模や内容は、外国のものと同一にする必要はないでしょう。

    > たとえば、日本ではアメリカに比べるとまだ応用応用というプレッシャーが少ない。そのことが、捏造の数がアメリカよりも少ない要因であると考えることだって出来ると思います。

    日本のほうが研究活動についてのプレッシャーが小さいということはあるでしょうね。日本では、一旦、パーマネント職についてしまえば、研究を全く行わなくても給料が下がってしまうことはありませんが、米国ではそういうことはありません。
    米国に比べ「応用」へのプレッシャーが少ない、という点は違うのではないかと思います。米国でも多くのmisconductは基礎研究の分野でなされています。米国では基礎研究においてもプレッシャーは強いです。また日本で今、大きな問題になっているもののうちの一つは応用研究です。プレッシャーの強さは適度な点があるはずなので、そこを日本人にあわせて最適化する努力は必要でしょう。ただ、これは公正局をつくらないほうが良い、という理由にはならないと思います。むしろそういう組織に、最適なプレッシャーのレベルとはどの程度か、ということについても研究するような機能をもたせてあげるとよいのではないでしょうか。

    > 独立した公正局を作るというような時間のかかる事はせず、現在ある仕組みの中でより迅速な対応を行う事のほうが重要という考え方もあると思います。

    そういう組織や部署を作ること自体はすぐできるのではないでしょうか。作っておいて、活動内容などについては、時間は十分にかけ吟味するということでも良いのでは。並行して、迅速に対応できる部分はしておくということで。ただ、現状では「迅速な対応」というのができていない、というのが大きな問題でしょう。そういう組織や部署なしの状態で、政治主導とかで性急に対応をされてしまうと、研究者コミュニティにとってむしろマイナスになり得るような気がしますし、実際、今、そうなりかけているのでは。

    ともかく現状では、そのような組織や部署がどのようなものであったほうが良いのか、どのようになってしまってはまずいのか、をできるだけ具体的に議論しておくことが大切ではないかと思います。

  37. Miwako Ozaki より:

    必ずしも諸外国を真似る必要はありませんし、日本流にアレンジすることにも賛成です。ですが、独立機関を立てることに何故そんなに抵抗されるのか疑問です。

    現在、科学技術行政下や大学に監査室やその他窓口が多数あるにも関わらず機能しないのは何故でしょうか。

  38. ちょっと待った より:

    アメリカにはORIがありますが、捏造は数もレベルも世界一です。シンガポールには捏造をする人がいないかというと、そんなことはないでしょう。「アメリカでは、、、」「シンガポールでは、、、」とよその国の仕組みを知る事は大切だと思いますが、我が国の実情に合わせ、より「賢い」制度を作るという観点も必要なのではないでしょうか。

    たとえば、日本ではアメリカに比べるとまだ応用応用というプレッシャーが少ない。そのことが、捏造の数がアメリカよりも少ない要因であると考えることだって出来ると思います。

    独立した公正局を作るというような時間のかかる事はせず、現在ある仕組みの中でより迅速な対応を行う事のほうが重要という考え方もあると思います。

    何か問題があるととかく全否定に走りがちですが、それはあまり効率的ではないのではないでしょうか。

  39. Miwako Ozaki より:

    例えば、JSTには、シンガポール宣言にあるような研究者の公平性に関するリクエスト、事後評価を正しい情報のもと行うことなどなどリクエストがいっていますが、全くといってよいほど機能していません。予算を配分し、課題管理し、評価しているところに正しい判断をさせることは難しいのではないでしょうか。その結果として、ここまで来たと思います。

    外部に評価させることのイメージができないとのことですが、シンガポールでは当然のように行われています。公平に物事を進める組織の存在イコール外圧とは言えないと思います。今のようなすべて内輪で行う状態の方が不自然と思います。

  40. tsuyomiyakawa より:

    林先生のご懸念や、イメージしにくい、という感覚はよく理解できます。今までになかったものを創る際は、そういった感覚は必然的にでてくるでしょうし、これは多くの研究者の考えを反映しているように思います。しかしながら、Satoshi Tanakaさんがご指摘されているように、この問題は既に研究者コミュニティの内部だけの問題ではもはやなくなってきており、外部からの怒りを買いつつあるということを十分に考慮する必要があるかと思います。外部の方々からの反応は研究資金が国民の貴重な税金から出ていることを考えると当然のような気がします。「柔道や相撲のような構図で研究者コミュニティが語られるようなことがないよう、注力すべき時機だと思います。」というのもまさにおっしゃる通りで、実は私の脳裏にも、日本柔道連盟と、日本分子生物学会がパラレルに重なって見えてしまいました(前年の学会でのこの件に関するシンポジウムでの議論の様子を見たり、その際の議事録の公開にストップがかかってしまったことから)。

