【帰ってきた】ガチ議論
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20130402

海外日本人研究者ネットワークを作りました

ツイッターまとめ
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UJA04私たちは海外各都市にある日本人研究者コミュニティの連合、海外日本人研究者ネットワーク United Japanese researchers Abroad (UJA) を昨年末に立ち上げ、お世話させていただいているものです。

私たちがUJAを立ち上げたのは海外の日本人研究者同士の大規模かつ有機的な結びつきからお互いの研究キャリアを高めあい、さらに究極的には日本の科学技術の未来を明るくしていく、そのためのアクションを起こしていきたいと考えたからです。個人としてまた日本国家としてグローバル競争を勝ち抜くことを考えたとき、日本人であることを生かした広範で戦略的なネットワーキングは不可欠だと、海外に身をおいて強く感じるようになりました。海外の各地域には日本人研究者による自主的な勉強会組織がありますが、地域を超えた大規模な活動は無く、また主催者が異動等で代わると自然消滅することもしばしばです。また全体としていったいどれだけの日本人研究者が海外で研究に従事しているのか、いかなる機関も把握していないようです。

UJA03そういったなかで昨年の2012年10月に日本学術振興会ワシントンオフィスのサポートのもと、米国東海岸各地の勉強会の幹事が一堂に会する機会を得まして、それぞれの抱える問題意識などの意見交換から地域間連携の機運が芽生えました。その後、本業の研究の合間を縫って連絡を取り合いながら上記のUJA発足に至りました。現在では主に米国・東海岸の以下の地域コミュニティから参加者を得ておりますが、やがては全米から海外全域へと広げ、またコミュニティ単位だけでなく個人単位でも参加できるよう体制を整えたいと思っています。

現在の参加コミュニティ:
.ボストン「いざよいの夕べ勉強会」(Harvard/MIT他)
.NIH金曜会
.ニューヨーク日本人研究者勉強会(Columbia他)
.フィラデルフィア日本人研究者勉強会
.ボルチモア日本人研究会(Japanese Science Seminar in Baltimore: JSSB)
.シンシナティー「UC-Tomorrow」
.リッチモンド「J-RAV (Japanese Research Association at VCU)」
.セントルイス Donald Danforth Plant Science Center
.NASA Goddard Space Flight Center
.南カリフォルニア「Socal日本人大学院生会」

この3月21日にも再び日本学術振興会ワシントンオフィスに集まりまして、具体的なUJAの活動方針や運営方法、また日本学術振興会ワシントンオフィスから運営をサポート頂く旨を確認しました。現在のところまだ準備段階ではありますが主に下記の4つのミッションを遂行していきたいと思っています。

1. 留学希望者のための窓口的役割
2. 帰国支援および海外で研究を続けるためのネットワーク提供
3. 海外コミュニティの研究交流などの有機的な連携
4. 科学技術行政機関とのコミュニケーション

UJA03今回の分子生物学会年会での新しい企画「海外ポスドク呼び寄せ」「生命科学研究を考えるガチ議論」などは、日本の科学研究が一つの岐路に差し掛かっていることへの強い危機意識が背景にあるのかと思います。日本を取り巻く環境は厳しくなる中において科学研究でリーダーシップを発揮していく為には、国際感覚豊かな人材を養成・確保する必要があります。その一方で、現場の若い人たちは目の前のキャリアに不安を抱き、特に先の見通しが不確かな留学をためらうというのが現状でしょうか。私どものミッションはこのような問題へのアプローチとして合致するところが多く、何より我々の立場だからこそ出来ることも多いのではないかと思いました。日本分子生物学会は生命科学系学会として最大規模であり、とりわけ大学院生・ポスドク世代が多く参加しますので、この分野での留学に関するホットでリアルタイムの情報を提供することには大きなニーズがあるのではと考え、具体的な提案としまして以下のようなアイデアを持っております。

1. 留学相談コーナーのブースを設けさせて頂き、以下のような活動を行う
・留学希望者への情報提供
・日本人ポスドクを募集しているラボの紹介
・海外ポスドクのための就職面接のような機会を設ける
2. Funding agencyとの議論に参加させて頂き、海外での経験、海外からの視点を含めて議論を深める
3. 留学経験者を対象とした大規模アンケートを実施し、研究留学の実態を紹介する
4. 大規模アンケート結果を元に、実態に則したより良い頭脳循環システムの在り方を議論・提案する

