対談:文科省タスクフォース戦略室 斉藤 卓也 氏 ×「ガチ議論」企画ファシリテーター・京都大学 宮野 公樹
宮野「まあ、うち、600億もらっている、って言うてね、そのうち人件費で480億きえるんですよ。一気にね。そうすると200(億)弱しか残らんわけで、さすがにそれで研究はまかなえない。その一方で金も稼がなあかんから、結局、もらった金(運営費交付金)、学費、間接経費、で収入やっているんですけれども、今、その間接経費の割合が今3分の1ぐらいになっていて、運営費はどんどん下がる、15(億)ずつ下がってくる、そうするとその分競争的資金で、と、いややけど取るしかない。稼ぐ方は三つ。一つは授業料。で、授業料をじゃあ上げようって言ったら、文科省が上限5%までって、えーっ、みたいな。じゃ学生増やすったら、ダメえって。分かったじゃあ病院でもうけます…。で文科省行ったら横からたらーっと人が出てきて、おーえーちょっと待った—、ええっーみたいな。でこれで、「自由度はない」と。で、どこで稼ぐかゆうたら、間接経費しかないやろ、と。
斉藤「地方もそうですけれども、国家公務員もどんどんどんどん…減らしているわけですよね。…とかいって書かれて。ちょっとずつですけれども省庁間のバランスが変わってきていて。でも、大学ってどんどん増える一方ですよね。最近ね。正職員として抱えるべき人と、非正規で抱える人の率っていうのがあって、その辺の最適化がどこまでできていますかっていう中のマネージメントの話と、さっきおっしゃっていた外のお金をどれだけ取ってくるかっていう、多分両方の(問題が)あるんだけど、外の状況の厳しさばかり言って、中の状況があまり語られていない、というか、という気がします。
宮野「そうそう」
斉藤「大学だけで変えられないんだったら、それこそその役所を巻き込むんか政治家を巻き込むんかわからないけど、外からの動きとして全体としてやらないと、多分変わらないんだけど、今残念ながらそういうことをやる仕組みがないというか。」
宮野「そう。そうだよね」
斉藤「そういうのを考える場所もないじゃないですか。」
宮野「権限はあるけれども変えられない、というのはなぜかっていうのを、たとえばもちろんそれはすごい一方的な言い方するとね、いやおまえ、出来るんやからやれよ、って突きつけるということも出来るけれども、でもそれではダメな時代になっているというのは分かるんで、だったら一緒にやろうよと。たとえば文科省というかね。」
斉藤「要するに、既得権益、って言うと言い方悪いけれども、ずっとまさに伝統とかそういう枠組みがあって、それをぶちこわしてまで変えるには凄く労力がかかるから、そこまでには行かれないだろうけど、でもこのままじゃダメだろうと。みんな思っていて。」
宮野「そう。」
斉藤「ヨイショじゃないからいうと、まさにガチ議論ちゅうのは、そういうのを変えようとする、良いきっかけというか、なんていうか当事者同士が、問題意識を持っている当事者同士が集まって、ちゃんと具体的に議論して、単なる文句の言い合いとかじゃなくて、アクションプラン的なことまでちゃんと示せないと。結局どのシンポジウムに行ってもどこ行っても、いやああれが問題だこれが問題だと文句言ってて、なんかそれぞれの立場で言いたいことだけ言って終わり、みたいな。」
宮野「仮にその場に、じゃあ総長、学術会議の会長、とか、そのトップが来てもね、たぶん変わらない。トップが来ても変わらない、てのはなんで、みたいな話をしたいんですよね。個人的には、実はまだ僕問題に達していない、と思っているんですよ。よくわからんけど、なんかもし本当の問題が見つかったら実は「すっ」と動くんじゃないかっていう。」
斉藤「本当に起こっている問題自体が見えていないのか、それを解決するために、こうすれば解決できるっていう、私が言うところのアクションプランに近いところがまだ見いだせていないのかということなのかによってだと思いますよ。どこにどうスイッチを押すと本当にそれがよい方向に回り始めるかがまだ誰も分かんなくて、そこに近づこうっていう検討がまだあまりなされていないんですよ。たとえば単純に運営費交付金と間接経費と授業料とかいうさっきの話も、その大学の収入とか経営とかいう意味では同じ土俵にのってくるはずなのに、じゃあそれ3つの最適化をどうしようっていう議論がどっかでやっているはずか、っていうと、どこでもやっていないんですよ。」
宮野「あるいは、どこ「を」問題にするか。つまりあの人達が集まって、決定権はない。ただ、立場からの意見は言える。そういう人たちが集まって、さあみんな、どこ「を」問題にするって議論できたらね、すっごい大っきいですよ。」
斉藤「で、まあ分かったと。実態はこんなにぐちゃぐちゃ複雑でしかもそこら中に問題がおこられているのは分かるけど、その中の、どこがまさにおっしゃるところの問題、本質的な問題で、まず最初に取り組むべきで、しかもその本質的な問題同士はどういうふうにつながっていて、だからどういう風に行かないといけない、っていう風に行くべきなんですよ。そういうふうにエビデンスベースで議論する土壌が政策側にもないし、学者側も自分の分野は、くれくれ、とは言うけど、じゃあ、その、ねえ、一学者としてどの学問分野が将来の日本の科学の将来にとって良いかという議論って、ずっとされていないですよね。ましてやそういう議論が行政官と行われているかっていうと、あんまりない気がするんですよね。その辺の意識改革。まさにその「政策のための科学」みたいなものをみんなで進めていかないと、ダメのような気がするんですよね。そういう風に発想を転換していかないと多分。」
宮野「そうだよ。」
斉藤「今上の方にいる人は、その組織を守るのが仕事だからムリなので、そのもうちょっと下で、でも全然周りが見えていない若い人ではなくて、中堅ぐらいまで上がってきて世間が見えてて、で矛盾を感じて、このままじゃダメだと思っている世代が、横につながっていく。そこであるべき姿を議論して、計画を作って、それぞれの上に説得して回る、みたいなプランじゃないとダメなのかなあと思って。それはまさにこれぐらいの世代の人たちが問題意識を持って横につながるってのが大事じゃないですかっていうのを言いまくっているんですけどね。」