    国や一般の方々にそう見えてしまわないように、という意味でも(もちろんその意味だけではありませんが)、理事の方々のような責任ある立場の研究者も含めてこういった公開の場で議論を行い、目に見える形としての対策案をうちだしていく必要があるのではないでしょうか。外圧によってしか変化できない、というのは誇れることではないでしょう。

    以下にマスメディアからの反応をピックアップしてみましたが、第三者機関の設立が必要だというご意見は共通しているようです。規模や形態、内容は十分に検討される必要がありますが、何らかの第三者組織はできないと明らかにまずいように思います。

    朝日新聞「(社説)論文改ざん 社会への背信行為だ」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307250638.html
    「米国では90年代に政府に研究公正局をつくり、不正行為を調査、公表している。日本でもこうした機関の設置や、不正を告発できる仕組みの導入を検討すべきではないか。」

    北海道新聞「社説:論文捏造 不正ただす制度不可欠(7月30日)」
    http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/482598.html
    「米国では政府機関が不正の調査と研究者への倫理教育の両面を担っているという。日本も政府と大学が一体となって研究倫理を確立しなければ、信用力の低下は免れない。」

    高知新聞「社説:【論文の不正】荒療治もやむを得ない」
    http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=305609&nwIW=1&nwVt=knd
    「専門家の間には、公的な監視機関の必要性とともに、法整備による罰則の強化を主張する声もある。研究者の倫理性が疑われる以上、外からのチェックの目を利かせ、厳しく対処する必要がある。」

    中日新聞「中日メディカル:論文捏造、データ改ざん次々 業績競争の陰 科学者に誘惑」
    http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130802140434257
    「不正を行った科学者を厳しく罰する仕組みを求める声も出ている。上特任教授は「ノバルティスファーマの問題は悪質で、犯罪と言っていい。第3者機関で取り締まることも必要ではないか」。池内教授は「悪質な不正を働けば、確実に研究の世界から追放される、という認識を学会や研究者間で共有していくしかない」と語った。」

  41. Satoshi Tanaka より:

    林先生のお示しになる方向は緩やかな現状修正で、研究者の大勢の意向かもしれないと思います。うまくいくイメージがわかないというご意見ですが、私は一つの提案として意見を述べましたので、是非については特に反論はありません。ご提示の疑問点については、提案の中にそうした懸念に対する回答が含まれている部分もあると考えますので、追記することはございません。

    近年次々に発覚している研究不正は、一般の方にとってその内容がよく判らないことが幸いして、社会的問題としてクローズアップされることはありません。しかし、ひとたび分かりやすく説明が行われると、大きな怒りを買う性質のものです。詳しく知れば知るほど強い感情的な応答を呼ぶことと思います。柔道や相撲のような構図で研究者コミュニティが語られるようなことがないよう、注力すべき時機だと思います。「公的」な問題として研究者自身が様々な意見を出し、議論をするということが大事だと思います。

  42. Miwako Ozaki より:

    Hayashiさんは、どうして『すでに科学者の活動を規定する法的しくみはすでにうんざりするほどたくさんあり、調査権限と処罰権限をもつ組織はすでに存在している』のに、機能していないと思われますか?

  43. Shigeo Hayashi より:

    昨日かき込んだはずが反映されておらずがっかり。さて繰り返しですがもう一度だけ書きます。

    研究不正に対応する責任と権限と持つ組織は、雇用者(大学,独法など)と研究資金出資組織です。研究者は両者と契約関係にあるために誠実に研究を行う義務を負うからです。近藤滋さんが指摘された米国のNIH-ORI NSF-OIGも出資機関に付属して雇用者に働きかけると言う形です。私の意見はオーソドックスなもので、この枠組みの中で公正を期すべきというものです。しかし実際このしくみはうまくいっていません。その理由は雇用者は新規雇用には手間をかけますがすでにいるメンバーに対する評価の手間は想定的に少ないこと、同様に研究費も研究終了後の評価は十分でなくそれが新規申請に反映されにくいという面があるからです。なので事後評価をしっかりして、研究倫理の面も含めて雇用契約や研究費の更新に生かす制度を設計できるのではないかと思います。なのでJSTやJSPSに付随して研究の事後評価を行うORI/OIGのような組織はアリだと思います。

