【帰ってきた】ガチ議論
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尾崎美和子先生

監査局や研究公正局の設立の必要性 〜科学者の心と言葉を取り戻す為に〜

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この10年あまり、アカデミアの不正経理[i, ii, iii, iv]、データ捏造[v, vi]は言うまでもなく、科学技術予算の配分、審査、評価の不公正性、利害対立や感情論からくる研究妨害、誹謗中傷等による人事妨害、雇用問題は、小手先の対応で一時的に凌ぐものの、悪化の一途をたどり、様々な側面においてモラルハザードが起きてきた。にもかかわらず、未だ、意思決定機関では、過去事例分析のもと事業運営上の具体的な策や詳細を論じることはなく、新たな制度を『新しい枠組み』として次々作り上げて行くことに忙しい。これでは、同じような失敗を繰り返すだけで、公的予算は有効に使われない。結果、改善案のつもりで新たな制度を導入しても、現場に近くなる程どんどんねじ曲がり、事態は更に悪い方向へと動く。これまでのシステム改革事業、トップダウン事業はその典型であり、2013年4月導入された無期雇用制度も制度設計上の甘さはいなめない。どの事業もその志、枠組み自体は大変よい。運用の仕方に大きな問題があるのだ。

多様性が重要と言いつつも審査委員、評価委員はいつも同じ、採択される研究者も委員会委員グループかその関係者(事業目的に合わせた専門性があまり考慮されていない)、報告書は実体のないものでも平気でとおる。調査、修正、訂正を求めても聞き入れられない。偽りの報告書に対し、評価委員会を設け評価し(もちろんここにも公費が費やされているだろう)、そこにSやA評価が下る。何のための事業であったのか、その目的が頻繁にぶれ、事後評価は『やったふりをしている』だけのことも多い。これは紛れもなく日本で起きている現実である。審査、評価がこのような状態では、科学者は、より良い評価を得る為に、研究予算を獲得するため、先ずは権力にすり寄ろうということになる。提案内容・その成果(事業目的によっては、必ずしもNature, Science等のビッグジャーナルに載せることが成果ではないが、成果内容がすり替えられて行く)は、真に審査・評価されておらず、結果として大多数の研究者は、提案内容の善し悪しに関わらず研究費を獲得することが難しくなっている。更に、特にモラルハザードをおこした研究代表のもとで実働した研究者(真の功績者である研究者)の成果は曖昧となり、実働したものが報われないのが今の日本の科学技術分野である。
人事でも、多くの場合、同じような仕組みの審査のもと雇用が決まっていく。そのため無期雇用制度も、詳細を詰めない限り、実働研究者にとってよい方向には働かないか、寧ろ悪用される可能性が高い(本来この制度は、働きの質の管理と一体となってこそ機能するものである)。科学技術分野では、大型プロジェクトの策定やその実施、参加者を決める審査者の選定、審査者による成果の評価など、すべてのレベルにおいて基準やルール等を詳細に決める必要性がある。このことは、行政にもアカデミア意思決定機関にも提案として上がっており、彼等は気づいている。しかし、必須な議論を避けてきているのだ。
日本には上記のような問題が起きた場合、訴える場所がない。公益監査室等色々窓口を設けていることになっているが、個人の利益は必ずと言ってよい程守られていない。何故このようなことが起きるのか、そのすべての問題の根源がどこにあるのかと考えた場合、ソサイアティをリードするものの行動規範が大きく崩れてきたことにあるのではないかと考える。ごく一部の研究者が研究者全体の印象を悪くしている可能性もないではないが、それにしても不正行為や科学者としての誠実性を欠く行為が多過ぎる。『科学者としての言葉』で語るより、予算獲得のために何かにすり寄るか、流れに任せた発言を誰もが同じ言葉を使って説明する(金太郎あめのようだ)。長きに渡り、多くの物事が仲間内で議論・決定されてきたことにより『適当でも許される』『議論したくないことは避けて通る』ことが当たり前のようになったのではないか(それに逆らうことこそ、問題行為、トラブルメーカといった安易な認識しかもたれなくなったのではないだろうか)。

このような日本の問題は、国際化(研究者の国際交流&国際共同研究)が進むにつれ、日本からではなく、海外から問題提起をされることとなった。それが2009年、2010年におよぶシンガポール宣言だ。特に宣言が世界指針として取り上げられたのは、2010年シンガポールで開催された第2回研究公正に関する世界会議(World Conference on Research Integrity)だ。51カ国が参加し、捏造、改ざん、盗用だけでなく研究者としてあるべき態度にまでフォーカスされた。寧ろ研究者としての結果に対する責任や誠実性の重要さを訴えている(文末参考資料の宣言骨子参照)。
多くの国が同意する宣言を順守することは、利害関係があるもの同士間では難しい。また、上記項目において問題が起きた場合、その問題が大きくなる前に速やかに取り上げ、調査や仲裁に入る組織があってこそ宣言の実行は可能となる。その役割を担う機関が監査局(Office of the Inspector General, OIG)や研究公正局(Office of Research Integrity, ORI)あるいはそれに相当する利害関係から独立した第3機関である。これら組織は、シンガポール宣言骨子(参考資料参照)にあるような項目を管轄し、ソサイアティの倫理観を高め、研究者個人の利益を守るためのものである。このような組織は、科学技術先進国である米国、EU諸国、シンガポールに存在する。アジア地域では、世界の研究支援機関(Funding Agency)が協議する枠組みとしてGlobal Research Councilの一部として纏めて設置するか、各国内設置の方向で議論が高まっている。審査&評価をできるだけ客観的・多面的に実施する手法は多種ある。日本国内でよく聞く、研究者の自主的な倫理観に任せるべきだ等の精神論を議論する時期はとうに過ぎている。シンガポール宣言に、51カ国が同意しているということは、これらが科学者の行動規範の国際標準となっていくと考えてもよい。その後も科学者の行動規範に関しては、議論が重ねられ、2012年12月7日には、責任ある研究行動に関する仙台宣言にまで至り[vii]、アジア・太平洋地域から13カ国の参加があった。日本学術振興会がこの取り纏めを行った[viii]。これら宣言は、日本の研究者にも宣言内容を順守してもらいたいという期待を込め発布されている(寧ろ日本をターゲットにこれら宣言は作成されたといっても過言ではない)。責任項目11、12では、科学者としての行動規範を逸脱したものは記録として残され、迅速な措置がとられるわけだが、これは独立した機関であるからこそ、できることである。
シンガポール宣言原則にあるような内容を順守するためには、科学技術分野全体を俯瞰し、健全な運用を促す、監査局(OIG)や研究公正局(ORI)あるいはそれに相当する利害関係から独立した第3機関の存在が必須である。そこには、どの団体からも均等な距離が保て、職業的責任、地位としての責任という言葉の意味、重みが理解できる人材が配置されるべきであり、同時に、組織の役割が骨抜きにならない仕組みが兼ね備えられることが絶対条件である。