UJA04上記のアイデアはまだ骨組みの段階で、これから皆さんの意見を伺いながら肉付けを進めてまいります。いざ実行するとなれば多くの方の協力が必要となりますのでその時はどうかよろしくお願いします。またこの他にもアイディアがありましたら是非検討させていただきたいと思っておりますのでこのサイト上やEメールにてご提案頂けますと幸いです。

United Japanese researchers Abroad (UJA) 世話人
分子生物学会年会担当:西田敬二、黒田垂歩
e-mail: Unijdocs[アットマーク]gmail.com


UJAの活動内容を紹介した資料(スライド形式)がダウンロードできます。
海外日本人研究者ネットワークUJA活動内容紹介.pdf


海外日本人研究者のネットワークを何らかの形で国が公的にサポートすることについてどう思いますか? サポートの内容は別途議論することを前提としてください。

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“海外日本人研究者ネットワークを作りました” への12件のフィードバック

  1. Miwako Ozaki より:

    お返事頂いていたこと今知りました。宜しければ、今年の分生学会でお会いできればと思います。

  2. Keiji Nishida より:

    一般には内向き志向だから、とにかく日本から出す、というところがまず議論になりがちですが、出た後は知らない、というところに本当のボトルネックがありそうですよね。獅子が千尋の谷に我が子を落とすみたいな、あるいは自己研鑚の機会であるから安易に頼ろうとすべきでないみたいなストイックな考え方があるのかもしれません。しかし今はもう、ただ海外で苦労すればよい、という時代ではないかなと思います。海外で日本人留学生がよりよいパフォーマンスを上げて、そして彼らがその後日本に戻って活躍の場を得る、というところまで整備することで初めて国が留学を支援する意味と効用が出てくるはずです。

  3. Keiji Nishida より:

    地域は限定するつもりはありませんのでぜひより多くの人にご協賛頂きたいと思っています。一方で地域もそうですが分野やポジションによってスタンスやニーズは異なってくることかと思います。ですので全体としては緩やかな連携で繋いで、その中でテーマ別に特化したサブグループがあるような階層性にするのが現実的なのかなと現段階では考えています。もちろん何でもアイデアをご提案頂ければ助かります!

  4. Miwako Ozaki より:

    アジアのネットワークと繋げることできますか?今は、各国でバラバラにあります。現在は、アカデミア研究者のネットワークというより企業の方が多かったり、科学者、技術者の人数が少ない場合(国)は、職種問わない形になってしまっていますが。

  5. Taruho Kuroda より:

    UJAの活動に賛同して頂いた皆様、ありがとうございます!
    UJAは、発足の経緯からして現在のネットワークはアメリカ東海岸が中心ですが、今後全世界に展開していく事を目指しています。またReaD&Researchmapを使ったデータベースの構築を進めるべく、各ワーキンググループが活動しています。

    中国人や韓国人はアメリカで豊かなネットワークを形成し、それを上手に利用しながら研究者として独立するためのキャリアデベロップメントをしているという事は有名です。日本人はその点で非常に遅れをとっていると思いますが、その理由の一つは海外でPIになった/なろうとする人の数が中国人や韓国人に比べてまだ少ないからかもしれません。私は、それならばなおさらcritical massの人数に到達するよう国がサポートすれば良いと思います。オーストリアは北米にいる研究者を対象としたしっかりとしたコミュニティーを作っており (http://ascina.at)、それが国家レベルでサポートされているというのが我々UJA世話人の間で話題になりました。これが一つのモデルになるかもしれません。

    「海外の日本人研究者を増やしたって日本の国益にはならない」という意見も聞きますが、そんな事はないと思います。世界各地で気心の知れた友人が独立して、最先端の研究環境に身を置いている状況を想像してみて下さい。短期的には「頭脳流出」が起こり国益を損ねるように感じるかもしれませんが、長期的に見ると「頭脳循環」になり、日本のサイエンスに活力とレベルアップをもたらすと期待しています。