     一方で雇用者,研究費出資者は研究者と利害を同一にしているので、無謬性を重んじる組織では問題を露見させない方にバイアスがかかる,なので独立の組織が必要と言うのが尾崎さん,YT生さん、Satoshi Tanakaさんらの立場です。その指摘はもっともですが,どうやったらそのような組織を作って実効的な活動をするのかを考えると上手くいくイメージが湧かないのです。

     独立の審査機関があっても雇用者,出資者の責任はそのまま残りますし,研究者の事をもっともよく知る立場にある両者が積極的に動かずしてちゃんとした調査は難しいと思います。第三者機関は学術会議のように助言機能に徹して実権を持たない形にとどまらざるを得ないのではないのでしょうか。もし実権を持たせるとしたら雇用者の意志に反して解雇権を持つのか?研究資金配分に対して介入できるのか,と言った問題を明確にしなくてはいけません。またそんな組織できたとして誰が引き受けるのか?組織の権限設定と引き受け手の選定は難しい問題です。

     会計検査院的な立場におく方法はあり得ますが現在の会計検査のあり方を見ると、長期にわたって実質的な役割を維持する事はなかなか容易ではないように思います。

  44. Miwako Ozaki より:

    上記も賛成です。いづれも公正局自体の組織形態と運営の仕方を練ることが、機能する公正局をつくる上で重要と思います。ここが健全に機能すれば、扱う対象の細かいところは随時検討していくことも出来ると思います。単に研究者と行政関係者が集う場にしてしまうと、現状と変わらないか、今の状態を更に悪化させるだけになるかもしれません。幹部に行政官と研究経験者を配置してもよいかもしれませんが、トップはどちらにも寄らない方の方が向いている気もします。

  45. Satoshi Tanaka より:

    追記します。行政官の話題が出ましたが、公正局は行政と研究者が相互理解を築く上でも機能すると思います。研究者から見れば明瞭に悪意があると分かる案件でも、専門性がない方からはどの程度酷い問題であるのかが分からないことが、対応を難しくしていると思います。一時的にでも良いので公正局に文科省や厚労省、JSTの方をお招きして、研究者の認識を理解していただくことは、よりよいシステムを作る上で役に立つと思います。

  46. Miwako Ozaki より:

    大旨賛成です。更には、公正局トップおよび職員を評価する仕組みも何処かに設置し、担当者が変わっても引き継ぐことができる記録システムの構築がのぞまれます。また、調査権限の強さとしては、研究者だけでなく、行政官にまでおよばなければ片手落ちといえます。

  47. Satoshi Tanaka より:

    YT生さんにほぼ同意見です。公正局が必要という動きが政治的に出てくれば、研究者の議論もそこそこに早急に決定が行われてしまうかもしれません。設置の是非や運用の問題点を議論することも良いですが、仮に設置が決まった場合に、研究者側の要望として、公正局の仕組みはこのようなものが良いという案をこの機会にまとめておくと良いと思います。みなさんが危惧する公正局の暴走は、研究者が話し合えないような人物がトップになることにより生じると思います。

    1)公正局のトップは以下の条件を満たす人物から選ぶ。
    ・科学研究の健全な発展のために尽力できる。
    ・元研究者であり、現在進行中の研究費申請には関わっていない。また、着任後は永久に研究費申請資格を失うことに同意している。
    ・PIとして研究グループをリードした経験を持つ。
    ・大型研究費の分担、あるいは公募班等の経験を持ち、大型研究班の実状をある程度知っている。
    ・55歳くらいまで。定年退職時の異動は不可。

    2)調査権限はもつが処罰権限はもたない。
    調査権限については、大規模な捏造事件について、たまたま同僚であったというだけで、周辺の研究者がボランティアで調査をしなければいけないという現行の決まりは研究活動を阻害する要因です。また、相互の共同研究等、同僚に適切な調査が期待できないケースも多いでしょう。公正局の機能ですが、調査権限を持ち報告書をまとめて公表するところまでで良いと思います。処罰は従来のルールでも可能であり、厳しい報告書が出た上で軽い処罰をすることや、外部からの調査そのものを妨害することは、当該研究機関の品位の問題として別に批判されるべきことです。