Asia Medical Center Singapore, President
尾崎 美和子
(この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)


参考資料

- シンガポール宣言骨子 –

序文
研究の価値および利益は研究公正に大きく左右される。研究を組織・実施する方法は国家的相違および学問的相違が存在する、あるいは存在しうるが、同時に、実施される場所にかかわらず研究公正の基盤となる原則および職業的責任が存在する。

原則
研究全ての側面における誠実性
研究実施における説明責任
他者との協動における専門家としての礼儀および公平性
他者の代表としての研究の適切な管理

責任の項目としては以下のような12項目に及ぶ。
1. 公正:研究者は、研究の信頼性に対する責任を負わなければならない。
2. 規則の順守:研究者は、研究に関連する規則および方針を認識かつ順守しなければならない。
3. 研究方法:研究者は、適切な研究方法を採用し、エビデンスの批判的解析に基づき結論を導き、研究結果および解釈を完全かつ客観的に報告しなければならない。
4. 研究記録:研究者は、すべての研究の明確かつ正確な記録を、他者がその研究を検証および再現できる方法で保持しなければならない。
5. 研究結果:研究者は、優先権および所有権を確立する機会を得ると同時に、データおよび結果を公然かつ迅速に共有しなければならない。
6. オーサーシップ:研究者は、すべての出版物への寄稿、資金申請、報告書、研究に関するその他の表現物に対して責任を持たなければならない。著者一覧には、すべての著者および該当するオーサーシップ基準を満たす著者のみを含めなければならない。
7. 出版物における謝辞:研究者は、執筆者、資金提供者、スポンサーおよびその他をはじめとして、研究に多大な貢献を示したが、オーサーシップ基準を満たない者の氏名および役割に対して、出版物上に謝意を表明しなければならない。
8. ピアレビュー:研究者は、他者の研究をレビューする場合、公平、迅速、厳格な評価を実施し、守秘義務を順守しなければならない。
9. 利害対立の開示:研究者は、研究の提案、出版物、パブリック・コミュニケーション、およびすべてのレビュー活動における成果の信頼性を損なう可能性のある利害の金銭的対立およびその他の対立を開示しなければならない。
10. パブリップコメント・コミュニケーション:専門的コメントと個人的な見解に基づく意見を明確に区別しなければならない。
11. 無責任な研究行為の報告:研究者は、捏造、改ざん、または盗用をはじめとした不正行為が疑われるすべての研究、および、不注意、不適切な著者一覧、矛盾するデータの報告を怠る、または誤解を招く分析方法の使用など、研究の信頼性を損なうその他の無責任な研究行為を関係機関に報告しなければならない。
12. 無責任な研究行為の対応:研究施設、出版誌、専門組織および研究に関与する機関は、不正行為およびその他の無責任な研究行為の申し立てに応じ、善意で当該行動を報告する者を保護する手段を持たなければならない。不正行為およびその他の無責任な研究行為が確認された場合は、研究記録の修正を含め、迅速に適切な措置を取らなければならない。

日本学術会議主催、日本学術振興会共催・学術フォーラム「責任ある研究活動」の実現にむけて(2013年 2月19日)の資料(PDF)より一部抜粋


その他参考資料

i. 日本経済新聞, 研究費規定を見直し、罰則を強化 文科相, 2013年2月8日

ii. 読売新聞, 「預け金」判明 北大 研究停滞の懸念, 2013年1月13日

iii. Medical Confidential, 集中出版社,「国立がん研究センター」研究費プール問題の深淵,
2013年4月1日

iv. 文部科学省, 公的研究費の管理・監査に関する研修会 説明資料(PDF)

v. Japan fails to settle university dispute, Nature, (2012) 483, 259

vi. A record made to be broken, Nature, (2013) 496, 5

vii. National Science Foundation (NSF) Tokyo Office 資料(PDF)

viii. Asia-Pacific Regional Meeting of the Global Research Council (GRC) in Sendai,
2012年12月6~7日

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“監査局や研究公正局の設立の必要性 〜科学者の心と言葉を取り戻す為に〜” への41件のフィードバック

  1. oct より:

    政治の関係で科学が関係して(一種の規制やその根拠)として、情報公開や法的手続きとしてよりも、政策意図(マクロ経済などというもの)が優先するとして関係者を侮蔑するかのような動きが数年前から現在進行で存在することも留意していただきたいと思う。

  2. Miwako Ozaki より:

    監査局、公正局が扱う業務は、シンガポール宣言にあるような科学者としての行動規範全般であると思っています。その中に、公式な部署として、データ捏造を取り扱う部署があってもよいと思います。

    不正経理やデータ捏造といった証拠が明確なものでも、結局、文科省やアカデミアの手では処理できず、検察や警察の手をかり、やっと『犯罪なんだ』と理解できるありさまです。検察、警察が動いても、文科省、日本学術会議等は動こうとされません。ましてパワハラ、アカハラなど役職的地位を利用した非道徳的行為は、物的証拠を揃えることが前述2者より難しく
    なります。その場合、現状では、ほぼ放置されていくのではないでしょうか。

    研究者にその気がないのであれば、研究妨害等でも一度検察のお世話になり、全てを明るみにする必要があると思っています。

  3. Miwako Ozaki より:

    『制度設計を担当した教員や研究者は、同じ事業の審査、評価には関わらないとされるのが健全と思います。』この部分に補足説明です。

    制度設計にあたり、ある程度専門家の助けを借りる必要が出てきます。特に先端分野は専門家が関わらないと的を得た制度にならないことも多いと思います。この制度(プログラム)に、自身やそのグループが応募したいのであれば、最低限、審査&評価には関わらず、審査&評価に関わるのであれば、応募できないようにするという意味です。全行程、お手盛りなのではなく、どこかで公平性を確保する必要があるということです。

    ちなみに審査、評価表の項目とスコアリングが明確な場合、かなりひいき目で審査、評価をしても、出来の悪いものは出来が悪いという結果に落ち着きます。また、極端に言ってしまえば、真に成果があがっていたり、目的にかなっているのであれば、審査なく指名で予算配分して、評価を厳格にし、駄目ならそこで打ち切りとしてもよい訳です。

  4. Miwako Ozaki より:

    先日、文科省の方に教員や研究者の評価の仕方や研究者の行動規範をアセスメントする具体的な方法を紹介する機会がありました。近日中に資料も直接お送りする予定です。この手法は、教員や研究者の時間を殆どとりません。自身の評価シート作成のためのインタビューに1時間程と評価表作成(それもチェックを入れるだけのもの)に時間を裂くくらいです。インタビューにより教員や研究者の意向はどんどん吸い上げられたらよいと思います。一方、制度設計者を担当した教員や研究者は、同じ事業の審査、評価には関わらないとされるのが健全と思います。