    これまでも研究留学の際に参考になる組織やホームページは多々存在し、私も恩恵にあずかってきました(例えば門川俊明先生の研究留学ネットや島岡要先生のハーバード大学医学部留学・独立日記 ) 。しかし、西田さんの投稿にある通り、個人がボランティアベースで情報提供をするのには自ずと限界があり、その規模や機能は限定的でした。もっと広範囲で有用な海外研究者ネットワークを形成するため、それを国の戦略の一つに組み込んで促進すべきではないか。今回の投稿に対する沢山の「いいね!」の数やアンケートへの返答を見て、私はまさに機は熟したのではないかと感じています。

  6. Y Sakurai より:

    ヨーロッパには日本人学生のネットワークセンターのようなものはないようです。
    日本とヨーロッパの研究者のネットワークのハブとするために北海道大学がヘルシンキにセンターを作りましたが、ヨーロッパ在住の日本人学生(博士課程研究者を含む)のために特にどうするという具体的な動きは聞こえてきません。http://www.hokudai.fi/helsinki-office.html 積極的に働きかけていかなければならないと思っています。

  7. Keiji Nishida より:

    公的なサポート、ということの解釈も色々かとは思います。それによってお上からのトップダウンになってしまうと、自由度が失われて草の根的なボトムアップの理念が埋もれてしまうかもしれない、出先機関あるいは利益誘導団体になり下がってしまうのでは、という懸念もあるでしょう。ただ、どうして今までこういった活動が行われてこなかったのか、みんながあったらいいね、と思っているものが実現されていないのはなぜなのか、それは当事者であるポスドクが自身のキャリアもままならない中で、研究の時間を犠牲にして次の世代への人柱になったとしても、私的なボランティアベースのみで達成できることまたその持続性という点で限界があるからではないでしょうか。今回この組織を立ち上げるきっかけは上にありますようにワシントンDCに集まる機会を提供していただき、そこで北米各地の研究者が顔見知りになって問題意識を共有できたところから始まりました。それは決してお上の誘導ではなく、我々の想いを具現化する触媒としてサポートして頂いたからです。もちろん我々自身が草の根で出来ることはやりますし、ボトムアップの理念は大切にします。そのうえで奇跡的な献身的救世主の登場と犠牲ではなく、現実的に持続可能な形でもって大きなアクションを起こしたい時に、それが日本のサイエンスを良くするという国益にかなう限りにおいて公的機関と交渉してサポートを引き出すというのはあっていいことかと思います。サポートの具体的な中身はすでに宮川先生がコメントでご提案してくださっているようなことがまさに当てはまると思いますし、実際に何がどこまで出来るかはアクションの中で我々が学んでフィードバックしていけばよいのではないかと考えています。

  8. アンケートを見ると意外に「不要」という方も結構いらっしゃいますね。これは、自分は自立してやっていけているので特にサポートは不要、とか、ネットワーク作りはネットを使えば国からの金銭的支援はなくても安価にできる、などの意味でしょうか。

    確かに、ネットを使えば草の根でいろいろとできるはずだと思いますが、有形無形の国のサポートがあると良いことがいろいろとあるのでは、と想像します。

    例えば、以下のようなことがあるでしょう。

    ・海外の日本人研究者が日本でのファカルティポジションに応募して、書類審査に通り、面接に呼ばれるとします。この際に、未だに多くの大学では、旅費を候補者に自費で支払ってもらうことになっているのではないですかね。自費で旅費を支払って面接のために帰国し、不採択になって、憤慨されていた方がいらっしゃいましたが、それはもっともかな、と感じます(採択されたとしても腑に落ちない方々も多いでしょう)。このような場合、一人でぐちをいっていても何もかわりませんが、このようなネットワークを通じて要望を集約して国に上げれば、このような例は減ることが期待できると思います。海外在住の人の面接はSkypeなどのネット会議ツールを用いて行うこと、面接に呼ぶ必要のある際は間接経費などから旅費をできるだけ支給すること、などを単にトップダウン的に促してもらうだけでいいのだと思います。

    ・やはり日本での職に対する就職活動で、各大学・機関独自のフォーマットでCVを作りなおして送付する必要があることが多くないでしょうか。いまどきは一人でたくさんの所に応募することも多いので、その作業はばかにならないでしょう。送付するのも海外からでは手間・お金がかかったりします。こういうことについてもコミュニティの意見として国に聞いてもらい、そこから、各大学・機関に一言、一斉に通知してもらうだけで、劇的に改善されたりするのではないですかね。CVはR&Rの自分のページのURLだけで十分なわけで(「抱負」とかは書く必要があるかもしれませんが)、そういうことをやはりトップダウン的に促してもらうと。