    3)公正局職員の待遇、身分保障については特別な配慮を行う。
    トップの給与は国立大学の理事レベルは必要で、その下のクラスも学部長、少なくとも教授と同等の待遇が必要です。それなりの魅力のある待遇でなければ、わざわざこうした任務に就くことを希望する研究者は出てこないと思います。調査員は博士研究員の転進先としても良いですが、機関内で昇任する仕組みは組織の形骸化につながるでしょう。また訴訟リスクが個人に及ばないような仕組みにする必要があります。

    4)公正局は研究論文の不正を監視するだけではなく、大型研究費に対するピアレビューを評価し、不適切な評価者を排除する役割も併せ持つ。
    公正局が設置されれば悪質な捏造事件の発覚は減るかも知れません。その他の公正局の平常業務として、大型研究費のピアレビューの極端な偏向を監視することをあげたいと思います。捏造等の研究不正の常習者を強く推薦した評価者や、自己のコミュニティの強化に偏向した評価者は、ピアレビューの世界から排除できるようにすべきです。経緯については記録は必要ですが、悪しき評価者を公表する必要まではないと思います。

  48. Miwako Ozaki より:

    すでに存在する処罰権限をもつところとはどこを想定されていますでしょうか。

  49. Shigeo Hayashi より:

    私が公正局の機能を検察、警察のようなものにもたせる事など考えていない事は文脈から読み取っていただけるものと思います。

  50. Shigeo Hayashi より:

    確かにそうですね。しかしペナルティーの大きさに関わらず不祥事には表沙汰にしたくない向きの対応はあり得ます。証拠さえあれば告発は可能だと思います。

  51. 匿名2 より:

    > 不正が発覚したら該当研究者への研究費停止などの処置をとると共に,その雇用機関に対して運営交付金の減額を行う事とすればいいでしょう。

    これは、告発をもみ消すインセンティブとして働きそうです。

  52. Miwako Ozaki より:

    私は、NEDOや経産省も対象とした方がよいと思います。文科省、厚労省、経産省が連動しなければならないケースが今後増えると思います。科学技術という括りで、例えば1)から4)のような作業内容であれば、現実的と思います。

  53. Miwako Ozaki より:

    情報ありがとうございます。発表されたら読んでみたいと思います。どの国も状況に合わせ色々工夫していると思います。他国を参考にしつつも、日本は日本流の方法を考える方がよいと思います。日本人には欧米人のような個人主義と民主主義が根付いていません。議論することにも慣れていません。毎回各論を議論しなくてもよい方法がよいと思います。

    後ほど、上にReplyします(週末くらいになるかもしれませんが)。

  54. Miwako Ozaki より:

    すでにある組織(科学技術に特化した調査機関、監査機関)は、利害関係の方向性が同じ方向を向いている組織ばかりです。また、組織のトップ間が繋がっているなど、これではいくらそこに公正局を設置しても機能するはずがありません。

    YT生さんがおっしゃっているように、私も科学行政に関わる部署(文科省、JST、総合科学技術会議など)に設置するのは不適切と思っています。Hayashiさんがおっしゃる、すでにある罰則権限をもつ組織というのは、何をさしていますか? もし、検察、警察を指すのであれば、そこはワンクッション分けた組織があった方がよい気がします。

    今回設置が必要な公正局は小規模でも(調査自体のような予算がかかる部分を公正局が行う必要はないです)、アカデミア役職者や権威ある会議体委員の方(場合によっては、行政官)にも対等かそれ以上に意見できる組織と思います。小規模でも権限を持たせる必要があると思います。

    公正局が扱う対象は、私の2013.04.10のスレッドにある内容全てでよいと思います。それらは、切り離せないくらい連動しています。捏造が起きる背景も、もとを突き詰めていくと何らかの上司のモラルの低さからくるアカハラ、パワハラであることも多いと思います。圧倒的な権力、権限に差がある関係性の中、従う側にある人間に、正義を貫く事を求める事は酷であると思います。