    Kuboさんがおっしゃるように、文科省の技術士の方がこの担当として活用できるのであれば、その方々が、評価表作成にあたる事ができると思います。教員は教育に、研究者は研究に専念するのが本来の姿と思います。また、その評価活動(システム全体)をアセスメントする機関が文科省外部に必要と思いますが、まずは、この手法が導入されるだけでも、悪意ある不正や声が大きければ道理が引っ込むようなことは避けられると思います。

  5. Yasuhiro Kubo より:

    科学技術に関する専門的応用能力があり、公益確保の責務がある技術士の活躍の場がここにはあると思います。文部科学省は技術士を所管しているのですから、この分野での技術士の活用を図るべきです。

  6. Miwako Ozaki より:

    momonga26さんのおっしゃる「公正でない研究をする人が結果として「損をする」ための他の仕組み」はよいと思います。「研究予算が取れなくなる」というのも「損をする」仕組みの筈で すが、現状、ただ、ルールを作っただけでは、機能しないのではと思います。これはどのようなルールを作ってもです。別のサイトに載せたものをここにもペイストし ます。

    ——————————————
    すべての議論を読み切れていないのですが、近藤先生のまとめに対してです。機能する第三者機関を運営するにあたり、研究者が、事務処理(俗に言う雑用)をするわけではありません。私の知る限り、寧ろ博士号をもつ(研究が解る)行政官と多くのofficerが中心となって動いています。私としては、文科省やJST等調査機関に、現状の駄目な理由探しや現状分析ばかりではなく、海外の具体的な運用方法の調査報告をして欲しいと思います。100%完全に機能する組織をつくることは難しいとしても、各国には、色々な工夫がみられます。その工夫分の効果はみられていると思います。

    この場に及んでも科学者による自浄作用が期待できるものでしょうか。できるものなら、とうに出来ていると思います。或は、現状、正そうという何らかの動きがあるはずですが、私の知る限りそのような動きは感じられません。

    他国では、厳格な第三者機関がない場合でも、科学技術分野の上層部が日本ほど利害関係の同質(均質)な集団で構成されていないため、どこかで均衡がとれているのです。均一集団であれば尚更運用上の工夫が必要なところ、そこに敢て誰も手を付けないのです。

    2-1の、不正事件に対処する主体が「事件の起きた機関」でもよい(これは公正性をはじめから放棄しています)、2-2の告発者の安全・利益は守られない(日本では殆どの場合、守られていません)ことを当然とする科学技術先進国は見たことがありません。

    近藤先生が主張されているように、厳罰化は必須であると思います。少なくとも私が目の当たりにしたJSTのケースでは、JSTに調査依頼をしても無視され続けています。内部に心ある行政人はいらっしゃるのですが、そのような方は、寧ろ跳ばされて行き、正す気のない方が居座り続け、その行政人等に都合のよい研究者がその取り巻きにいらっしゃるのではないでしょうか。この構図と仕組みが非常に問題であると思っています。

    また、一般的には(その学生が余程悪質でなければ)、学生に責任がいくようなことはありません。宜しければ、シンガポールに海外の行政官、弁護士、研究者からなる調査組織をつくり実施例をお示ししましょうか。もともと、シンガポール宣言に至った原因は日本にありますので。

  7. momonga26 より:

    研究公正局が出来るとしても、その中身に関しては慎重に検討しなくてはいけないと思います。危惧するのは、書類を提出させてそれでよしとするような事態にならないかという事です。例えば、公正局からの要請でオリジナルデーターを各事業所で保存する義務が発生するとか、実験ノートの管理を一元化して一定期間ごとに報告する義務が発生するとか。ルールを守る事を最優先する事によって本来の仕事をする時間が極端に減ってしまっては本末転倒です。また、何かあるたびにどんどん複雑化する昨今の事務手続事情を見るに、そうなってしまう可能性が、非常に大きいような気もします。なんとか、公正でない研究をする人が結果として「損をする」ための他の仕組みは考えられないでしょうか。論文がとある雑誌に出た、という事実を評価するのではなく、その論文がどう広がっていったのかを評価する仕組みが出来るだけでもだいぶ改善されるような気がします。

  8. Miwako Ozaki より:

    匿名であっても、この場に意見が出てくることは、好ましいことと思っています。公正局等が必要と考えていらっしゃる方々はかなり増えてきましたが、現状、まだ、この場で意見できる方は少ないと言えます(必要ないと思われる方でも、公式には意見されません)。ここで議論されていることは、個人に対する誹謗中傷等ではないですので、反論のある方も、この場で堂々と議論に参加して頂くことを希望します。

    不正行為があるのではと名前が挙がっている方々は、ごく一部、氷山の一角ではないでしょうか。不正をシンガポール宣言が定めているところまで拡大した場合は、かなりの数が対象になってくると推測します。

    この日本のアカデミア体質が、予算配分の偏りや人事等の雇用の問題にまで関わってきているといえます。根本的なところが改善されなければ、どのような事業制度、ルールを作成しても、寧ろ悪い方向に進むことさえあると思います。

  9. 匿名 より:

    私もORI等が必要だと思います。井上明久東北大前総長の例を見ればわかるように、今の日本は大学や学会が不当な判断をするとそれを改善する仕組みがありません。また井上はこれまで2800編以上の論文を発表しましたが、ギフトオーサーシップや二重投稿等の業績水増しが少なからずあり、これらは数々の予算申請等でも審査対象になったと考えられます。JSTの御園生委員会の調査を除き井上の業績リストがきちんと調査されたことはありません。省庁、資金配分機関に業績水増しの不当さを調査し、業績リストが間違っているなら正すように言っても尾崎さんの記事の指摘と同様に何もしません。

    私はこういう不当さは井上事件に限ったことではなくこれまでの告発や予算等の審査でもたくさんあったと思います。こういうことを続けていけば国民にとって害悪でしかなく、日本は信用されなくなります。きちんと改善することが必要です。

    研究不正調査制度の問題点について
    http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/72f625b1e46de4d92031c4d78210ec4d
    論文数水増しによる業績評価について
    http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/086cd7a2a42e41770eb4129c3bd24da9

  10. Miwako Ozaki より:

    更に、JB pressの記事です。

    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37961

  11. Miwako Ozaki より:

    下記は、JST監査室から出された不正行為に関する調査報告書である。調査だけではなく、先ずは自身の組織を正すべく『アクション』を起こすことを期待する。

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/3/56_156/_pdf

  12. Miwako Ozaki より:

    まずは、厚労省で第三機関の設置は実現する可能性がでてきた。文科省にも事業審査&評価を公正に扱う第三者機関の検討を真剣に考えて欲しい。

    医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会
    予期せぬ死亡事例、全医療機関に届出義務
    厚労省は今秋の法案提出目指す、座長が強引な幕引き

    http://www.m3.com/iryoIshin/article/173241/?portalId=mailmag&mmp=MD130530&mc.l=13827300予期せぬ死亡事例、年間1300~2000件

