日本の科学を考えるガチ議論
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地方大のあり方について

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大学に要請される研究のあり方とはどんなものなのでしょう。アカデミアに加えて、研究所や企業で研究に従事する若手研究者を供給するという役割はすぐに思い浮かびますが、実際にはそうした「研究志向」の進路はライフサイエンスでは特に限られており、多くの卒業生はそれ以外の世界で活躍しています。前者については熱い議論が起こりますが、後者の人材育成の社会的な価値を議論することも重要です。

「研究志向」の人材育成:
ノーベル賞受賞者の出身大学のことがニュースにも取り上げられましたが、優れた研究者の経歴はしばしば複線的です。また、ビッグラボを支える番頭さん格の研究者の出身を調べれば、優れた研究活動に必要なものはそれを支える裾野の広さであることは容易に理解できます。特に大きな予算が当たるわけでもない地味なラボで、研究者の訓練が丁寧に行われているということはもっと主張すべきです。

「研究志向」ではない人材育成:
国家が大学を支援する意義は、研究志向の人材が必要だからという理由だけではないです。AIDSは先進国の陰謀であるから治療薬は輸入しないとか、主要な感染症に対する予防接種を個人の判断に委ねるといった愚かな判断に陥らないためにも、国民の教育水準は高くあるべきです。目に見えない形であることが多いですが、高等教育は国家の財政に貢献をしています。自然科学の研究室では、専門家の指導の下、学生がテーマをもって試行錯誤するという、問題解決能力を醸成する上では最適の環境が与えられます。国家の財政が厳しいときにはこうした贅沢な教育方策は限定せざるを得ないかも知れません。しかし、現場の問題解決能力が高いことが日本の強みという分析もあります。我が国は「人で勝負」という意見は広く共有されています。国家が大学を支援する根拠はこうした点にもあるはずです。

基礎研究の多様性の確保、高等教育を受ける機会の増大という目標は、産業界から直接的な支援を受けることは困難ですが、いずれも国益に資するものです。地方国立大学はその担い手として国の投資の対象となるべきというのが私の意見です。実験科学の教育が可能な環境を取り戻すことが大事です。アンケートにある反対意見に対していくつか反論してみます。

・若年人口減少を受けて、国立大学も適正規模に縮小すべきだろう。
→シュリンクする中でも国家として何を重視するべきかという判断は重要です。人口に比例して高等教育をスケールダウンするのは愚策ではないでしょうか。

・意欲のない教員が多いので投資する価値がない。
→豊田先生の調査にあるように、必ずしも費用対効果のパフォーマンスは悪くないという見方もあります。個々の研究者に対する適正な評価が必要とされているように思います。大学数を減らすのではなく、再生するためのアイデアを考えたいです。予算の少ない中、教育、研究の両方に追われるという立場を離れることで新たな能力を発揮する人材もあるはずです。

・基礎研究や人材育成は研究開発法人でもやれば良い。
→何でも研究開発法人が請け負うと、大学との機能分化のメリットがなくなってしまいます。また、人材育成のノウハウを新たに別のシステムで蓄積していくことは非効率ではないでしょうか。

地方大学縮小派の方からの反論、あるいはこのトピックに対するご意見をお待ちしております。

岡山大学 田中智之
(この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)


*関連するアンケート意見をピックアップしました。

「地方国立大学は負のスパイラルに入っていてどうしようもない(抜本的に改革せよ)」
・国が科学研究、教育に対する出資を削っているため。特に地方国立大学は厳しい。
・日本の研究者、とくに地方の研究者と話すと研究への意欲が欠けているように思われ、問題の最たるものだと感じる。
・地方大学にやる気がなく,仕事をしない(研究をしない)教員が多いこと。そういう仕事をしない教員が研究スペースだけは確保していたりする。こういう教員を全て教育に回して,研究できる元気のある若手にスペースとチャンスを与えれば良い。
・地方大学では研究自体を上位に考えない教員や学生も多く、まじめにやっていても、寂しい気がします。
・地方大学は、基幹大学に入りそびれた学生が集まる。そういう学生の大半は諦める気分で気概がない。おまけに、地方大学には資金もない(一部は赤字経営)上に研究施設も不十分で、アイデアがあっても実験出来ないので結局、学生も職員も諦めムードで悪循環に陥っている。
・地方を若手のカルチベーション施設として利用すれば,論文数も増えると思う。

「地方国立大学へのてこ入れは日本のサイエンスに必要(支援強化こそ必要)」
・地方国立大学の衰退。それにともない、教育を受けた学生を供給できなくなっている現状。
・地方大学においてはマンパワーの量的不足と質的欠損。
・旧帝大の著名な研究者の人は、「地方大や私立大で研究ができない状況になれば、自分の教え子のほとんどはアカデミックの研究者になれない」ということを再度認識し、日本全体の将来を見てほしい。
・地方大学における質の良い研究者のポストの維持。
・政府が地方大学の現状をしっかり把握する。
・国立大学だけではなく(旧帝?)、地方大学、私立大学にも行き渡るような様々なタイプの助成金を用意し、学生が研究に打ち込める環境を国が整えるべきである。
・地方大学の研究をもっと活性化させる(職業訓練大学にする、みたいなバカな政策はやめてほしい)。
・地方大学の研究環境の改善などそうだと思います。旧帝大と地方の国立大学の研究レベルの差はかなり大きい。アメリカだと地方大でも優秀なところはかなり優秀です。
・裾野を形成する研究計画、予算配分の完全な欠如。
・一極化するのではなく、地方も含めた国立大学への支援を強化
・東大・京大以外の地方大学に、まずいい指導者誘致の予算や設備を配置してください。魅力あるPIには、地方であってもいい若手研究者が集まってきます。

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