インタビュー:元文部科学副大臣・元参議院議員 鈴木 寛 氏
問題解決に向けてイニシアチブを取るべきは誰か?
現場の研究者、それから、私が一番頑張ってほしいと思っているのは社会科学者、なんですね。かなりもんだ上でですね、そして具体的な提案にした格好までしてですね、やはり行政なり、政治家なりですね、提案をしていくと。
行政の役割は?
もちろん行政は聞く耳もありますしですね、それからリテラシーも持っている人もいる訳ですが、なんせ大変忙しいですし、一から政策を作るというのは相当厳しい状況にあります。行政だけではできない、という風に思います。
研究コミュニティにできることは何か?
それぞれの皆さんのリソースをですね、5%を、こうした、なんと言いますかより良い科学技術イノベーション政策を実現するために割いていただきたいと。学会であれば、学会の5%のさざまざまなリソースをですね、まあ時間もそうでしょうし、あるいは人員もそうでしょう、あるいは研究所であれば5%の、ソリューションの5%を割いていただくとかですね、研究者の人生を通じてその5%を。そういう意識を皆さんが持っていただくとですね、一人一人は5%ですけれども、それが積もり重なりますと…、相当色々な、プラスに働くと思いますね。
科学技術政策をどうしたら変えられるか?
政策って言うのは、生物反応も同じですけれども、オーガニズムなんですね。ツボの押し方とかですね、サイクルって言うものがあって、そのサイクルをちゃんと見ながら、その刺激をしていかないと、そのタイミングがずれると、それは全く意味がなかったり、むしろ逆効果であったりすることもあるんで、まあそういう意味での、まさに社会のオーガニズムについてのリテラシーっていうものを、もっともっと研究者の皆さんにも説明する機会をもっと作りたいと思いますし、ええ。
「選択と集中」vs「種まき」について
このvsの構造という事自体がですね、もう古いんですね。これはもうベストポートフォリオということしかない訳であって、要するに幅広い裾野と、ピークをどういう風に作っていくかっていう、まあピークも八ヶ岳的にですね。じゃあベストポートフォリオっていうけどなかなか何がベスト課って言う事は非常に難しいので、そこにはいろんな軸が入ってくるわけですね。まあこれは永遠の議論ですけれども、枠組みとしてはポートフォリオをちゃんと組んでいくんだという…。
貧窮する大学と若手研究者問題について
まあニワトリと卵というか、悪循環になっている訳ですよね。で、もちろん研究の中にも、もうとにかく、画期的な成果を上げてくださいというのもあれば、特に若手の研究等はですね、まあその研究の成果もさることながら、それを通じて若手がまあこの伸びていく、ということを期待していると。結局今なかなかこの投資的な、人材育成的な研究というのがちょうどやっぱりいっていないと。で、その状態のままで、はい自由競争ですよと。いうことになるとですね、当然に、まあ研究者を多く抱えてですね、まだよりましな循環の中で、若手が毎年一定程度育っている、当然旧帝大に流れていくと、まあこれが現状ですよね。多様性を確保するという事を、じゃあ全体の基礎研究費の中でですね、どういう割合をきちんと確保するのかと、確保した中で、今度は公正、公平な競争を行っていくと。まあこういうまさに総合的な戦略が問題なんですね。
限られた研究費をどう最適化するべきか
過去の、何十年間の科研費をですね、まあ採択とその見解っていうのは全部ある訳ですね。あるテーマがあって、それを5つのチームにやらした方が良いのか、ここは採択数1だったけれども実は3にしておけば良かったとかですね、いうことがちゃんとリサーチとして出てくるとかね、そのことを次の、そのこういう科研費とか、あるいは研究予算全体の、配分と言いますか選択というんですかね、いうことにしたらいいと思うんですよ。それから、選び方もですね、たとえばこの何パーセントかはたとえばその審査員一人で決めるっていうのもあっていいかもしれないし、あるいは何パーセントかとかは、35歳以下のピアレビューのみで決める、というのがあっても良いし、選ぶ多様性ですね。選ぶレフリーの多様性というか、そこのポートフォリオも、やっていただきたいと思うんですね。全部、この、一様になっているのを、もっとこのいろんなパターンを作り出して、それぞれのパフォーマンスをフィードバックしてみて、であとはじゃあそれにどういうふうな重み付けをしていくかっていうことが、まあ、私の申し上げている、このポートフォリオ、っていう。これは経済の投資の世界では、僕はこの、、当たり前の世界なんで、何故この当たり前の話が科学技術でシェアされないんだろう、っていう、もうほんなんあの、Undergraduateの一年生のですね、金融の本を3ページぐらい読んでいただければ分かるんで、大した数学じゃあないんで…。
科研費の使い方ー政策の科学の必要性
文部科学省がそこに口を出すとですね、アカデミアから、こう、猛烈な反発を食らうと。じゃあ研究者コミュニティーの方が、科研費全体についてですね、鳥瞰してですね、一定程度のサイエンティフィックな分析に基づいて発現しているかっていうと、私はまあいないと。なので、政策のための科学が必要となってくるということなんですけれども。全ての人がそうという訳ではないですけれども、ご自身の成功体験、失敗体験、これを基に発言をするんですね。賢者はね、ちゃんとこう知によって判断するということで、要するに自分の経験、というものをちゃんと相対化するためにですね、その知というものは本来ある、っていうことを。歴史に学ぶっていうことを教えているはずなんだけれども。学生には。自分の話になると、なんかこう自分の経験を、まあ、一般化するっていう。ですからなんかこう全てについて、0ー100、の議論が多すぎてですね、もっとこう精緻な議論をしていくべきだと、思うんですね。
ガチ議論参加者へのメッセージ
私はですね、ずっとこの「熟議」ということを言っています。まあ、「Deliberation」ということですけれども、それが何故必要なのか、っていうことなんですが、どんな素晴らしい人でもですね、その全知全能という人というのはいない訳、でありまして、部分的にしか知らない、我々、愚者がですね、まさにこの、大勢集まって、しかしそれぞれ少しずつ異なった視点や経験や知恵を集めることで、物事が立体的に、しかも動的にですね、浮かび上がってくると。分子生物学会が、そうした、まあ私から言えばその「科学技術政策の在り方に関する熟議」にですね、みなさんの貴重なそれこそリソースを、5%どころかですね、50%ぐらい割いていただいてトライしていただくということは大変素晴らしいことだと思います。まあ、こうしたことをですね、研究現場に持ち帰って膨らませて、広げていただければな、っていうふうに思います。