    『5月29日に会議では、診療行為に関連した死亡事故の年間発生件数の試算も提示された。二つの調査を基に、根間1300~2000件という結果になっている。根拠となったのは、(1)日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業、(2)2008年度の厚生労働科学研究「診療行為に関連した死亡の届出様式及び医療事故の情報処理システムの開発に関する研究」――だ。例えば、(1)では、2006年から2011年までのデータで、年間140~180件の死亡事例の報告があり、報告義務医療機関の病床数から、日本全体の病院病床数を割り戻すと、年1300~2000件となっている。』引用部分

    この死亡事故の中には、とても臨床実験レベルにない開発品の応用が原因のものも含まれるでしょう(場合によっては報告もされていないかもしれない)。マクロでみれば、少ない死亡率で片付けられるかもしれないが、個人レベルでみたら、一度亡くなった命や廃人となった親族はもとに戻らない(自分自身が、自分の子供が、自分の親族が被害者になったことを想像してみて欲しい)。トップダウンの安易な実用化事業とその審査&評価の有り様はこのようなところまで影響する重いものであることを文科省、JST、大学関係者も認識する必要がある。

    国プロ大型予算配分にあたり、専門家による審査をしない体質をまずは改善する必要があるのではないかと思う。失敗のすべてを企業の責任とし、アカデミア側が一切責任を問われないのもおかしな話である。基礎研究分野でも、直ぐに審査を控えているERATO, CREST, さきがけなどで、Conflict of Interest を考慮し、まずは公正な審査を実現してみるのがよいのではと思う。今の公平性、公正性のなさは、基礎研究であれば許されるというものではないと思う。

  13. Miwako Ozaki より:

    以前からのお約束で、どのように公正性をもった審査、評価を行うのかを述べなければならないですね。裁判のようなイメージではなく、感情をぶつけ合うようなものでもない色々な方法があります。詳細や具体例をここで記述すると長くなりますが、数値で表しにくい誠実性、責任感、論理性などといった資質を問うような項目も評価の対象と出来るのです。これらは研究者や教育者に必須と考えられている資質でもあります。詳細は、日本工学アカデミー政策委員会に報告書として上げましたが、無期雇用制度は導入されても、本来先に導入しなければならない部分は表に全く出てきません。これを全面公表できないか、現在、担当の方に依頼中ですが。。。

    ポスドク1万人計画の無計画な導入による失敗を今回も全く学習できていないようにみえます。

  14. Miwako Ozaki より:

    医療分野での日本からの論文の信憑性の問題が、やっと日本のメディアで取り上げられるようになってきたようですが、
    (例:日本の信頼失墜非難 医学会、第三者検証を要求、バルサルタンの臨床試験問題 by 毎日新聞社 5月25日(土) 配信、企業との臨床研究、利害関係明示を…高血圧学会 by 読売新聞 5月26日(日) 配信)

    本件はほんの一例にしか過ぎないと思います。また、昨今では、とても臨床実験段階にはない高い危険率を有する診断•治療法が、実用化間近なように過大宣伝され、実際に臨床応用されている現実もあります。日本からの論文の信憑性の有無は、以前より、海外の方が疑問視してきました。

    組織ぐるみの捏造や隠蔽、異なる組織間でいかにもレビューをしているように見せかける手法は、今、かなりの事業で行われていると思います(一部の研究者の問題ではなく、それが当然のように仕組みとして出来上がってしまっていると思います。)。予算を執行する行政と大学間にも、今回メディアを騒がせている産学の間でみられるような負の連携が確実にあります。文科省の取組の中でもこの部分は一度も触れられたことがありません。研究者に向けて作られた行政ルールも、どの程度機能しているか、甚だ疑問です。

    やはり、研究分野における公正性を広く監視する独立した機関(独立した立場から意見できる組織)は日本に必須ではないかと思います。

  15. 尾崎美和子 より:

    無期雇用の問題と「事実の捏造」に関してどのような審判が下されるか、ネットニュースで話題になっています。

    http://www.mynewsjapan.com/reports/1814?fb_action_ids=515836505145633&fb_action_types=og.recommends&fb_source=timeline_og&action_object_map={%22515836505145633%22%3A495524617169359}&action_type_map={%22515836505145633%22%3A%22og.recommends%22}&action_ref_map=[]

  16. 尾崎美和子 より:

    本サイトをめぐりご連絡頂いたことを考え合わせると、日本の科学技術予算は、基礎研究分野にも応用研究分野にもあまり手当されていないことになります。それでは、圧倒多額の予算は、どこに消えているのでしょうか。

  17. Miwako Ozaki より:

    先に早稲田の刑事告訴の例を出しましたが、これは、雇用の問題もありますが、研究妨害、人事妨害も含めた『事実の捏造』に有罪判決を出してくれる可能性のある裁判として非常に意味があると思い紹介しました。

    このサイトで堂々と意見できる研究者が増え、かつ意見したことがマイナスとならないよう強力に働きかけをしていきたいと思っています。

  18. Miwako Ozaki より:

    これまで、このような話題は、公開ではなかなか議論できませんでした。多くの場合は、告発する側の被害妄想か、実力が劣っていることによる『ひがみ』か『嫉妬』くらいにしか捉えられず、真面目な研究者、正義感ある科学者の方がバカをみることが多かったと思います。しかし何時か何処か日の当たるところでの議論が必須と思ってきました。

    データ捏造の強要は言うまでもなく、例えば、某大学では、大型予算がとれそうな面白そうな成果が出ると、それを殆ど実働のない専任教員の成果とし、契約制研究員の成果を収奪するか、研究できないように妨害するという事実があります。また、研究推進部等の大学役員もそれを正そうという気はありません(寧ろ不正を推進する側にあります)。JSTは、誰がそのような経歴ある研究者か一部認識していると思います。しかし、大型予算の審査委員に同じ人物を登用し続けます。

    これは、ニュートラルに申請したい申請者にとり、提案内容(アイデア)は盗用され、かつ採択もされない確率が高いことを意味します。よって、特に応用研究、実用化研究といった(橋渡し研究、医療機器開発等)企業がビジネスに直結させたい研究開発内容の場合は、申請すること自体も躊躇することになります。これをJST は理解していないのです。その結果、特に技術基盤に関する研究、実用化研究に関しては、JSTに世界の科学技術動向の情報は入り難くなっています。最近、JST戦略センターがまとめた世界の科学分野の俯瞰的調査は、膨大な時間と労力が費やされていると推測しますが、それは世界の動向を報告しているのではなく、日本にいる研究者の研究分野の世界の動向調査をしているにしかすぎません。ここ10年で研究分野の多様性を無くしてきたことにより、一層世界を俯瞰する調査になっていないのです。

  19. Tak より:

    ここまで酷くはありませんが、類似の体験を知っています。世に出ている論文の類似画像ばかりが話題になる昨今ですが、告発者が現状泣き寝入りするしかないこのような世に出てこないケースについてのルールや対応指針の整備は必須に思います。このような人の献身で世に出ずに済んだ捏造論文があることは、捏造対策を考える上で必ず知っておかなければならないことです。繰り返しますが、このような人が不利益を受けないような仕組みは必須です。