    バーチャルでゆるい繋がりのネットワークでも、公的な国のバックアップがあるのとないのでは随分違うと思います。

  9. Shingo Kajimura より:

    素晴らしい案だと思います。これから日本に帰国を考えていらっしゃる方、これから海外に行きたいと思っている研究者や学生、海外で独立して研究、教育に携わる方達がそれぞれのキャリアステージにおける悩みや相談などを気軽に共有できるソースは皆さんが必要性を感じていると思います。

  10. Kie Kasuga より:

    立ち上げてくださった皆様、ありがとうございます。まずはアメリカでのネットワーク形成ということだと思いますが、将来的には欧州や他の地域(シンガポールやサウジアラビアなど)にも広げていくと面白いのではと思います。スウェーデンに来てから欧州各地で研究をされる日本人研究者の皆さんと知り合いました。アメリカのように一都市に固まっているわけではないので、UJAのようなネットワークに取り込んでいただくことで交流ができるのでは、と思います。
    キャリアパス、グラント、教育、研究など、幅広い情報で交流できればと思います。こちらでお役にたてそうなことがあればいつでもおっしゃってください。

  11. KUBO より:

    非常に良い活動だと思います。今後、ウェブサイトの内容が拡充されることを期待します。分生に限らず、今後はもっと他の学会でも同様の企画やサポートが増えれば、これから海外留学を目指す人にも、海外から日本に戻ろうとする人にもプラスになり、日本の科学の活性化につながるのではないでしょうか。

  12. 僕も5年間アメリカにいましたが、このようなネットワークがあればいいのに、と思っていました。やはり日本人が海外に一人でいくことには不安があるのが普通でしょう。
    以下、思いつきのアイデアをメモしてみましたので、ご参考にしていただければと思います。

    ・アメリカだけでなく、ヨーロッパも含めた全世界のネットワークにするのがよいのでは。ヨーロッパの小国にいく人にはそれなりの不安があると思います。

    ・ReaD&Researchmap (R&R) をうまく使ってネットワークのメンバーのデータベースをつくっていただくとよいのではないでしょうか。R&Rのコミュニティ機能を使うだけでもできるでしょうし、R&R発行のIDを使ってログインできるようなシステムでもよいでしょう。学振などによる海外日本人研究者の動向の把握もできるでしょうし、学振などからのお知らせのメールなども配信も非常に容易です。R&Rの情報は研究者個人の公的CVのようなものなので異動しても問題なくトラックできます。R&Rは、e-Rad(や、たぶんJREC-IN)やORCiDなどとも連携しますし、日本に帰ってくるといずれにせよこれが必須になってきます。

    ・海外での合法的諜報活動をしていただけるとよいのでは。オープンなニュースレターのようなものを発行するウェブサイトをつくって、海外在住の研究者から情報を発信していただくと。海外の大学・機関のユニークな試み、とか、所属ラボの運営の仕方の長所、海外にいてわかった日本の長所、海外で困った経験・苦しんでいること、などなど。そのような情報は、これから海外に留学しようという若手の方々にはもちろん有用でしょうし、国の科学・教育行政や、大学を運営するような方々にとっても価値が高いのではないでしょうか。そういうものの編集を手伝ってくれる人に対する補助とかを国が出してくれたりしないですかね?もちろんですが、くれぐれもコンフィデンシャル情報をもらすような違法の活動はしない、ということで。

    ・海外で行った研究の日本におけるプレスリリースもこのようなネットワークを通じてできるといいですね。日本にいるとJSTや大学・研究機関が補助してくれるわけですが、海外の日本人研究者にもそのような機会・場を提供できるとよさそうです。これも国の補助があるとよいですね(お金というよりも発表の場や資料作り補助の提供など)。

    ・海外で留学をしている方で、苦しい状態にあってこころの問題を抱えられてしまうような方々も多いかと思います(実際、僕の知り合いでもそういった方々がいらっしゃいます)。ネットワークのメンバーでそういう状況におちいってしまった方々に対するメンタル面でのカウンセリングのようなものも(格安で)国が提供してくれたりするとよいのでは。もちろんメンバー同士でも相談も有効だとは思いますが、専門家に日本語で相談できるということもできるとより心強いのでは。Skypeやそれと同等なものを使えばできそうです。

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