  55. YT生 より:

    日本にも、研究不正に対応する組織は必要だと思います。ただ、文部科学省やJSTあるいは総合科学技術会議といった科学行政に関与するところに置くべきではありません。完全な独立組織にするか、しいて言えば、会計検査院や行政監査局といった組織におくのが妥当でしょう。また、組織に関与する人間としては、独立した研究者としての経験はあるものの、ここ5年以上、代表者として研究費を申請していない人間が妥当だろうと思います。さらに言えば、この組織に所属した人間は科学研究費を将来も申請しないことにしておいたほうがよいと思います。
    この組織は、情報提供を受けての調査権限を有しますが、一義的な調査権限および処罰権限は、論文発表時の当該研究者の所属機関にあるのが当然です(国立大学であっても、現在では、それぞれ別の法人格を有しているので、その法人が責任を取るべきです。)。では、この組織は何をするかというと、1)当該研究者の所属機関に対して、調査依頼を行う、2)一定期間内(1年程度でしょうか)に調査結果が出てこなかった場合には、所属機関名および研究者名を公表する、3)追試が必要と判断した場合に、協力を申し出ている学会等に対して、必要な研究費を出して、追試を依頼する、4)所属機関の調査や追試の結果等で不正と判断した場合には公表する といったところでいかがでしょうか。
    分子生物学会での議論と外れるかもしれませんが、この組織が扱う「研究」がどこまでを対象にするのかも課題です。NEDO等の企業と組んだ実用化研究、企業が経済産業省からもらう研究開発補助金、シンクタンク等が受託する調査等まで対象にするのでしょうか。税金の無駄使いという点から見ると問題ではありますが、もう少し絞り込んだほうがよいような気もいたします。例えば、特許の申請書等は実際にやっていないことを書くケースが多いことが知られています。特許と論文を一緒に考えるわけにはいかないでしょう。

  56. 近藤滋 より:

    尾崎さん、林さん

    JST研究倫理監査室が、各国の研究不正への対応を調査しています。事務所を訪問して伺ってきた内容を要約します。

    1) 国として研究不正を監視する仕組みは、国情によってかなり異なる

    2) 例えば、フランスにおいては、研究機関がそれぞれの研究公正を担い、国の研究公正当局は設置されていない。(これは、まだ設置していないのではなく、設置するべきではないという判断の下にです。)

    3) 英国では、研究公正当局は法的な権限を持たない独立組織が大学等の調査活動に適切な助言等を与えている。

    4) 米国においても、上述のORIやNSF OIGは直接調査を行う権限はあるが、一義的な調査は研究機関の責任である。(必要なら連邦政府は調査のやり直しや追加調査を行う。)

    5) 研究公正体制の調査・研究は2000年代中期以降、欧州やカナダなどで行われきた。この中で、カナダの機関が主要国(9カ国)に対して行った調査では、各国のシステムにおいて告発の調査責任は一義的には「研究機関」にあることなどが共通性として示されている。

    (この詳しい研究結果は、多分今年中にどこかで発表される予定)

    林さんの心配している「自由な研究活動に対する威圧という負の側面」をアメリカのシステムでもちゃんと配慮しているようです。中央に調査権限をおくことで、研究機関での調査がうやむやにならないようにしている、と言った感じでしょうか。

    いろいろと各国で国情に合わせ、思考錯誤しています。

    日本にはどんなシステムが良いでしょうか?現状ではいけないことは確かですが。

  57. Shigeo Hayashi より:

    Ozakiさん,もう一度いいますが調査権限と処罰権限が規定されない組織が研究不正に有効に対処する事は困難です。分子生物学会でこれだけ議論されても実効的な手を打てないのはそのためです。一方ですでに科学者の活動を規定する法的しくみはすでにうんざりするほどたくさんあり、調査権限と処罰権限をもつ組織はすでに存在します。これらの組織の運用を見直す事からはじめてはどうですか。その上で公正局を作る事の是非が自ずから明らかになるはずです。

    Ozakiさんの2013.04.10のスレッドを見直しましたが研究公正の問題だけではなく研究費配分から研究者雇用問題までが幅広い課題が含まれています。こちらのスレッドでは問題点を絞るのが良いでしょう。

  58. tsuyomiyakawa より:

    > 不正が発覚したら該当研究者への研究費停止などの処置をとると共に,その雇用機関に対して運営交付金の減額を行う事とすればいいでしょう。

    その種のことがどうしても必要にならざるを得ない、と思います(間接経費が減るので、運営費交付金の減額は不要なような気がしますが)。そのようなことを行う場合、
    ・どのような人が判断を行うのか、
    ・どのように不正の有無を調べるのか、
    ・不正の深刻さの程度はどのように判断するのか、
    ・その不正に見合った適切なレベルの処置をどのように判断するのか、
    ・処置の公正性、公平性をどのように担保するのか、
    など、容易ならざる問題がたくさん出てくるはずです。