  20. 訳あって匿名 より:

    こういう議論は是非やっていただきたいと思います。若い頃、大講座内の中堅の先生にデータ捏造を強要され、それを拒否して大講座のトップの先生に報告したところ、逆に嫌がらせがエスカレートし、分野を変えざるを得なくなりました。その後精神を病んで、やっと、回復してきたところです。真摯さは好天的に獲得できる能力ではないと言った人がいると聞きました。真面目さや正義感を持った人が馬鹿を見ないようにしないといけないと思います。

  21. アカデミアの分野は「偉い先生がやることだから」ということでいろいろと放置されてきた問題があるのは事実だと思います。国際評価もそうですが、いろいろな立場の人の意見をきちんと聞くということが、まずは現場レベルでできることかなという気はします。検察とかいう強制力が入る前になんとかしなくてはいけませんね。

  22. アカデミアの分野は「偉い先生がやることだから」ということでいろいろと放置されてきた問題があるのは事実だと思います。国際評価もそうですが、いろいろな立場の人の意見をきちんと聞くということが、まずは現場レベルでできることかなという気はします。検察とかいう強制力が入る前になんとかしなくてはいけませんね。

  23. Miwako Ozaki より:

    追伸です。他3名より、現在走っている事業(特に大型予算)の国際評価を入れてはどうかというご意見を頂きました。

    一部、国際評価が行なわれ始めたそうです。これまでの例では、海外レビュアーに依頼したにも関わらず、最終報告書になる時には、大型予算を受けている側に都合の悪いことは省かれているということはよくあります。被評価者にも常に言い分はあると思います。そこは議論され、双方が納得のゆく報告書とすることが大切と思います。(議論が必要な場合は、議論内容もできるだけ公開した方がよいと思います)。

  24. Miwako Ozaki より:

    Nakagawa様

    『事実を捏造』し、公費を本来の目的外に使用するということは、政界、産業界では、即、刑事責任を問われます。それくらい重いのです。しかし、アカデミアでは、「大学の自治」という都合のよい言葉に守られ、放置されてきたのです(個人的には、「大学の自治」とは、このようなところで使われるべき言葉ではなく、言葉を使い間違えていると思っていますが)。

    諸々の不正に気づいた研究者は少なからずいらしています。が、組織ぐるみでその言動は葬り去られてきたのです。それを延々続けてきたのはアカデミア機関であり、教員であるという意味では、産学官のうち『学』に最も問題があったといえるのではないでしょうか(それを見て見ぬ振りをしたのが、Funding Agencyや行政です)。その学に自力で正す力がない場合は、最終的には、検察という強制力が入っても仕方がないくらい重いのです。

    例えば、下記は早稲田大学の無期雇用をめぐる刑事訴訟の告発文です。早稲田内部、外部両方から雇用における法律違反が問われていると同時に、『事実を捏造することが習慣化されているアカデミアのその悪質さ』が問われているのです(早稲田の場合は、そのやり方があまり賢くないため、今回のように露呈しましたが、これは早稲田だけの問題ではないと思います)。審査&評価の問題も研究分野における雇用の問題もその根っこは同じで、公正性が担保できない組織を相手にする場合には、枠組みの中で処理するのは難しいと思っています。勿論、何もしないよりはよく、色々試みるのも悪くないと思います。

    下記告発文です。
    http://hijokin.web.fc2.com/shiryou/kokuhatsu_s.pdf
    http://hijokin.web.fc2.com/shiryou/kokuhatsu_m.pdf

    次回は、海外の例をご紹介します。

  25. 強制力を持つ第三者機関が出来るとなると、そこから下された判断は相当重いです。それだけ重い判断の質を保証できるだけの人材の確保が果たして出来るのか(全分野に対して必要なわけですから)、という疑問がまずあります。また、こういう制度に対応するための事務作業が莫大に増えて、本来の研究のための時間がどんどん削られるという可能性もあります(法人化の悪夢ふたたび)。また、この第三者機関が暴走しないような新たな機関を作る、という本末転倒な話にもなりかねません。組織がどんどん肥大化する方向でなく、現状の枠組みの中で、問題点を解決していく方が現実的かな、とも思うのですが。。。そういう意味では、conflict of interestの問題に関しては、「公的資金の審査・評価の過度の重複を防ぐための年間上限回数の制限」であるとか、海外のピアレビューを積極的に取り入れるとかは、現実的な対応のような気がしました。研究不正は、良く分かりません。どうしたもんだか。

  26. Miwako Ozaki より:

    若手〜シニアな研究者の皆様、色々なご意見ありがとうございます。『面白い』という簡単なコメントでさえ、この場ですることを躊躇する日本の社会。大丈夫でしょうか。

  27. Miwako Ozaki より:

    『そういう第三者機関が出来たときのデメリットはなんなのでしょう。
    デメリットが何も無いのならばとっくにそうなっているような気もするのですが。
    既得権益、うんぬんは抜きにして。』

    上記のご意見に対してです。日本の場合は、議論&ディベート、それを客観評価に曝すということに慣れていない、好きではないということも、第3機関が設立されなかった理由と思います。

    海外のケースを見ていて特にデメリットがあるようにはみえません。よく機能しているようにみえます。

    日本に取り入れた時のデメリットがあるとするなら、機関だけ作り、仕組みまで導入しなかったり、本来の目的を忘れ単なる摘発機関になってしまった時に弊害が起きる可能性があると思います。日本が海外の諸々の制度を取り入れる際に、仕組み丸ごと取り入れることや各論に関する取り決めをすることが出来ないことは多々ありますが、そこまで合わせて導入した場合は(運用のためのソフトを先に考えることが出来た場合)、機能すると思っています。日本が三権分立の仕組みを持つことにより、いくら国が腐敗したからといっても、3者が相互に監視することにより、そのバランスで社会を健全に動かしているのと同じように、独立した機関がある方が健全であると思います。

    日本国内に設置することに不安がある場合は、Global Research Council (GRC)のようなところに依頼することも可能と思います。が、自立した国として海外に認めてもらいたいのであれば、自身で自身を正すことができなければ、それは世界やアジアのリーダシップを取りたい(取ります)とは言えないでしょう。

  28. Anonymous より:

    そういう第三者機関が出来たときのデメリットはなんなのでしょう。
    デメリットが何も無いのならばとっくにそうなっているような気もするのですが。
    既得権益、うんぬんは抜きにして。

  29. Miwako Ozaki より:

    私は、監査機関は強制力が行使できる組織でないと実質機能しないと思っています。今でも一応罰則規定はあるのですが、どれだけ行使されているかは何とも言えないといった感じです。

    システム改革事業やライフ課事業では、予算の使われ方、運用の仕方でかなり酷い部分がありましたので、ペナルティーも必要だとかなりしつこく某団体が訴えたことがありました。そこには、組織に対するペナルティー(大学への助成金の減額等も含む)が含まれたいましたが、総合科学技術会議にも文科省にも聞き入れて頂いてないと思います。何よりも文科省付きの研究者(制度推進担当ということになっている研究者の委員の方々)から反対がでます。今の体制を守る考え方の研究者が委員として選ばれやすいのだと思います。

    ただ、早稲田大学の様子をみていると、暗黙のペナルティーは働いているのかもしれないと感じます。彼等(特に研究担当部署の幹部)は、大型予算は獲得したらあとは何に使ってもいいという考え方が強く、システム改革事業、トップダウン事業の主旨をあまり理解せず運用してきました。現場担当者は本来の目的のために努力するのですが、役職者と現場に大きなズレと摩擦が生じ、結局最終的に行くつくところにいけず、徒労に終わる訳です。事後評価がSやAでも、この誤摩化しは見る人が見れば一目瞭然です。そのつけが回ったことにより、今。大学として予算が取り難くなっていると思います。

    提案書内で、無期雇用と「働きの質の管理」は一体であるというようなことを言っておりますが、「働きの質を管理」をするということは、研究論文数やIFだけを見るのではなく、教育や組織運営に対する働きがあった場合は、そこが評価され昇級や昇進に繋がるという『できるだけ客観的に評価をするための仕組み』です。無期雇用を採用している国では、何らかの形でその仕組みがあります。仕組みがあるからこそ、無期雇用でも人件費がパンクしないのです。老若男女国籍問わず、仕事をすれば、その質にみあった給与と何らかのポジションがあるのです。逆に言えば、日本のように名誉職としての役職ポジションにつけば、殆ど無期で給与が支給されるというようなことはありません。

  30. Miwako Ozaki より:

    ご提案頂いた内容、議論する価値があるものばかりと思います。

    直ぐに対応できることとしては、
    『申請者がコンフリクトがあると考えられる研究者のリストを提出し、自身の採択評価にから排除してもらえるようなシステムを構築する』などあります。ファンディングエージェンシーがその気になれば、直ぐに実行できるものです。しかし、そこは自主性に任せた制度の改善という意味で、実現できなかったのが実状です。この一見簡単そうな仕組みでさえ、利害関係のない第三者機関の指揮のもと行われなければならない実現できないのです。不正をした組織、研究者に対してのペナルティーも非常に緩いです。例えば、仮に、JSTからの予算が差し止められも別の文科省系ルートから予算が潤沢に回ったり、ペナルティーになっていません。

    また、『各分野の研究代表者(教室を主催している研究者と言う意味で)の人数が少なすぎて、異なった顔ぶれを毎回そろえる事ができないというのが実情ではないでしょうか。』の件ですが、審査員が少な過ぎるとはあまり思っていません。例えば、JSPSがもってる科研費用審査委員候補者リストと文科省、JSTがトップダウン予算の審査委員として採用したメンバーのリストを見比べた場合、これまでのトップダウン予算の審査委員がいかに偏っていたかが解ると思います。

    『絶対数を増やすことによって、審査員になれる研究者を増やす事』に関しては、現存PI研究者プラス、すでに自身では研究をされない大ボスの元で実質PIをされている研究者を独立した研究者とみなすことにより審査委員候補とすることにより、随分数は増えると思います。

    『研究費を複数年度予算化にして、審査回数の絶対量を減らす事。研究計画は基本的には継続申請を主流にして、新規研究計画の採用数を減らし、審査員の負担を軽減するとともに、研究主催者の説明責任も厳しく追及する形に変更すれば、自ずと変わっていくのでは無いでしょうか。』

    『審査員の負担を考えるのであれば、任期中は、科学研究費を審査無しで過去の実績に照らし合わして配分するなどの思い切った便宜を図るなどして、審査に力を注いでもらえるようにしてみてはいかがでしょうか。』

    上記2件も充分議論の余地ありと思います。

    すべては、本来目指した目的通りルールが運用されているかどうかをチェックする仕組みが必要と思っています。

    次に続く

  31. Yoshiyuki Wakabayashi より:

    主張されている意見には全く持って同意なのですが、では実際にどのようにして実現するのかということに関しては、何か良いアイデアをお持ちでしょうか。
    同じ委員を選ぶのは問題だと思っている方も多くいらっしゃると思います。一方で、各分野の研究代表者(教室を主催している研究者と言う意味で)の人数が少なすぎて、異なった顔ぶれを毎回そろえる事ができないというのが実情ではないでしょうか。研究代表者の絶対数を増やすことによって、審査員になれる研究者を増やす事、さらに、研究費を複数年度予算化にして、審査回数の絶対量を減らす事。研究計画は基本的には継続申請を主流にして、新規研究計画の採用数を減らし、審査員の負担を軽減するとともに、研究主催者の説明責任も厳しく追及する形に変更すれば、自ずと変わっていくのでは無いでしょうか。
    コンフリクトを考えるのであれば、申請者がコンフリクトがあると考えられる研究者のリストを提出し、自身の採択評価にから排除してもらえるようなシステムを構築する、などもかのうでは無いでしょうか。
    また、審査員の負担を考えるのであれば、任期中は、科学研究費を審査無しで過去の実績に照らし合わして配分するなどの思い切った便宜を図るなどして、審査に力を注いでもらえるようにしてみてはいかがでしょうか。

    不正追求に関しては、独立機関または部署を設立して調査を行うという案は好ましいと思います。一方で、捜査権をどのように付帯するのかなども考える必要があるのではないでしょうか。いずれにしろ、ファウンディングエージェーンシーとの連携が非常に大切で、不正審機関が強制的に研究費の採択禁止や支給禁止を通達できなければ、意味がないように思えます。
    さらに、このような不正を行った研究者が所属する研究機関にも何らかの罰則規定をもうけさせるべきだと思います。独立法人化したのちで強制力がないと言うのであれば、大学への助成金の減額などの措置も考慮に入れるべきと思います。
    たしかに、不正に関しては、研究者一個人が行ったものがおおいとは思います。一方で、現在の大学運営を行っているグループが、機関として所属する教員、職員に対しての教育の義務を話しているとは思えません。連帯責任と言う事は、好きではありませんが、大学や研究機関が真摯に所属する研究者や職員に対する教育や評価を再考するきっかけを与えるような、措置が必要な気がします。

  32. Miwako Ozaki より:

    『公的資金の審査・評価の過度の重複を防ぐための年間上限回数の制限」というのは、審査員として申請書を審査する回数について、一人あたりの年間上限回数を設ければよいのでは、という意味ですね。』

    上記の件ですが、そうです。いつも同じ委員を選出すると、似たような考え方、志向性の課題が採択されやすくなります。仮に委員による自身の分野への利益誘導があったとしても、委員の顔ぶれが変わることにより、異なる領域への予算配分が可能となり、多様性を産むことになると思います。科学分野で多様な分野に予算配分することは(特に基礎研究分野)、政治の世界でよく言われる、『ばらまき』とは、意味が異なると思います。