    この行為や処置そのものが、高度な専門性を必要とするものであるのではないでしょうか。学会や大学・研究機関のパートタイムの委員たちが、片手間にできるようなことではないと思います。学会や大学・研究機関の委員ですと、何らかの関係者にならざるを得ず、利益相反がある、という問題もあります。

    ということで、やはりフルタイムで専門性を持った人員を擁する公正局のようなものが必要となるのでは。

    もちろん、「自由な研究活動に対する威圧」にはならないように、規程を決めておくことも重要だと思います。

    科学者の不正問題が一般社会の中でも注目を集めていますので、(幸か不幸か)予算に関しては出るはずです。その分、研究関連予算は減るかもしれませんが、仕方のないことですし、その分のプラスの効果はあるのではと思います。

  59. Miwako Ozaki より:

    他のサイトに最後に書き込んだものを、こちらに移しました。

    公正局関連で取り決めが必要なのは、例えば、捏造のケースであれば、どこで線を引くかを初めから決めることではないと思います。何らかの通報があった場 合、各ケース毎に、独立した委員会や適切な委員を招集し、機動的に議論できる場をセットすることをルーチン化する仕組みをつくることと思います(この委員会の強制力と招集される委員としての役割、立ち居振る舞いは、法で縛られるくらい重くてもよいと思います)。各論は、状況により異なりますので、それを実 例がない状況で決めることは非現実的に思います。

    考え方としては、いくら法治国家でも、犯罪はなくならないでしょう。その犯罪の中には、殺人から罰金程度の軽いものまで色々でしょう。では、犯罪はなくならないから無法地帯で何もしなくてよいかというと違うのではないかというこです。

    研究者は好き放題やりたい側ですから、原則、圧迫感や緊張感を感じるものは嫌いかと思いますが、すべてが仲良し構造内だけで済むとは思わないです。公費を使っている緊張感が全くといってよい程ないため、嫌なのだと思います。これは威圧ではないと思います。その成果を出す事に対する緊張感が、本来あるべき姿と思います(特にトップダウン予算は)。

    無駄に使われている予算を多少回すだでけで、公正局の運営は可能です。科学技術分野全体の費用対効果も上がると思います。委員もなり手はあると思います。今のままでは、科学技術予算をいくら増やしても、基礎研究も応用研究も、事業化やビジネスになる成果物も出ない状態が更に酷くなると思います。なにより、今のままでは、日本から出てくる成果を誰も信じなくなると思います。

  60. Shigeo Hayashi より:

    新スレッド立ち上げをお願いしたので最初にカキコみます。ツッコミ歓迎。

     私は研究公正局の意義は認めますが、その設立には消極的な立場です。このような組織設計に際しては、研究不正の是正と予防という効果に対して自由な研究活動に対する威圧という負の側面を天秤にかけなくてはいけません。どのような調査権限を持ち,どのような処罰権限があり,誰がこの重い責任を負うのかについて考えるとコストに比べて運営と不正抑止効果が見合うとは思えないのです。

     研究の公正を維持する制度が有効に機能するためには処罰の権限がなくてはいけません。研究者に対する抑止力は人事権,研究費,そして論文の出版です。それぞれ雇用者たる大学/研究機関,政府,そして科学雑誌に権限は帰属します。この中で一番重要なのは研究者に資金を提供する政府・出資機関です。これらの機関は大学への出資を通じて研究者の賃金も握っています。不正が発覚したら該当研究者への研究費停止などの処置をとると共に,その雇用機関に対して運営交付金の減額を行う事とすればいいでしょう。もちろん隣のラボの不正のあおりで自分たちの経費や人件費が減らされる事もあるかもしれません。しかしこのような圧力でもなければしっかりした内部調査はできないと思います。

     もちろんこれまでの例で内部調査が機能したのは相当な社会的な圧力があった場合に限られます。第三者の突っ込みなくして利益相反の立場である大学がまともに動けるのか,という懸念は多いにあります。残念ながら私に決め手となるアイデアはないですが、学会と匿名掲示板の果す役割は大きなものがあるでしょう。

     不正の種は尽きないのでこれだけで十分な抑止力がつくとは思いません。しかし今大事なのは、具体的証拠のある大きな不正について毅然とした処分を行なう事で実績に基づいた抑止力を生む事です。

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