    『この制限をもうけることにより、多様性が増す、より研究に集中できるようになる、各種のことに意見を言いやすくなる、などの効果が期待できます。研究現場に近い現役バリバリの人が各種の審査・評価により加わるようになるということもあるでしょう。高名な研究者の方々も、普通はもっとご自分の研究そのものにフォーカスされたいはずなので、この制限を設けることはほとんど
    すべての方面でWin Win、という感じになると思います。』

    上記に関しても尤もであると思います。

    『Conflict of Interest 』という概念は、日本の審査において、あまり意識されているようには見えません。よって、勿論しっかりとした基準もありません。概念的な文言が募集要項や公開サイトの審査基準のところに記述してあることは多いのですが、単なる記述で終わっており、運用されたかどうかがチェックがされ、改善されるべき点がフィードバックされたことは、私の知る限りないと思います。公平性、公正性を最後まで追求できたケースをご存知の方がいらっしゃる場合は、お知らせ頂けると嬉しいです。

    特に、トップダウン予算審査の場合は、Conflict of Interestに関する文言がありながらも、明らかに利害関係者と思われる審査委員が審査に携わることはしばしばあります。評価を意図的に良くしたい場合もです。

    よって、客観性、公平性、公正性を保つ為にも『機能する』第3者機関は必須と思っております。

  33. 「公的資金の審査・評価の過度の重複を防ぐための年間上限回数の制限」というのは、審査員として申請書を審査する回数について、一人あたりの年間上限回数を設ければよいのでは、という意味ですね。ですので、研究者が受ける研究費の額の過度の重複のこととは異なります。現状では特定の高名な研究者の方々に審査・評価が集中しており、これにマイナスの効果がかなりあるのでは、ということです。この制限をもうけることにより、多様性が増す、より研究に集中できるようになる、各種のことに意見を言いやすくなる、などの効果が期待できます。研究現場に近い現役バリバリの人が各種の審査・評価により加わるようになるということもあるでしょう。高名な研究者の方々も、普通はもっとご自分の研究そのものにフォーカスされたいはずなので、この制限を設けることはほとんどすべての方面でWin Win、という感じになると思います。

    あと、審査・評価に関して、Conflict of Interest を避けて人選する基準が現状ではあいまいで、しかも自己申告です。ものによっては同じ学科に属する隣の研究室の人が審査しているような場合もあります。Conflict of Interest の基準をきちんと作って運用することが大事なのではないかと思います。そのような活動にこの種の機関が関わるとよいのではないでしょうか。

  34. Miwako Ozaki より:

    審査する方がその予算に応募する方でなければよいのではないでしょうか。そこは切り分けるべきと思います。

    今の審査は、すでに多くの場合において素人による審査になっているのではないでしょうか。だから、過去の明らかな業績や批判されないような仲間内の提案を採択しやすい傾向にあるように見えます。専門家としての自身があるならば、新規性のある提案、後ろ盾が透けて見えないような提案を選ぶこともできるはずです。

  35. Anonymous より:

    研究費が必要な現役バリバリの人が審査に加わらなかったら、ピアレビューはできませんよ。言い方は悪いですが素人に評価を任せて本当に良いのですか?

  36. Miwako Ozaki より:

    単年度予算に関しては、 http://scienceinjapan.org/topi…にコメントお送りします。

    ORI 等のような第3者機関は、文科省やAgencyがこのまま現状を放置した場合は、何らかの強制力を行使する必要があると思います。なぜならば、日本国内だけでなく、海外にも損害が及ぶことと、日本の科学自体に対する信用がなくなるからです。科学技術分野で国際的イニシアティブを取りたいと思うのであれば、外部から問われる前に、日本が自力で正せないといけないと思っています。今の状態では、一流誌に掲載された論文も、日本から出されたものは疑ってかかるという事態になると思いますし、更に進めば、一流紙に論文が通り難くなっていくと思います。現に、治験から日本のデータは外して欲しいという依頼はすでにありますし、増加しています。臨床研究、基礎研究分野の面白そうな報告でも一歩引いてみています。

    科学技術のベンチマーキング2012
    http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-RM218-FullJ.pdf が示すように、どこの国も日本を国際共同研究先として組みたい相手国とは、昔程思わなくなりました。日本人が内向き志向になっただけが理由ではないと思います。なぜならば、日本アカデミアとの連携には消極的でも、日本企業との連携&共同開発への海外ニーズの増加と実際の連携はどんどん活発になっています。しかし、科学や技術力の基盤を支えているのはアカデミアの基礎研究•基盤研究力ですので、ここをマスコミ受けする派手さだけを求めた浮ついたものにしない継続的かつ地道な研究とそのための投資が必要と思います。そのためにも、専門家による審査•評価機能は健全に働く必要があります。

    明らかに利益誘導や研究妨害が行われているケース意外に、予算配分する側が、健全に審査•評価は行われているはずだと認識し、問題がどこにあるのかを理解できていないケースです。正しい判断は、多様な情報•意見が集まってこそ可能になるものです。それを可能にするには、多様な意見を持つ専門家が自由に情報発信でき、議論できる環境が必要と思います。そのためにも審査•課題管理•成果評価は、利害関係のない組織(或は、委員)が行う必要があると思います。机上の空論ではなく、それが実施されることです。

  37. Miwako Ozaki より:

    引用:アメリカのORI http://ori.dhhs.gov/about-ori
    がやっているのは、基本的には不正行為の調査がメインですよね。各種の研究費などの審査員・評価者の普通の評価をCoIを意識しつつエビデンスベースで行
    うところはあったほうがよいと思いますが、また別の組織がやったほうがよいのでは。

    回答:上記に関しては、別の組織が実施しても問題ないと思います。どちらのケースもできるだけ利害関係から独立した機関が担当する必要があるという意味での提案です。よって、JSPS内の学術システムセンターも本来、Agencyの外に置くべきと思います。以前に、システム改革事業の評価方法に関してJSTとJSPSを比較したことがありますが、JSPSの方が格段によいレビューをしてました。JSPSと研究者間で、イタチごっこ的になっているところもあるのですが、JSPSの『努力』は素晴らしいと思っています。では、何でも別の組織であれば良いかと言えば、そこが重要なのではなく、それぞれの組織で権限のある方同士が、不正で繋がっているようでは、何の効果もないと思います。ソフト面で機能しているかどうか(独立しているかどうか)が重要と思います。

    例えば、JSTの事業運営評価をJSPSが、JSPSの評価をJSTがするというのでもよいかもしれません。

    引用:あと、公的資金の審査・評価の過度の重複を防ぐための年間上限回数の制限はぜひとも導入していただきたいですね。これを導入するだけで、自由な意見がどん
    どん出てくるようになって、日本の科学技術にまつわるいろいろなことが芋づる式によくなると思います。技術的にはe-Radを使えば簡単にできるように実
    はなっているはずです。これもまた別トピックになるかとは思いますが。

    回答:上記は、文部科学省の方々の判断で直ぐにでも導入できることかと思うのですが。。。『過度の重複は避ける』と公募要項に記述してあるにも関わらず守られていないことが多過ぎると思います。これは、予算を配る側の責任かと思います(個人を攻めるということとは別に、責任の所在を明確にする。責任を果たす、責任を問うという習慣は大切と思います)。要項に記述したのであれば、その研究者にどの程度予算が集中しているのかを調べて、配分をコントロールできるはずと思います。

    次に続く。

  38. アメリカのORI http://ori.dhhs.gov/about-ori がやっているのは、基本的には不正行為の調査がメインですよね。各種の研究費などの審査員・評価者の普通の評価をCoIを意識しつつエビデンスベースで行うところはあったほうがよいと思いますが、また別の組織がやったほうがよいのでは。日本では科研費の審査員についての人選・評価は学術システムセンター http://www.jsps.go.jp/j-center/ が行なっていると聞きました。これを行なっている方々は、尾崎先生のおっしゃるCoIがバリバリにありそうな現役の教授陣なので、その点はCoIが最小限になるようなものに改善していただく必要はありそうですが。

    あと、公的資金の審査・評価の過度の重複を防ぐための年間上限回数の制限はぜひとも導入していただきたいですね。これを導入するだけで、自由な意見がどんどん出てくるようになって、日本の科学技術にまつわるいろいろなことが芋づる式によくなると思います。技術的にはe-Radを使えば簡単にできるように実はなっているはずです。これもまた別トピックになるかとは思いますが。

    単年度予算の問題についてですが、使い切れない程の予算を計上しているわけではなく、普通は足りないのです。足りなくなったり予期せぬ出費があったりするので、節約していると、年度末余ってしまいがちになるということですね。もしよろしければそちらの議論は http://scienceinjapan.org/topics/すべての公的研究費の複数年度化を!.html のほうでお願いできればと思います。

  39. Miwako Ozak より:

    追伸です。単年度予算の問題は、確かに早々に解決した方がよい問題ですが、今、日本で起きている諸々の問題の根本ではないと思います。使い切れない程の予算は計上しないこと、シビアな見積もりをすることだと思います。実験結果で予想外のことが起きたとしても陰でプールしなければならないような事態にはならないと思います。例えば、学生のために支払いできない出費等があるのであれば、公明正大にそのための予算を確保することかと思うのですが、如何でしょうか。

  40. Miwako Ozaki より:

    私がイメージしていること(実際に行っていること)は、裁判のようなものではなく、審査•評価、課題管理、審査&評価委員の人選、事業評価、いずれにおいてもジョブディスクリプションやジョブスコープのようなもので、目的に合わせクリアしなければならない項目があり(これは、各論ですので、目的が違えば、項目も変わってきます)、それをチェックしスコア化するというものです。これは、淡々とこなしていくものですから、悪者だ、文化の違いだ、好きだ嫌いだといった感覚は、かなり排除されます(勿論、人間ですので、最終的には、好き嫌いは出てくると思いますが、それは仕方のないことです)。また、感覚や価値観の違いで説明する必要もなく、それほど大変でもありません。

    審査•評価者を評価するに当たっても項目がチェックされますので、項目からずれているものを無理に通そうとした場合、理由が必要になります。意見が異なる場合は、議論をし、それを記録に残すことです。公開できるものは公開した方がよいと思います。時間の経過と共にその主張が正しかったかどうかは明らかになります。次の委員選出に当たっても何らかの目的がある筈ですから、その項目にそぐわない委員はどんどん選ばれなくなってきます。声が大きければ、道理が引っ込むことは少なくなります。

    取り敢えずは、以前、宮川先生と議論した、委員としての参加回数や期間で制限を加えるのでも随分よくなります。このルールを導入することは、それほど難しいことではなかったはずですが、それすら導入できなかった理由は、評価者と被評価者が同じ、発言するには利害が直結し過ぎている、権限が集中し過ぎていることが原因であったと思います。両者間ではできないことをするのが独立機関です。その他、米NIHにあったルール(今もあるのではと思いますが)のように、NIH内の各研究所長は、自分の研究所内にはラボを持てないとするような自己利益誘導が出来ない仕組みを至る所に作るだけで、個人の問題としてではなく、仕組みとして解決できることが沢山あります。

    いずれにしてもORIのような機関には、研究費が必要な現役研究者は参加すべきではないと思います。また、日本の制度設計の宜しくないところは、海外の制度の一部を切り取って導入することで、システム全体や精神まで導入されることはありません。どの国の場合でも、その制度を用いているのには理由があります。海外の審査•評価システムを熟知し実働に携わられた経験者に、先ずは全体の制度案を作成してもらい、そこから日本流にモーディファイしていくことが近道かと思います。

  41. きちんと調査し、不正の責任者の同定、罰の程度の判定を行う公的第三者機関を設ける必要はどうしてもありますね。Natureの記事 http://www.nature.com/news/a-record-made-to-be-broken-1.12702 でも言及されているように、当該の機関の内部委員会であれば、プラス・マイナスを問わず必ずConflict of Interestを委員が有してしまうことを避ける事は原理的に困難なわけです。これは、対象の人が所属する学会でも多かれ少なかれ同様でしょう。
    以下、そういうものを立ち上げる時に、ぜひ考慮していただきたい点を少し書いてみました。

    ・ 不正の罰に関してですが、機械的に共同研究者も罰する、というような案が報道されていたように思いますが、これは分野横断的共同研究を阻害する恐れが強いです。機械的に全員を罰するということでなく、この種の公的第三者機関において本当の意味で実質的に不正の責任を有する人を精査・同定する必要があるでしょう。僕の研究室ではこれまで100研究室以上に対して支援的共同研究を行なってきました。データの恣意的削除を防ぐ仕組みを設けるなど、自分の研究室で得られるデータに関する不正を防ぐ対策はやってきたつもりですが、それぞれの被支援研究者の研究内容のすべてまで責任を持つことは事実上不可能です。

    ・単に個人を罰する、というようなことだけでなく、不正や非倫理的行為がでてきたことの真の背景・動機・経緯などを調査・分析し、その背景の改善を目指した案もだせるような前向きな組織にしていただけるとありがたいです。プール金の不正などは、単年度予算制度という影の大ボスをなんとかしない限りは、根本的解決にはならないわけです。罰することを目的にするのではなく、不正や非倫理的行為が起こらないようにすることを第一に目的にした組織に、ということで。

    ・無実の罪で罰せられる、ということも生じてきそうですね。冤罪事件のようなことが起こりにくくなるような工夫もぜひほしいです。普通の裁判では、弁護人のようなものがつくわけで、それに対応したような仕組みも視野にいれていただきたいです。

    ・不正を報告した人が実質的に保護される仕組みが十分に検討されることがとても大事だと思います。以後の人事、研究費取得などで不利にならないような工夫が必要でしょう。

    ・研究者間のトラブルの問題も対象になるかと思います。その場合、悪者さがし、ということでなく、ルールに照らして前向きな調停を行い、仲をとりもつようなこともしていただきたいです。

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